自己チューと狐?の冒険24
サリアとカルデナール、ギルド本部を交えた会談は予想外の展開をみせた。
この度のサリアの侵略行為、並びにサリアのギルドからの独立に関して間違いないと断言。
ギルドはすでに解体したとしてメンバーの返還を拒否した。
これに対してカルデナールの外交官は更なる説明を求め追及を行うが
予期せぬ来訪者の乱入により会談は中断を余儀無くされる。
魔導国家ファフニルムの使者であると名乗る来訪者は同時にサリアの同盟国であるとも明言。
両国はギルド加入国に対し交戦する意思があると話すと
取り押さえようとするギルド本部を翻弄するように会談の場から姿を消した。
******
世界を揺るがしたサリアの宣戦布告から季節は過ぎ
収穫節も終わりを迎えようとしていた。例の会談後、ギルド本部は
カルデナールの協力のもとサリアに再度交渉の場を持ち掛けようとしたが
突如大陸を覆った謎の濃霧に遮られ未だ誰1人としてサリア国に辿り着く事が出来ないでいた。
あれからサリアは不気味な沈黙を保ってる。
ブルティアやパンパーバなんかからも、すぐに兵を撤退させ目的はわからずじまい。
各町の復旧活動は始まってるものの、住民の不安は大きくほとんどの人が
ペンデールや他の大きな国に移住しちまった。まぁ当然っちゃ当然だよな。
俺達も例外じゃなく人のいなくなっちまったブルティアからペンデールに移住した
アシカ亭の面々にくっついていく事になった。現在アシカ亭2号店と名付けられた
ブルティアギルド出張所改め料亭兼酒場で世話になっている。
「ここでなら色んな情報が入ってきます。きっとニーナさんの事も。だから」
実のとこ、デイジーちゃんの提案がなけりゃ俺の足が治り次第ニーナの体を追って旅に出るつもりでいた。
「定食あがったよ!3番さんね!」女将さんの声が店内に響き渡る。
「アデルん、3番さんですよ!早く!」
足に巻かれた巨大なギプスの上でキーキー騒ぐニーナ人形。
松葉杖生活にも慣れたもんで今じゃ店を手伝えるまでになった。
「だぁっ、うるせぇな。分かってるよ、お待たせしましたぁエビチリ定 ゲッ!」
「ゲッ、て何よ、ゲッて!!!」
皿を持ってテーブルに向かうとそこには見た事のある青髪の女が座ってやがった。
「……オマタセシマシター」なるべく目を合わせないように皿を置く。
「ちょっと、こっち見なさいよ。店員でしょうが!態度悪いわね!」
「これな。お前の顔を見る仕事じゃあねーんだよ、とっとと食ってはよ帰れ!」
「なによ、ブツブツ……心配を1ミリくらい……」
なんて?モゴモゴ言ってて聞こえん。
「アデルん?お客様にそんな態度とって。女将さんにチクりますよ?」
「あ、勘弁して下さいニーナさん」
「へぇ。すっかりその体が板についてきたみたいじゃない、ニーナ」
「フフン、わたしさんの適応力の高さ、我ながら惚れ惚れするわ、するでしょ?」
得意げに背中をそらすニーナ人形にデコピンをくらわす。
「で?こんな世間話する為にペンデールくんだりまで来たんじゃねぇだろな」
定食のスープをズズっとすすると、まぁ待てと言わんばかりに手を突き出す。
「もう、アデルさん。またサボってると怒られま……あら?サリーさん、いらっしゃいませ」
お盆を持ったデイジーちゃんがサリーに気付き頭を下げる。
「オッスオッス!体はもう大丈夫なの?大変だったみたいじゃない」
あの後のデイジーちゃんは3日3晩、目を覚まさなかった。
グリーンウォルフ達のおかげで出血は瞬く間に止まり、あんなにあった傷も綺麗サッパリ消えていた。
でも度重なる魔力の欠乏による副作用に体は耐えられるはずがなかった。
「ほんとだぜ、このまま目を覚まさなかったらって思って俺毎日祈ってたんだぜ。
すげえ心配だったんだからよ」
「んぶっ、ゲホゴホ!!」口に含んだトーストを噴き出すサリー。きたな!
