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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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朝のごはん

ベッドの上で布団をどかして体を伸ばす。意識を覚醒させた後、身体を起こして鏡に映る自分の姿を確認する。どうやら今日は姿勢正しく寝ることができていたみたいで、極端に目立つ様な寝癖も見当たらない。うん、実に良い朝である。


簡単に髪の毛に櫛を通して髪の毛を整え、制服に袖を通す。朝の支度はこれで一先ず終了である。


『おはよー。』


『おはようございます。お嬢様。』


部屋から出て、セシィと朝の挨拶を交わし合う。まだ講義が始まるまではだいぶ時間があるため、少しくつろごうと椅子に腰かける。


『お嬢様、何をのんびりされているんですか。』


『え?だってまだ早いし、時間までゆっくりしてようかなって。』


セシィに急かされるが、なんでそんなことを言うのか俺にはさっぱりわからない。別に早めに出て、早く教室に入って待つのも構わないが、そこは個人の自由というやつだろう。


『今日から、ミミさんは朝ごはんを運んでくれませんよ。』


『あ…。』



そういえば昨日、正式に入学したら、学園の食堂を使うようにミミさんに言われていたのだっけか。その後の街中でのゴタゴタですっかり忘れてしまっていた。



『仕方ない、じゃあ行きますか。』


『はい、行ってらっしゃいませ。』


食堂に向かおうと椅子から立ち上がる俺を、セシィは見送ろうとする。てっきり一緒に来るものかと思っていたのに。


『あれ、セシィは来ないの?』


『私は学園の生徒ではありませんので。』


そう言えば、そうか。生徒ではないと使用できないと確かに言っていた。生徒の従者も例外ではないのだろう。そうなると、例えば学園の関係者、先生などはどこでご飯を食べているのだろう。流石に学園側の関係者は例外だろうか。


そうか、1人でご飯を食べるのか。結構久しぶりだな。


『寂しいですか?』


『まさか、いや全然。うん。』


とはいえ前世では、腹が空いたら近所のファストフード、そんな生活を続けていた俺だ。当然一人の食卓も慣れたものである。気のない返事を返して、本校舎の横にある食堂へと向かう。


食堂が近づくと、寮に住む他の学生も朝食を食べているのだろう、ほのかに良い香りが漂ってくる。中に入ると、まだ早いにも関わらず、中々の人数が集まっていた。


『ふむ。何をいただこうかな。』


朝食はどうやら簡単なバイキング形式で、軽めの料理が端に並んでいる。俺はその中から適当に皿に乗せて、空いている席へと向かう。



『いただきます。』


パンとスクランブルエッグに2枚のベーコンの租借を開始する。周りは上級生の先輩方たちだろうか、友人同士食事しながらの和気藹々とした会話が耳に入ってくる。実に孤独である。


学園の食堂という環境がそう感じさせているのか、1人で取る外食とはまた違う居心地の悪さがそこにはあった。これが、


『…ぼっち飯というやつか。』


…セシィに無理言ってでも、ついてきてもらえば良かった。



『なに変なこと言ってるのよ。』


向かいの席に新たな皿が置かれる。


『リザリー!』


『ちょっと!こんなところで大きな声出さないで!恥ずかしいじゃない。』


食堂で1人もこもこと飯を頬張る姿を見つけて、来てくれたのだろうか。彼女は向かいの席に座って、自分の皿に置かれている朝食を食べ始める。皿の上には俺よりも一回り大きいパンと、朝から食べるにしては多量のおかずたちが几帳面に並べられていた。食べた分だけ良く育つということか。


『いまいちね。大量に作っているから仕方がないのかしら。昨日食べたご飯の方がよっぽど美味しかったわね。』


皿の上の料理を減らしながら、朝食の批評を始める。これはこれで美味しいと思うのだけれど。意外と美食家な彼女の舌を満足させるにはどうやら物足りないみたいだ。


『今度から、あのお店の物を手配させようかしら。』


『それはー。無理だと思う。』


いくら貴族からの頼みだとは言っても、流石に営業時間外だろう。仮にできたとしてもねぼけて作って、品質の落ちること間違いなしである。


『冗談よ。我慢するわ。』


文句を言いつつも手と口を止めないあたり、よくできた美食家である。


2人で食事を勧めていると、俺の横にまた新たな皿が運び込まれてきた。



『おはよう。横、失礼しても良いかな?』


――――


『良いかな?って皿を置いてから言うセリフではないわね。レディの食事に割って入るなんて無粋じゃなくて、ロッドフォード。』


『これは本当に失礼した。他に知り合いが見つからなくて寂しくて、ついね。許してもらえないかな。』


急に横に来られて驚いてしまったが。成程切実な理由があったみたいだ。リザリーとの食事の時間を邪魔されるのは不本意だが、先程まさに同じ寂しさを経験した1人として邪見に扱うのも気が引ける。


『良いんじゃない?この中で、1人で食べてたら胃が痛くなっちゃうよ。ロイ君も座りなよ。』


『…まぁ貴女が良いって言うなら別に構わないけれど。』


俺が、受け入れの姿勢を示すと、リザリーは僅かに渋い表情を見せたが折れてくれる。もしかしたら彼女も、集団に囲まれて1人で食事をとる心細さに覚えがあるのだろうか。いや、彼女に限ってそれはない気がする。


『感謝するよ。ではお言葉に甘えて。』


彼は席に座って朝食を減らし始める。最初1人で寂しく過ごしていた朝のひと時は気づいたら賑やかなものに様変わりしていた。


どんなに伸びても木曜日には更新するはずが、気づいたら金曜あら不思議。誠に申し訳ございません。

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