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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
7/24

自己チューと狐?の冒険7



 苦行だ。俺は今苦行をしている。

「ぜっ、ぜぇっ、ちょと、ちょっとまっ……」

軽い徒歩のつもりでいたのに

急に山道へ入ったかと思ったら道なき道をズンズンとつき進む

変態こと俺の幼馴染にして今やサリアギルドの

ギルドリーダー補佐様、サリー。


「もう、だらしないわよ?これくらいで。

どうせろくに運動してないとかで鈍ってんじゃないのー?」

こいつはなんだ、エスパーか。魔術師か。

グサリと真実をついてくるぞ。


「ほら、キリキリ歩く!時間が無いんだ、か、らっ!

全くあんたはサボり癖さえなければ」

俺の前をすいすい歩いていたかと思えば

いつの間に俺の背後に来たのか

俺の背中を押して進ませようとする変態。

ちょっと、まじで、こいつの身体能力はどうなってんだ。


 大体、なんでこんな苦行に巻き込まれているのか。事の発端はあれだ。






「アデル、あんた。あたしの依頼手伝いなさいよ」

何を言い出すのかと思えば

サリーはまじに突拍子もない事を言ってきた。

「はぁ……!? 依頼いいいい!?」

静かな店内に俺の素っ頓狂な声が響いてしまい

二人にシバかれてしまった。


「どうせロクに依頼受けてないんじゃないの?

ポイントやばいんじゃないの?」

うっ。言葉に詰まる。

なんで分かるんだこいつ。エスパーか。


「あ~。まぁアデルはギリギリって所だっけ~?」

特製ミルクティーを飲みながら、ウィルが言う。

「まぁ問題はそこじゃねぇけどな……」

「ま〜問題はアデルよりもねぇ……」

かぶった。二人して深い溜息をつく。

聞こえてるかハゲよ。これが二人の総意だ。


「ほ~ん。連帯でヤバい感じなんだ?」

ウィルと頷く。「じゃあ余計手伝いなさいよ。

結構いいポイントになると思うわよ?」

おいおいおい、冗談じゃねぇ。

レベルの差を考えろ。ってか、こいつ今いくつなんだろな?


「今いくつなんだ、レベル。」

ズズッと当店オススメレモンティーをすする。うまい。

「35」

ブフォオオオオ!盛大に吹き出す俺とウィル。

どうやったら、そんな上がんだよ!

「きったないわねっ!うおぁっ、ウィルちゃんまで!?」

「ゲホッ!ゴフッ、あのな……」

慌てて来てくれた店員さんがテーブルを拭いてくれた。

ついでにおしぼりまで出してもらったよ。

まじで申し訳ない……。


 サリーにおしぼりで顔を

拭かれまくってるウィル。保護者か。

「いいか、よく聞け。俺の今のレベル、8だぞ」

聞いたサリーの、ウィルの顔を拭く手が止まる。

「ボ、ボク5、デス……」

カクカクとゼンマイ仕掛けの人形みたいに首を動かす。

「ま、まぁ、そんなもんじゃない、の?ちょっと、低いかなぁなんて思ったけど?

ま、まだまだ駆け出しなんでしょ?二人とも」

物凄いわかりやすい反応だった。

「で、手伝うでしょ?」

顔は一通り拭き終えたらしく、今度は手を拭き始めたサリーが続ける。

「あ、あぁ、まぁ、俺のレベルでも大丈夫そうなら……」

くるっと俺の方に向き直り「決まりね!」

ニコーッと笑うサリー。

まぁ、こいつが言うんなら問題ないだろ……。


 この浅はかな考えが地獄の入口だと

その時は思ってもいなかった自分が恨めしい。




「じゃあ」とウィル。

「ボクはアデルの家に行ってるよ。例の件で」

俺とウィルは今俺の家にいるテリアとラガー君に森の話を聞く事にしていた。

「サリーちゃんの依頼ってぇ、どれくらいかかりそうなものなの?」

「ん〜、順調にいけば夕方には帰ってこれるんじゃないかしら?うん。順調にいけば。

場所は近場だし、人?に会うだけだしね」

「え、そんだけ??」それ依頼になんのか?

