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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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王都にて⑤

『ごちそうさまっ。』


『中々だったわね。』


『美味しかったです。』


『お嬢様、お口が汚れています。私が拭って差し上げましょう。』


会話もそこそこに、俺達はそれぞれ注文した料理を食べ終える。初めて王都の街中で食べたそれらは、こちらの期待通り、とても美味しく、腹を満足させるには十分な代物であった。


『腹ごしらえもしたし、次はどこに行く?』


『そうね、洋服でも見に行きましょう。』


どうやらリザリーは、王都のファッションに興味があるようで、衣類や服飾などを見に行こうと提案する。女の子らしくて実に良い提案である。もっとも俺は折角だから杖や魔法具が置いてある店に興味があるのだけれど、今回は黙っておくことにした。折角の一緒に外出できる機会が、別行動なんてことになった日は目も当てられない。


『そうだねー。折角だし見に行こうか。』


『えぇ。そうしましょう、行きましょう。お嬢様に似合いそうなお召し物が置いてあるお店も、調べが済んでいます。さぁ、さぁ!』


俺が、テーブルの上に残された、コーヒーに口を付けながら、リザリーの提案に同調すると、セシィも嬉しそうにそれに続く。


飲み物も飲み終え、会計を済ます。それでは行こうかという雰囲気になったところで、ベル君が言いづらそうに口を開く。



『えー、すみません。周りたいところがあるので、僕はこれで失礼します。』


『あ、そうなの?残念。』


どうやら彼とは、ここでお別れという話になりそうだ。確かに1人で入学式の日に街中に出てくるくらいなのだから彼にだって、行ってみたいところがあるのだろう。全員が全員、俺達みたいに何となくで街中に出かけるわけでは無いということだ。



『良いじゃない。そんなのはまた今度で。両手と片足に花なのに、なにが不満なのかしら。』


『まぁまぁ、行きたいところがあるって言ってるんだし、悪いよ。』


それに何より


『女の3人に囲まれて、洋服を漁るって、キツイものがあるって。ねぇベル君。』


さぞかし周りの目が気になることになるだろう。特に男からの視線がものすごいことになるのではないか。リザリーはもちろんの事、セシィも中身はともかく見た目は美人だ。それに俺だって、まぁ、ね、今でも鏡見てるとニヤニヤしてしまう時がある。


『あはは…。』


俺の考えていたことは、的を得ていたらしく、ベル君は苦笑いだ。そんな彼の様子を見て、リザリーも納得したような表情を見せている。


『そういうこと。情けないけれど仕方がないわね。』


てっきり、面白がって連れていこうとすると思ったが。意外な事に彼女はベル君の気持ちを優先することにしたようだ。そんな彼女の言葉にベル君はほっとしたように言葉を発する。


『すみません。今日は本当にありがとうございました。じゃあこれで。』


『うん。また明日。』


『また情けない姿さらさないように気を付けるのよ。』


ベル君が去っていく姿を眺める。その弱弱しい後ろ姿は、うん実に心配である。彼の単独行動をフォローしておいてなんだが、また悪い輩に襲われやしないだろうか。やはり無理にでも今回は連れて歩いていた方が良かったのではないだろうか。



『お嬢様、何じっと見ているんですか。許しませんよ、あんな頼りない男なんて。それよりも、さぁさぁ早く参りましょう。早く早く。』



俺が、ベル君の後ろ姿を心配になって、暫く眺めていると、セシィが俺の手を引いて、訳の分からないことを口にしながら、先に進もうとする。


『ねぇ、セシィ。ちょっと彼の後に付いて護衛してきてくれない?』


『なにを言うんですか!私はお嬢様の方が心配です!言った傍からあんなにあっさりと危ない目にあって。』


ぐぅの音も出ない。いやしかしあれだってもとはといえば、彼が襲われてなければ発生しなかった事件である。案外、俺達に責任はないのではないかと思う。


『いや、だって、ねぇ。』


『まぁ、確かにリリィの心配も分かるけど、あの子から分かれるって言いだしたのだし、良いんじゃないかしら。』


放置できずに、問題に割って入ったくせに。その証拠にリザリーも彼の後ろ姿を見る目に、心配の色が浮かんでいる。


『また何かあったら、助ければ良いだけでしょう。行きましょう。』


何とも勇ましい言葉である。冷たいとか思ってごめんなさい。しかし、



『見てないところで何かあるかも…。』


『うっ。そ、そこまでは、面倒見きれないわよ。まぁ報復には手を貸してあげるわ。』


成程、恐ろしい話である。

――――


ベル君と別れて、俺達はリザリーの提案通り、女性ものの衣類店や服飾店の立ち並ぶ一角にやってきた。ふむ、昼食を食べた店から、ここまで少し歩いたが、優秀なナビゲーターのおかげで迷わずに到着することができたのは良いことだ。流石、事前に調査を済ませたとの言葉通り、我が待女は優秀なナビっ振りを見せてくれた。



『へぇ。中々賑わっているじゃない。』


辺りを見渡すと、結構な数の人が通りを歩いている。若い女性が多く、お洒落を楽しんでいるようだ。衣服に気を使えるのは、お国が豊かな証拠だろう。楽しそうに思い思いの店に出たり入ったりを繰り返している。



『うぐ、制服、ちょっと浮いてるかも。』


学園指定の制服も、貴族の令嬢が着ることも考えられているのか、これで結構可愛らしいデザインがされている。だがしかし、私服の中に入るとどうしても少々目立ってしまう。広場などにいた時にはあまり気にはならなかったが、やはりこう言った通りになると、どうも勝手が違うらしい。



『そうねぇ。どこかで適当に買って着替えましょうか。』


『そうしましょう。さぁお嬢様こちらへ。』


俺達はセシィの案内に従って近くの店へと足を踏み入れる。




『…これは、中々。』


『どれにいたしましょうか。あ、これなんか如何です?』


セシィが俺に店内の品物を一つ手に取って渡してくる。


『ふむふむ、これは…。って履けるかこんなもの!!ねぇ話聞いてた!?聞いてなかったでしょう!?』


俺は渡された物を付き返して、激昂する。


『聞いてましたが?適当に買って付けて帰れば良いのでは?』


『制服の!問題が!何も解決してない!!』


『下着で!帰れば!良いじゃないですか!』


『もうヤダ!頭が痛くて仕方がない!!』



セシィの案内で入った店内には女性物の下着を専門に売られている店だった。本当にこいつは何を考えているのだろう。ベル君はあそこで別れて正解だった。


…流石に男の子がいたらこんな質の悪い冗談はしないか。いやするか。だってセシィの顔冗談言っているときの顔じゃない。真面目な話をしているときのそれに近い、若干必死だ。



『良いじゃないですか!私だってお嬢様の下着を選びたいんです!』

『いーやーだー!絶対に嫌だ!』


セシィに猛反発していると、見るに見かねたのかリザリーが、間に割って入ってくる。


『はいはい。なんか面白いことになっているけど、今日は別のお店にしましょう。そういうのは2人だけの時にして頂戴。私は普通の洋服が見たいもの。』


リザリーはそれだけいうとい一足先に店を出てしまう。


『2人だけになっちゃいましたね。』


『リザリー待って!いや本当に待って!!』


俺は店の外に出てしまった彼女を全力で追いかけた。

2人だけでも御免である。


今回でお出かけ回終了の予定が…。予定は未定ですね。次に持ち越しです。

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