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悪役に恋して  作者: 冷凍みかん
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初めての浪漫飛行

はいっ!私、昨日サボりました!

投稿日的には毎日っぽく見えるけど・・・。私は確かにさぼったのです!

『自由な発想ですか…。』


『そうです。先ずはしたいことを想像して、出来るように努力する。それが1番可能性が広がる方法です。教科書通りの魔法なんてつまらないでしょ。』


ドヤ顔をしながら先生がそう言う。確かに1理あるかもしれない。


『でも最初は座学なんですよね?』


『まぁそうですが。何と言えばよいのか。本を読むにも先ずは文字を知らなきゃならない。言葉の意味を良く知っていた方が想像も広がる。でも解釈するのは読み手の自由。そんな感じです?』


先生がまた例え話で俺が測りかねていた意図を説明してくれる。自由な発想を大事にしている割にはどうやら、根本的な所では地に足つけた人なのだろうか。そのあたりは第一印象とつながるところがある。


後半自分の説明に自信がなくなったのか疑問形になっていたが、なるほど納得である。

砂糖が甘いのかしょっぱいのか、わからなければマトモなレシピは作りようがないとうことか。


『なるほど。分かりました。』


俺がそう言うと先生は少しほっとしたのか授業を続けてくれる。 


『では魔法の概要を簡単に説明したところで、次はどのようにして魔法が発動するのかですね。』


確かに、昨日セシィや父から聞いて魔法は体力を使うものだということは分かったが、詳しいことは良くわからないままだ。まぁ別にいいかと詳しく言及しなかったのはこちらの怠慢だが。だってちょっと本が読みたかったから…。


『魔法とは体内にある、魔炉で作られた魔素を外に出して操ることで、不可思議な事象を起こすことです。魔素のことは魔力とも言いますね。まぁどちらでも通じます。直接炎を出したりしているわけでは無いということです。そんなことができるのはドラゴンぐらいですね。…まぁあれも魔素といえばそうなんですが、それは置いておきましょうか。そのため先ず知る必要があるのは、魔素を体外に出す方法、そしてそれを事象に変換する方法です。そうすれば大概のことができますよ。』


先生が一息で不可思議な言葉を、勢いよく浴びせてくれる。これも魔法なのだろうか。

・・・だって不可思議だし。


『先生、すみません。魔力、いや魔素を出して、ぼわ!っとさせるというのは、何となくわかったのですが、魔炉とはなんなのでしょうか?』


正直魔素についても良くわからない。昨日の皆の言い方だと体力を使うものかと思っていたのだけれど、どうやらMP的な物が存在しているのだろうか!ふむふむ、燃えてくる!


『失礼しました。魔炉というのは体力を基に魔素を作り出す器官のことです。内臓の一種だと思ってください。もっとも内臓と違って、腹部を切られても視認は出来ませんが。』


グロデスクな説明だが、そう言うことなら昨日のセシィの様子も納得できる。頭を使いすぎて疲れた。などということでは無く、本当に体力そのものを使用しているようだ。しかしその疲れ具合には個人差があることは昨日実証済みだ。つまりこういうことなのだろう。


『なるほど。そして魔炉の変換能率には個人差があって、それで魔法が使えるものと使えない者がいる。そう言うことですか。』


俺の考察に先生は少し驚いた顔を見せる。


『はい。ご推察の通りです。少しの体力で多くの魔素を作り出せる者もいれば逆もいる。もちろん鍛えて体力をつければ強引に強力な魔法も使えますが、その体力で殴った方がずっと強力です。』


『変換能率はどのようにして測るのでしょうか。』


『それに関しては実際に使ってみるまで、わからないというのが実情です。まぁもっともリリィ様に関しましては、そう心配することもないかと思いますが。』


俺の疑問に対して、魔法の適性の有無を心配していると思ったのか、優しい声色で答えてくれる。試しに使ってみたときの感覚では問題はなさそうだったので、別に心配はしていなかったのだが、先生はそれを知らないはずだ。何故言い切れるのだろう。