サリーはちょっと困った顔を見せ

「まぁ、ここだけのぶっちゃけた話」



******


 サリーの所属するサリアギルド。

城の騎士達にも遜色ない

実力者揃いだといわれている。

実際にどこかの剣術大会で

入賞した元傭兵だとか、騎士崩れだとかが多いんだと。


 その中でもずば抜けているメンバーが四人。

一人はギルドリーダーのアインツ。

その剣術は凄まじく、一振りで大型のモンスターを倒すのだとか。

まぁサリアみたいな大ギルドの仕切りを任されてるような奴だ。

噂に違わぬ化けモンみたいな奴なんだろう。


 そしてギルドリーダー補佐、サリー。説明は特にいらないか。


 次に最近ギルドに加入したらしい新人。

筋骨隆々なタフガイ。色々と豪快なランサー。

名前はスライ。こいつとは現在リーダー補佐の座を賭けて熾烈なポイント争いをしてるらしい。


 最後にアインツと同期らしいんだが

それ以外の詳細不明。自分の事の一切を秘密にしてる魔術師のニーナ。

この四人が中心になってサリアギルドの依頼をこなしているってんだが。

最近になってサリーはリーダーのアインツに不信感を感じているという。


「以前のリーダーは、適切な距離感をはかって人と接するようなタイプっていうか。

同じギルドメンバーなら分け隔てなく接する人だった。でも最近のリーダーは明らかにおかしい。

相手がどんな依頼人だったとしても

暴言を吐くなんて事はなかったし

些細なミスをしたメンバーに剣を向ける事なんてなかった」


 剣を向けるって、なんつう物騒な。

「それだけじゃない、何かいつも苛立ってるような。時々まるで見えない誰かと

話してるみたいにずっとブツブツ言っててさ。

……なんかもう、言葉は悪いけど目がいっちゃってるんだよね」

「なにも心当たりはねぇのか?」

そういう俺にサリーは曖昧な表情をする。


「それがわからないんだ

メンバーの魔術師が、時折リーダーから違う魔力を感じる、とだけ」

それに。と、言葉を続ける。


「ほんの僅かなもんだけど

あたしも人より魔力があるんだよね。魔法が使えるようなレベルじゃないけど。

だから魔術師の子達が嘘を言ってないのは分かる」

「それだと、手掛かり無さすぎてどうしたらいいのやらって感じだな」


「大昔には普通にあったっていう

精神を蝕む類の洗脳魔法かもしれないし、似たような術を封じた魔書だってあるかもしれない。それか全然違う理由かも知れない。

とにかく思い当たる事がなさすぎて。

でもこのままじゃ、いつか問題を起こすわ。そうならないように手を打たないと」


 ああ、纏まった休みをもらったってのはそういう事なのか。

こいつ自身色々と調べてるって事なんだな。


 と、頭を抱えて大きなため息をつく。

「こんな、ギルドの危機にも行方すら分からなくなってる

ギルド一の魔術師ってなんなんだよぉ~~~もぉぉ~~」と

テーブルに突っ伏しながらジタバダともがく。

変態も自己中な同僚に余程ストレスを溜めてるようだ。


 その時。「ああっ、なるほどぉ!」

思わぬウィルの声にまたレモンティー吹きそうになった。

「そうか、抗魔鏡だね!」テーブルに突っ伏し

屍のようになっていたサリーがガバッと起き上がり

「ウィルちゃん知ってるの!?」と目を輝かせた。

「前に授業で習ったくらいだけど」とはにかむウィル。

もうここまでで完全に空気な俺。

「確かになんらかの魔術が関係してるんだったら。それで元に戻るかも」




 ここからは二人の話から推察した誰でも分かる抗魔鏡講座だ。

