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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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入寮!

寮母さんの名前が不安定に!。正解はミミです。魔女が宅配する映画を見すぎた結果だと思います。ご指摘ありがとうございました!猛省します。

『フェルシール王立学園へようこそ。リリィ・フィール様。』


学園の前で馬車を降り門をくぐると。何やら、係の者だろうか、もう少しでお兄さんとは呼びづらくなる頃合いの、ギリギリお兄さんに声をかけられた。30手前くらいだろうか。


『寮までご案内致します。此方へどうぞ。』


男はそう言うと俺達を誘導し始める。


『えっと、初めまして、リリィ・フィールです。こっちは待女のセシィ、ご挨拶丁寧にありがとうございます。』


第一印象が肝心だと、丁寧に此方からも挨拶を返す。


『セシィです。この度は御出迎え痛み入ります。ところで荷物はどうすればよろしいのでしょうか。』


俺が突然の出迎えに少し戸惑っていると。セシィが聞きそびれた事を聞いてくれる。確かに、やってやれないことは無いが女二人だと流石に多い量の荷物が、馬車の中には積んである。


『荷物でしたら私がお持ちしますよ。少し失礼してもよろしいですか。』


男は門の外の馬車を指さして提案する。男手があるのは素直にありがたいので特に拒否することもない。


『構いませんが、ありがとうございます。二人だと少し重くって。』


『これも仕事のうちですからね。気にしないでください。-フライ-。』


馬車の中の荷物が魔法をかけられて浮かび上がる。なるほど流石は学園の関係者という訳だ。二つ程の大きな鞄もこれならば問題なく運び出すことができるだろう。俺も今度からそうしようと思う。なにせ私室から運び出すときは中々苦労したものだ。


『流石ですね。学園に来たのだという気がしてきます。ではお言葉に甘えるとして、寮はどちらですか。』


素直に感心の言葉を送ると、男は微笑み、歩き出す。荷物も一緒に男について周るのだが、中に貴重品が入っている可能性を考慮しているのか、その動きは穏やかで、見事な物だった。


『此方です。ついてきてください。』


俺達は男の案内に従い学園の敷地内を歩き始める。敷地内は広く、建物も煉瓦作りの落ち着いた立派な物で歴史が感じられる。外から見た時は城みたいだと感じたが、近くでみると、中々どうして勉学に励めそうな厳かな雰囲気を漂わせている。


俺が物珍しさで周りをきょろきょろと見渡していると。男が振り向いて口を開く。 


『そちらは本校舎です。殆どの授業はその中で行われます。その横にあるのが、大講堂ですね。明日入学式が行われるところとなります。あとは…、入学してからのお楽しみということで。』



意外と茶目っ気のある説明をしてくれる。確かに、本校舎の横に目をやると大きなステンドグラスが特徴的な建物が一棟立っていた。なるほどあそこから俺の学園生活が始まるわけだ。ふむふむ良いじゃないか!


その後も周りを見渡しながら男の案内に従って歩く。暫くすると男が立ち止まる。


『そしてこちらが女子寮という訳です。申し訳ありませんが私が案内できるのは此処までです。なにせ女子寮は男子禁制ですから。』


男が手で指した先には、本校舎に負けず劣らず立派な建物が建てられていた。かなりの大きさの建物である。部屋数が多いのか、一部屋がかなり広いのか。


『すっごい。こんなところに住むの?寮っていうくらいだから。もっとボロイかと、共同風呂とか、小汚い共同トイレとか。』


『ははっ。意外とリリィ様は庶民的な発想をお持ちなのですね。学園には貴族の方もよく入られます。中にはやんごとなき身分の方も…。さすがに気合いも入りますよ。』


思わず素の口調が出てしまった俺を特に咎めることもなく、男が笑いながら理由を説明してくれる。言われてみればなるほどもっともな理由である。立派過ぎて開いた口がふさがらない。しかしながら、


『なんでここだけ真っ白なの?』


女子寮を見て一番初めに思った疑問が口を突いて出てしまった。周りはいかにも煉瓦造りの赤茶の落ち着いた色なのに対し、ここだけ真っ白である。劣化で少し黄色がかっている様子も見られない。よくよく光を反射してくれそうな、真っ白である。端的に言うと滅茶苦茶浮いていた。


『女子寮ですから。』


『そういうものですか。』



俺が男の適当な回答に腑に落ちない様子でいると。女子寮の扉が開かれる。


『ようこそ、フェルシール女子寮へ!私が管理人のミミです!それではお部屋にご案内!フライっ!』


開かれた扉から威勢よく少女が飛び出し、フライを唱え荷物の支配権を男から奪い去る。



『じゃあミミさん。あとは頼みますよ。』


『はいはい任されました。ではどうぞこちらへ。迷いやすいのでしっかりついてきてくださいね。』



そう言うと少女は背を向けて荷物と一緒に寮の中へと入っていく。見失わないように俺達もそれについていく。少女の歩幅は見た目通り小さく、すぐに追いつくことができた。しかし今のやり取りからして、この子が寮の管理人らしいが本当だろうか。見た感じ完全に年下に見えるが。目の前の少女は背筋を伸ばして堂々と俺達を部屋まで案内してくれる。



