入学の式典
日をあけた割に文字少ないですが、区切りが良いので投稿。次の更新は金曜か土曜日か・・・。
いつもと違う感覚で目が覚める。俺はまだ馴染みのない天井を見上げていた。
『そうか。今日入学式だっけ。』
俺はベッドから起き上がり今日から長い間お世話になる制服に袖を通す。病弱設定で勝ち取った、女子寮の中でも広い部屋のリビングへと歩を進める。そこには既にセシィが居て俺を待って居た。
『おはようございます。良くお似合いですよ。』
彼女はそう言うと俺に紅茶を進めてくれる。
『ありがとう。髪も一緒に整えちゃったから入学式まで得にすることもないかな。』
『そうですね。朝ごはんも今朝までは、部屋まで届けてくれるとのことです。』
『新入生全員に運んでるとしたら、相当な重労働よね。頭が下がる。』
そんなことを言っていると扉からノックの音が響き、その向こうから美味しそうな匂いがしてくる。
『おはよ―ございます!朝ご飯ですよ。入ります!お、準備万端ですね。感心感心。食べ終わったら食器は外において、遅刻しないように大講堂に向かってくださいね。皆さんの最初の晴れ舞台ですから。』
そう言うと朝ご飯の乗ったお盆を俺達に手渡して、足早に部屋から去っていく。どうやらやはり相当な重労働をこなしているらしい。本当に頭が下がる思いだ。
『じゃあ向かいますか。』
俺は食器を片づけると腰を上げて、入学式の会場である大講堂に向かおうとする。
『はい。行ってらっしゃいませ。』
『あ、流石に、入学式にはついて来ないのね。』
『寂しいですか?』
まさか、と俺は後ろ手を振り、気のない返事をして部屋を出る。寮を出て、昨日の男の案内を思い出しながら目的地へと向かう。大講堂までの道筋には、同じように新入生だろうか。周りをきょろきょろしながら落ち着きがない様子の人達が、まばらな列を作って移動を始めていた。
『これ皆、新入生なんだろうなぁ。思ったより多いけど、本校舎の大きさを考えれば、寧ろ少ないくらいなのかな。』
具体的な生徒数は良くわからないが、この学園には、それなりに力のある貴族の子息令息や、特例的に裕福な商家の子供や、才能豊かな一般の領民が特例的に入学してくるらしいとのことだ。
『貴族、金持ち、天才で、7対2対1ってところかな。この中の1割が天才って考えると、お国の未来は明るそうで何より。』
そんなことを言っていると大講堂へと到着した。
『入学式、会場はこちらです。そのまま列になって入場し、前の席から席を開けないようお座りください。』
昨日女子寮まで案内してくれた男が、これから行われる入学式のアナウンスを行っている。
『おはようございます。』
『これは、リリィ様。昨日は良く休まれることができましたか?』
『はい。あなたとミミさんのお陰様で、良い気分で入学することができそうです。』
正直な気持ちを伝える。男はにこやかに語りかけてくる。
『それは何より。では改めて。ようこそフェルシール王立学園へ。御入学おめでとう御座います。これからの学園生活が実りの多いものでありますように。』
男との短い会話を終えると、大講堂の中へと歩を進める。中はステンドグラスから朝の陽光が華々しく差し込まれていて、何やら神聖な雰囲気を感じさせた。
中にいる人たちを、少々不躾だがきょろきょろと見渡す。これから3年間を共に過ごすのだ。仲良くなれそうな人がいるか探してしまうのは、致し方ないことだと思う。同じように此方をちらちらと伺ってくる視線も感じる。彼らから俺はどう見えているのだろうか。なるべく良い印象を持たれようと、少しだけ口角を挙げておく。柔らかい雰囲気が出せていると良いのだけれど…。
列が途切れ、一通り中の席が埋まると、一人の男性が壇上へと上がってくる。いよいよだ。
『えー、先ずは入学おめでとう。儂が学園長の、ガレウスである。』
猫背で少し背の低い姿とは似ても似つかない、低く落ち着いた声で新入生に挨拶をしている。流石歴史ある学園の町という感じだ。何というか貫録がある。
『まぁ適当に学んで行きなさい。以上。』
勘違いだった。何ともやる気のない挨拶である。そのまま、事務的な説明が進み入学式が終わる。
解散のアナウンスがあり、俺を始め新入生たちが外へ出ようとすると、良く響く声が聞こえてきた。
『あー待ちなさい。折角来てくれたのだからな。儂からのお祝いじゃ。』
学園長が指を鳴らす。
すると、ステンドグラスから差し込まれていた虹色の光が、拡散されて踊りだす。光は徐々に大講堂に満たされていき、それはまるで祝福のように、新入生一人一人の身体を通り抜けていく。
『凄い…。綺麗。』
どこかで誰かが呟く声が聞こえた。
学園長のサプライズも終わり。俺達は大講堂を抜け、本校舎へと入っていく。入学の案内に書いてあったクラス分けに従い、それぞれの教室を探す。見つけた。1-1組と書いてある教室の扉をくぐる。折角なのだからもっとこう、ファンタジーなクラス名を期待していたのだが、なんとも馴染みのあるクラス名である。案内で見た時はちょっとがっかりしてしまったのは内緒だ。
もっとこう、飛龍クラスとか、ユニコーン組とかそんなのを期待していたのだけれど…。
どうやら座席は特に決まっていないようで、窓際の空いている席を選んで腰かける。外が良く見える。ここなら気分よく授業も受けられそうだ。
あらかたの席が埋まったところで誰かに話かけてみようか、などと考えていると、どうやら時間が来てしまったようで、学園中に鐘の音が響き渡る。
金がなっている中、教室の扉が開かれて、一人見覚えのある男が中に入ってくる。
『初めまして。いや厳密には初対面では、無いですね。私がこのクラス担任をさせていただく、フォルス・ランディールです。1年間よろしくお願いします。』
寮まで案内してくれた、入学式アナウンス係の男が教壇に立っていた。