人は魔力を誰でも微量ながら持ってると言われてる。

大抵の呪いと言われるものの殆どが

その個人の魔力に働きかけ術になってるんだそうだ。

中でも自分の魔力と波長を合わせる事で

人の精神を蝕むとかいう呪いがあるんだと。

サリーはどうやら、これにギルドリーダーが

掛けられているんじゃないかと疑っていた。


 その術ってのが殆どが魔書を媒介にして魔法を掛ける事で成功させるという。その後呪いに掛かった人間はちょっとずつ壊れていくらしい。

うん、なんとも恐ろしい話だな……。

んで、合わせられた波長を一時的に乱し

魔力を枯渇させた後、時間はかかるものの

元の本人の波長に合わせていく事ができる抗魔鏡というもんがあるらしい。

普通じゃ生命力に直結する魔力が無くなると最悪死んじまうもんらしいが、この抗魔鏡は魔力だけをキレイに切り離す事が出来るらしい。


 なんでもペンデールの近くに住むゴブリン族が

その昔技術の粋を集めて作った幻の一品とされてるんだとか。

ゴブリンと聞いて、うへぇ……となる俺。


 モンスターの中には比較的友好的な種族ってのもいる。

まぁこれにはテリア達グリーンウォルフも入れていいんじゃねぇかな。

そんなかでも、人に近い存在にゴブリンって種族がいるんだが。


 縄張りを重んじるゴブリンは、自分達の住みかに近づく者をめっちゃ嫌う。

基本人間との接触はないし、普通に生活してたら会う事なんてまずない。


 大抵は仲介役を挟んでふらっと交易の場に現れ

彼らの珍しい技術を施した工芸品なんかと食糧や織物を物々交換という流れが多い。

ゴブリンの技術には面白いものが多くコレクター人気があり高値で取引されてるって話だ。


 また、そんなゴブリンばかりじゃない。

ってのが問題で。中には山賊みたいに行商人を

襲うゴブリンもいる。実はそっちのが多かったりする。

以前に比べて少なくなってるらしいが田舎への品運びはまだまだ陸路が多い。

そのせいもあり輸送の護衛は依頼の中でもかなりメジャーな類いで

一人前になるための冒険家の登竜門ても言われてる。

バケツネズミなんかとは比べものにならないくらいの相手が複数相手だ。

俺がうへぇとなった理由わかってくれたか?

そんな奴らのアジトに行こうってんだ。

まぁそうは言ってもこっちには

ギルドリーダー補佐様がいるからな。大丈夫だろ、多分……。




「そんな役立つ鏡なら、ギルドとか、ほらそれこそ研究塔で保管してたりしねーのか?」

「んー、それは無い、と思うわ。むしろあったら大問題っていうか」

ん?大問題?よく話が見えねぇな?

「元々あるかどうかもわからないし。

だからこの事はあたし一人で動いてんの」


 つまりゴブリンの住みかに乗り込み

鏡を貸してもらえるよう交渉するってのが

サリーの依頼ってわけだった。



******


「なぁに、考えてんのよ!」

ぺしん、と頭を叩かれた。

「いってぇな、回想だ、回想。大事だろ!」

「は、はぁ?あんたってば昔っから

ボーッとしてたけど、まさかここまでとは……」

失礼な。回想だっつってんだろ。


「それにしたって、お前なんで丸腰なんだよ。襲われた時どうすんだよ」

「相手はあのゴブリンなのよ?

ただでさえ住んでるとこに乗り込むんだから

余計な刺激は与えない方がいいでしょーが」

大体、と俺を押す手を止めて言う。

「あんただって随分ラフな格好できてんじゃない」

目だけをチラッチラッと上下させ俺を確認する。

上だけを覆うタイプの皮の鎧にショートソードのみ。


こ れ が 標準 装備 ですが なにか?