「おおお!アデルん、それってもしや、もしや!?」途端はしゃぎ出すニーナ人形。
デイジーちゃんは耳まで真っ赤にして俯いている。
「いやいや、嘘じゃねえからな?まじで心臓止まるかと思うくらいの恐怖だったんだって」
「……恐怖?」それまでやいのやいのと騒いでいた空気が一転、シーンと静まり返る。
「お、おう。このままデイジーちゃんが目ぇ覚まさなかったら女将さん達に殺されるって
ひやひやで生きた心地じゃなかったっ……て話、だけd」
言いかけて余りの寒気に言葉が出てこなかった。それまで真っ赤だったデイジーちゃんが
真顔も真顔、ゴーレムに向けた目付きなんて目じゃないレベルの殺意のこもった目で俺を見る。
「あ、ああ、そっちか。なぁるほど、そっちね」と場違いな明るさで話すのはサリーのみ。
「……アデルん、そりゃないわ。そりゃあないですぞ」心底見下げ果てたと言わんばかりの毛玉顔。
「はぁ……」俺から目を離す事なく真顔でため息をつくデイジーちゃん。コワイ。
「……おかあさーん!アデルさんがサボってる!」
「ふぁっ!?」
言い訳をする暇もなく神速の如き一撃を叩きこまれたのは言うまでもない。
「ただーいまぁ。出前行ってきたよぉ、って、何しゃがんでるのぉ?アデル」
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「そうそう、ここに立ち寄ったのはあんた達に調査結果を教えとこうと思ってね」
定食を平らげ満足気な顔のサリーがふと思い出したように言った。
「調査結果、ですか?」「そそ。例の魔導国家とかいうとこのね」
「あれま。そんな簡単に外部の人間に教えちゃっていいのかしら?サリー」
「外部って言ったって今回の事件に関してはあんたら当事者みたいなもんでしょ。
あんた達には当然知る権利があるわ、どう?聞く?」そんなもん、勿論イエスだ。
「ちょっと、待ってください。確かその魔導国家ファフニムルは
南の国境にまたがるオリバー山脈地帯にあるというお話でしたよね?」
「さすが、ブルティアリーダー。すでに情報は把握済みってわけね。
そ、連中が言うにはそこに国がある、て事だったんだけど」
「おかしいですよね。サリアとブラウメンの国境付近には険しい山があるだけ。
国どころか村や町なんてなかったはずです」
「わたしさんも聞いた事ないなぁ。てか、『魔導』なんて掲げる国があるなら
ギルド本部がすでに嗅ぎつけてるでしょうよ?」
「その真偽の調査、ってわけか。んで?結果は?」
「いやぁ……それがさぁ。 あったのよ、それらしきものが」
サリー率いる少数からなる調査団はオリバー山脈地帯を徹底的に調べ上げた。
現地について分かった事は、人を寄せ付けない切り立った険しい岩肌に
木の一本も生えていない程の過酷な環境で人が住める場所ではない、という事。
だからこそ秘密の隠れ家のようなものを造る事が出来たのでは。
との本部の見解によりサリー達は引き続き調査を続行。
そして一週間を経てついにそれらしきものを見つけ出したのだ。
「最初は山肌に自然に出来た裂け目だと思ってたんだけどね。
そこに人の出入りがあったのよ。ほんと偶然、あれを見逃していたら発見出来てないわ」
大きく裂けた外壁を調査していくと、一か所色の違う部分を発見。押し込んでみると
「そこに、国があった、と……?」信じられない物を見るような顔でデイジーちゃんが呟く。
「実際は入口を見つけただけね、中の規模がどれくらいかわからない。
でも入口からでも分かるだけの強烈な魔力が計測されたわ、恐らくあそこがファフニムルね。
依頼元のカルデナールにはすでに報告書送ってあるから、あとの事はカルデナールに任せるわ」
「そいや、その調査にスライは一緒じゃなかったのか?」
「スライ?一緒じゃないわよ?スライは諜報部隊じゃないからね。
サリアに潜入してたのは特別な事情があってだし、なんか用事?」
「いや、用事ってもんでもねぇけどさ。ギルド本部の招集ですぐ行っちまってブルティアを守ってもらった礼も言う暇なかったからよ」