『それは嬉しいです。ですが、何を根拠に言ってくれているのか教えていただいても?すみません。やはり心配で…。』


『それはリリィ様がリカード様の御令嬢であるからです。もちろん例外はありますが、魔炉の能力は遺伝することが多い。高名なリカード様の御令嬢であれば、全く使えないということはないでしょう。魔法使いが貴族に多いのもこの辺りが原因ですね。』



なるほど、そう言うことか。ならば昨日のセシィの心配は杞憂だったのだろう。そう考えそうになったところで、自分が病弱だと思われていたことを、思いだす。彼女が魔炉と魔素の特性について知っていたかどうかは知らないが、いくら能率が良くても体力が少なすぎたらきっと駄目なはずだ。もし魔法が直接的に体力に起因すると彼女が知っていたのであれば、それは心配もするだろう。そう考えるとその後の軽い扱いに少しだけ罪悪感を覚える。何しろあんな焦った様子を見るのは、滅多にない話だ…。

あとで謝らなければならないなと考えていると、もう一言先生が付けたす。


『それに、こんなに聡明で美しい方が魔法に愛されていないわけがありませんから。』


―――――――――――――――――――――




なるほどどうして先生はやり手である。温室育ちのピュピュアな乙女だったら胸が熱くなってしまうところだ。悲しいかな、俺には効果はいま一つのようだ。少し自分の発言を思い返して苦笑しているところを見るとどうやら中々に天然なのだろう。ふむ苦労しそうである色々と。よく見ると女難の相も顔に出ている。父にも出ているのだから間違いない。



『先生はお上手ですね。ですが納得しました。あ、前半のお話ですよ!お父様に感謝しなくては。』


俺が特に気に留めていないように返事をすると、先生は露骨にほっとしたか表情を浮かべる。うん、やはり苦労しているようだ。羨ましい話だけどな!叶わない夢というのはいつの世も儚いものである。くそっ!



『では今日の所は、座学はひとまず終了です。』

『え!?もうですか。先程は座学が多いとおっしゃっていましたが。』


『はい。魔素の出し方、操り方については実際に体感する方が、分かることが多いのでそれに。』


そう言って先生は俺の後ろにある時計に目をやる。


『もう大分時間も過ぎてしまったので、そろそろ実際に使ってみたい頃合いではありませんか?』


振り向くと時計の針は、既に授業が終わる30分前を差していた。




『では先ずは簡単な基本魔法を練習しましょう。フライという魔法はご存知ですか。』


『はい。物を浮かせる魔法ですよね。』


フライか。昨日試したこともあって、結果がわかっている分少しだけ、気落ちしてしまう。

先生がそれを知っているわけがないので仕方がない話ではあるが。


『そうです。慣れれば自分も浮かせることができるので楽しい魔法です。』


そう言って先生は少しだけ浮き上がって見せる。なんと!物を浮かせるだけの魔法かと思っていたが、浮かせられるものには自分の身体も含まれていたらしい。これには素直に驚きを隠しきれない。


『先生凄いっ!是非教えてください!』

『他にも色々と応用がききますよ。自分を浮かせるのではなく、浮かせたものに乗って移動して見せたり、あとは、あぁ物を投げつければ攻撃にもなりますね。どれもこれも普通とは違う用法ですが、これが自由な発想というやつです。』


少しだけ茶目っ気を出して先生が笑う。


『まぁでも、魔炉と魔素の使い方を覚えるためですので、最初はやはり普通に物を浮かせるところから…。』

先生が何かを言っている気がするがもう聞こえていない。凄い。やはり先生は凄い人だったのだ。こんな楽しい魔法を教えてくれるなんて。早速これは試すしかないじゃないか!

昨日の感覚を思い出す。あの時は本に手を向けて照準を合わせていた。ということはだ。俺は自分の意思とは無関係に、最近膨らんできた胸に手を当てて唱える。


『フライっ!』


勢いよく飛び上がる。飛んでる!凄い!俺飛んでるよ!


『…え?』


先生の顔が見える。表情が固まっている気がするが、もうそんなことはどうでも良かった。そう、もうそんなことはどうでも良かった。俺は今日から飛べる人になったのだから。

しかし興奮しすぎて、


『出来た!凄い!フライ凄い!先生っ!出来!……いったぁっ!!』



天井の高さに、限界があることを忘れてしまっていた。


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