 しばらく道なき獣道を歩き続ける事1時間強。ふいにサリーが立ち止まった。

「見えてきたわ。多分あれね」

ペンデールから東にちょこっと移動した先にある背の高い木々に覆われた小高い山。

そこは当時の伐採を行っていた場所らしく

山の中央には開けた空間が残っていた。

打ち捨てられた小屋やちょっとした建物を修繕した見事な村がそこにはあった。



「さぁて、行きますか!」

繁みの中で暫く中の様子を伺っていた俺達だったが

明るい声でそう言うとサリーはズンズン歩き出した。

「ちょ、ちょっと待てって!まだ心の準備がっ」すんなりと交渉が進めばいいんだが。

嫌な予感するよなぁ……。






******



「帰れ!」

小屋に響くじいさんゴブリンのデカイ声。

耳キーーーンなったわ。


「理由も無しに帰れと言われましても

引き下がれません!お願いします!」

ガバッと勢いよく頭を下げるサリーに

しわくちゃで表情の見えないじいさんゴブリンは何も答えない。


 会って早々の険悪ムード。敵対心バリバリだ。

取り付く島もねぇ感じのじいさんになおも食い下がるサリー。

俺達とじいさん、三人は今、村の中で比較的大きめの小屋の中にいる。まさしく工房って感じ。


 入ってからずっと。

外からの無数の視線と殺気を痛いくらいに感じてるんだよなぁ……。

ぱっと見た限り12、13人程が小屋を取り囲んでんのが分かる。これ一斉に襲われたらたまったもんじゃない。


「そんなもん、ないもんはないんだ。諦めろ!」

吐き捨てるように言うじいさん。

「ここに住むゴブリン族の方々が代々

抗魔鏡を管理されてると聞いてきたんです!」

まだまだ食い下がるサリー。



「そんなもんはない!」「でも!」

このやり取り、どんだけ続いたか。

ふぅ。とため息を漏らしたじいさんゴブリンはお茶を一口含むと

「おまえさんの言う鏡の材料なら確かにある」

パッと顔を上げるサリーの顔は期待に満ちていた。

「だが無理だ。これは意地悪で言ってるんじゃない」



 じいさんゴブリンの話だと

この集落から更に森の奥に行くと人が捨てた坑道があると言う。

そこではちょっと珍しい銅が採れるらしい。

そしてその銅が長い年月をかけて

変異したものが抗魔鏡の材料になるんだそうだ。

まぁ確かにそんなの狙って採れるもんじゃない。


 それにな。と続けるじいさんの顔は

更にしわくちゃになり、苦い顔をしているようだった。

「普通の銅を採ろうにも今や坑道に

住み着いちまった石化バットのせいでここ数年まともに

中に入れてもおらんのだ。残念だが、諦める事だな」


「石化バット!?」

本でしか読んだ事ないが結構悪質なモンスターじゃねぇか。なんだこの最近のモンスター遭遇率は。


「じゃあおじいさん、その石化バットを

駆除出来たら素材を使って作ってもらえます!?」

まぁ、そうなるだろうなとは思ってた。


「やめとけ、やめとけ!この山に人間の石像なんざ置く趣味はない!」

「でも、あなた方も困ってるんでしょ?

銅が採れないと工芸品を作るのも難しいんじゃない?」

うぐぐ、と唸るじいさん。なるほど。

小屋の中は木彫りのものだったり木製の家具ばっかりだ。

俺が小さい頃に見たゴブリンの工芸品っていや

不思議な音色のオルゴールとかあっためてもないのに

ほんのりあったかいフライパンとか、そんなんばっかだったのに。


「あたし達が坑道の安全を確保する。

おじいさん達は元通り物作りができるようになる。

もちろん、抗魔鏡を作って頂く分は別途にお金をお渡しします!

どうでしょう、凄くいいお話だと思いません!?」



 じいさんゴブリンは少しの間う~んと唸っていたが、ちらりと奥の扉を見やる。

「わかった。おまえさんのその自信に賭けてみようじゃないか。」

俺とサリーは思わず顔を見合わせにやけてしまった。

「ありがとうございます!」すぐに向き直り深々と

頭を下げるサリー。俺も遅れて頭を下げる。



「モグ、こっちへ来なさい」

これまた一際デカイ声で誰かを呼ぶと

工房の奥にある、古い扉が軋みながらゆっくりと開いた。

見るとウィルとさほど変わらないくらいの

背丈の子供のゴブリンが扉からちょこっと顔を出し

こちらの様子を窺っていた。

「孫のモグだ。こいつが坑道までの道案内と抗魔銅の見分けをしてくれる」



 扉からオズオズと中に入ってきたモグは、なんとも恥ずかしそうに

「モ、モグち、言います。よ、よろしくお願いします……」

そう言い、俺達にペコリとお辞儀をしてくるのであった。


はーい、どもどーもー。

今回もありますよー。アデル・ノートの一言ノート!


だいぶねー話が緩やかですけども。ねー。

展開が遅すぎて飽きられんじゃないかって作者こぼしてたのに


じゃあサクサク進めろよ!とはねぇ。なかなかねー?


数もめっちゃ多いファンタジー系なんだからサクサク軽快に面白くないとさぁ。

あー、でも俺達はそんなんじゃないからねー。期待しても出来ねぇもんは出来ません。


え、さっさと進めろ?それは作者にいってk

え?進行?時間が押してる?


全く世知辛い世の中ですなぁ。


じゃあ、パパーッといっちゃいますか。

今日のお便りは、ブルティア在住のクラウドさんから頂きましたー。


えー、アデルさんコンニチハ。はいコンニチハー。

話数も増えてきて、いささか文章もまともになってきたのはいいんです、が。



い つ に なっ た ら 出 し て

も ら え る ん で しょ う か。







わかりません!

はい、てなとこでねー。お時間きちゃいましたんで、今回はこの辺でしーゆー!


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