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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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再会の印象

『えーでは取り敢えず、まず自己紹介から始めましょうか。右の列の先頭の方からお願いします。』



教壇に立った案内係の男性、いや名乗ってくれたのに呼ばないのは失礼か。フォルス先生は自分の紹介もそこそこに、生徒である俺達に自己紹介することを促す。しかしそうか、初対面の時のやけに手慣れたフライを唱えていたが、学園の関係者は関係者でも、なるほど教員だったのか。それは上手であるわけである。テント先生ほどではないが。



嫌でも実際のところどうなのだろう。どちらの先生が上手なのだろうかと考えていると。自分の番が回ってくる。しまった。他の人の自己紹介をまるで聞いていなかった。皆どのようなことを話していたのだろう。立ち上がり、取り敢えず前世の記憶を頼りに当たり障りのない内容に留めておく。


『リリィ・フィールです。ポートセルから来ました。趣味は読書です。これまで外に出る機会があまりなかったので、これからが楽しみです。よろしくお願いします。』



俺が簡単に自己紹介を終えると、クラスから音がなくなり、少ししてクラス内が僅かにざわめき始める。どうしたことだろう。何かおかしなことを話してしまったのだろうか。趣味を読書にしたのが不味かったか、暗い奴だと誹られていたらショックだ。気落ちして席に腰を落とす。クラスが再度静かになった後。俺の後ろの子、最後の席の子が自己紹介を始める。


『リザリー・ヴィオラードよ。まぁこれから仲良くしてあげるわ。』


何と高飛車な子だろう。その可愛らしい声からは想像もつかないような、傍若無人、厚顔無恥な自己紹介を彼女が終えると、席を引き、腰を落とす音が聞こえてくる。しかし、どこかで聞いたことのある声だ。そう思って、顔を一目見ようと少しだけ首を回す。


『あら、どこかで見たような顔ね。』


俺の顔を見て後ろの席の少女は語りかけてくる。どうやら彼女は俺の顔に見覚えがあるようで、怪訝そうな顔をしている。その一方で、俺はその少女の顔をはっきりと覚えていた。


あの子だ。


俺は、首だけ回していた姿勢を体ごと回す。まさかこの子も学園の新入生だったなんて。逸る気持ちを落ち着けて、言葉を返そうとするが、俺の首に掛かっている、翡翠色のネックレスに気付くと、彼女の方から言葉を続けてくる。



『んん?そのネックレス…。貴女ポートセルの!!へぇ…フィール家のお嬢様だったのね。ふぅん貴女が。…まぁ良いわ。よろしくね。』


彼女リザリー・ヴィオラ―ドは、何時か見せてくれた笑顔のまま、俺に手を差し出してきた。俺はそれに対して落ち着いて対応する。



『覚えててくれてたの?嬉しい!これすっごく気に入っているの!リザリーって言うのね!また会えて嬉しい!これからよろしく!いやー嬉しい!!』


差し出された手を両手で握って、いたって冷静に腕を振り回す。



『え、えぇ…。よろしくね。』


なんかちょっと引かれている気がする。



『あ、すみません。どうやら皆さんに配布する書類を忘れてきてしまったようで、暫くお待ちいただたけますか。』 



フォルス先生が俺達に苦笑しながら、自らの不手際を打ち明ける。なんだ、以外と抜けているところもある先生なんだなと考えている間に、彼は、扉を開けて外へ出ていく。



『しかし、まさか貴女とこんなところでまた会うことになるなんてね。』


後ろの席に座っているリザリーから、先生がいなくなったことを見計らって声がかけられる。



『本当にね。なんか運命を感じないかな!…ね!』


『ね!って…。また会えた事も驚いたけど、まさか貴女が、あのフィール家の眠り姫だったなんて。なんか拍子抜けよ。全然イメージと違うじゃない。あの時だって、普通に外に出てたじゃない。』


フィール家の眠り姫?聞いたことのない渾名に頭を悩ませる。そんな素敵な女性、家にいたか?俺とセシィと、後数名の使用人たちだが全員起きてる。誰のことだろうかと考えていると、以前セシィから聞いた話を思い出す。


―――『旦那様がお嬢様の容姿を、大層自慢げに褒めていらっしゃるようですよ。』――


恐る恐る、リザリーに事の真意を聞くことにする。


『…ねぇ。そのフィール家の眠り姫ってだれのこと?』


彼女は俺の質問の意味を考えて、一瞬驚いた表情を見せた後、呆れたような顔で口を開く。


『貴女のことに決まってるじゃない。自分のことも分からないのかしら。…本当に何も知らないの?』



彼女の返答を聞いて俺は思い切りうなだれる。椅子の背もたれにもたれ掛かるその姿を実家にいたころの家庭教師が見たらなんていうか。さぞ叱られることは、間違いない。



『お父様め。今度帰ったら無視してやる。』


その姿を見てリザリーが呟く。


『本当に本人なの?影武者とか?もっと儚げな雰囲気を想像していたのに。全然印象がちがうんだもの。』


『なにそれー。最悪だー。』


俺がそう言って、背もたれに体重を任せ、さらに深くうなだれていると、




『ふふっ。本当に拍子抜けだわ。』


目の前の少女はまた可愛く笑うのだった。


やっと今作ヒロイン御登場です。長かった。

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