『えい。』


大人ぶって案内してくれる姿勢に、微笑ましくなってつい背中を指でなぞってしまった。何というのだろう悪戯心が働いたのだ。


『うひぁあ!!…何するんですか!!私の魔法が解けて困るのは貴女の荷物なんですよ!!!』


『ごめんなさい。つい、可愛くて。お手伝いえらいね、お母さんは何処。入寮の挨拶をしたいの。』


きっと本物の寮母さんは忙しくて、愛娘に手伝って貰っているのだろう。本当によくできた偉い子である。


『私が!寮母の!ミミです!確かに実年齢より若く見られがちですが、10以上離れた子に年下扱いされる謂れはありません!晩御飯抜きますよ!!』


『え?』


『お嬢様。案内に書いてある寮母さんのお名前はミミ。そして先程の男性はこちらの方を同じ名前で呼ばれていました。事実です。受け止めてください。』


セシィいわく、どうやら本当に寮母本人だったらしい。全く最近の若い子は、などと呟きながら。若々しい寮母さんがぷりぷりと前を歩く。10以上離れたお姉さんというが、その姿はどう見ても5つは離れた少女のそれであった。


『リリィさんのお部屋はこちらです。全く、初犯なので多めに見ますが二度目は無いですからね。良いですね。』


『えっと、はいすみませんでした。ミミちゃん。じゃなかったミミさん。』


ミミさんはジト目でこっちを見てくるが、ため息を一つ着くだけで留めておいてくれる。


『はぁ、まぁ良いです。晩御飯ですが、申し訳ないですが、正式に生徒になるまで食堂には入れません。今日は部屋まで私が持ってくるので、食べ終わったら部屋の前に置いといてください。』


そう言うと彼女は身をひるがえして去っていった。おそらく他の新入生の案内もあり忙しいのだろう。

『じゃあまた後でねセシィ。』


俺はそう言うと部屋の扉を開け中へと入る。


『あ、そう言えばセシィの部屋を聞くのを忘れてた。どうしよう。』


振り向いて後ろのいるはずのセシィに声をかける。しかしそこには誰もいなかった。


『安心してください。同室ですよ。』


前方から声がして部屋の奥を覗いてみると、中でセシィが既に荷ほどきを始めていた。


――――


『え、まじで?』


『マジですよ。当たり前でしょう。身の回りのお世話をさせていただくのですから当然です。』


そう言ってセシィがやれやれといった表情を見せる。


『帰りなさい。ハウス!!』


『帰りません!一緒に住みます!!』


ぐぬぅ。仕方がなく俺も部屋の奥へと歩を進める。トイレや小さめの個人用の浴室を抜けると少しだけ広い空間に出た。リビングなのだろうかそこには寝具なども特に見当たらない。あるのはテーブルや棚など簡単な家具だけであり、横には恐らく寝室につながるであろう扉が二つ程付いていた。成るほどそう言うことね。同じ部屋で寝ることになるのかと辟易しそうになっていたが合点がいった。


『なるほど。そう言う事、私は手前の部屋を使おうかな。セシィじゃあまた後でね。』


『ダメですその扉は今封印されました。』


『なんでよ!』

でたらめなことを言ってくれる。


『まぁ冗談はさておきお嬢様は奥のお部屋ですよ。使用人より手前の部屋なんて許されませんよ。』


なるほど上座、下座という訳か、座席では無く部屋だが。そういうことなら立場もあるし奥の部屋を使わせてもらうことにする。


『しかし、学生の一部屋が本当にこんなに広くて良いのかな。』


『お嬢様は特別ですからね。特別なお部屋だと思いますよ。』


『え?なんで?何も特別なことをした覚えはないけど。』


『特別な理由で、使用人を、一人連れてきているでしょう。そういうことです。』



すっかり忘れてしまっていた。そう言えば体が弱いということになっていた。今後の学生生活に支障をきたさなければ良いのだけれど。余計な気を使われては、此方も気を使ってしまう。まぁ今から考えても仕方のないことか。


セシィと一緒に荷ほどきをしていると扉がノックされる。


『晩御飯持ってきましたよー。開けてくださーい。』


層やらミミさんが晩御飯を本当に自ら持ってきてくれたようで、扉を開けて迎え入れる。

彼女は両手でお盆を持ちながら、そして魔法でもお盆を浮かべながら部屋の中へと入ってくる。


『病み上がりなのに、長旅で疲れたでしょう。明日からに備えて、いっぱい食べて、いっぱい休んでくださいね。入寮祝いです!』


そう言って、テーブルに食べきれない位の御馳走を並べてくれる。


『学園生活に幸あれ!きっと楽しくって病気なんか忘れちゃいますよ。』


寮母が眩しい笑顔で言い放つ。その姿に心が温まり、案外役得なのかもしれないと、そう思った。


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