スライの豪語は伊達じゃなくまじで凄かった。森から戻ったブルティアで見たものは山と積み上げられた伸びたサリア兵。そしてその中心で大いびきをかいて寝てるボロボロな姿のスライだった。
「ふぅん。アイツ治安部隊だから、あんまり会う機会ないのよ。ま、誰かにでも伝言頼んでおくわ」
「さっきから部隊とか言ってっけどなんか、えらく軍隊みたいだな」
「そうね、確かに本部は軍隊に近いものがあるかもね〜。まず本部長がいて、その下に5つの部隊があるのね。それぞれに部隊長がいて、あたしはその下の小隊の1つを任されてるって感じ」
「へぇぇ、知らんかったわ。でもなんか、それって冒険家ギルドの本部って感じしねぇなぁ」
「あら、元々ギルドはそういうものだと習いましたよね?」
デイジーちゃんのジト目がツライ。
「え、わたしさんも知らない……」
「ニーナさんはいいんです。特殊な事情でギルドに加入した事は知ってますから」
「でもあんたは養成学校出てるんだもんねぇ?」
ニヤニヤと笑うサリーを目で威嚇する。
「まぁ、簡単に言うとあたしやギルドリーダー達は本部の社員で
あんたらはギルドの派遣社員ってとこね」
なんともわかりやすい嫌味な例えをありがとうよ。
デイジーちゃんに見えないようにサリーに向けて舌を出す。
「ん〜」話しを聞いていたウィルが首を傾げながら
「ボク達レベルだとぉ、よくてアルバイトじゃないかなぁ?」
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「そいや、あの子は元気?」
不意にサリーがニーナに話を振る。
「え?ああ、勿論。今わたしさんが喋れて動けるのも、全てあの子の、シルフィーのおかげだもの」
テリアは最後の力を振り絞り自らをニーナ人形の中に封印した。
永遠を生きる精霊は媒体であるものを失わない限り消滅しないらしい。
テリアの場合はブルティアの森がそれだ。あの森がある限りテリアは生き続ける。
ガロンさん達グリーンウォルフはテリアの為、結界の無くなった森が
荒らされないようずっと森を守り続けていくと話してくれた。
「これも何かの縁なのかしらね。わたしさんの一族とシルフィーの」
「なぁ、お前が体を取り戻したら、その毛玉の中のテリアはどうなるんだ?」
「魔力を吸収する人がいなくなれば、ブルティアで封印されてた時のように
魔力が徐々に溢れ出すでしょうね。その時新たに生まれてくるのか、このままなのか。
それはわからない。でも」
「きっと、その時はわたしさんが何が何でも封印を破ってみせるわ。
生まれてきたあの子が全てを忘れていても、わたしさんが覚えているもの」
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「よし、じゃあそろそろ行くわ」サリーは来た時と同じように
騒がしさをこの場に残して旅立っていった。
「定食、あがったよ〜!」
女将さんの威勢のいい声に自然とカウンターに足が向く。
「……あれ、そいやウィル」
「ん?なぁに?」
「出前に一緒に出たハゲは、どした?」
「……えっ」バッと後ろを振り向いたまま固まるウィル。
嫌な予感が全身を駆け巡る。と
「おお〜い、聞いてくれ!一大ニュース、大ニュースだぜ!」
店のドアを勢いよく開け放ちハゲが転がり込んでくる。その笑顔が眩しくてキモい。
「すんげぇぞ、依頼だ!それも超VIPな!貴族様からの依頼を受けてきたぜ!」
いかん。立ちくらみがしてきた。見ればウィルの姿がない。逃げやがったなあいつ!
手にした便箋を握りしめ振りかざすハゲ頭にフライパンのぶつかる小気味いい音が店内に響き渡った。
なんかずっとシリアスな展開になっちまって
全然更新する雰囲気じゃなかったアデルの一言ノートのお時間です!
ヒュヒュー!ドンドンドン、パフパフパフ!
あー、これであの毛玉との出会いの話は終わりだ。
これから更にハゲだったりウィルだったりやらかしてくれるもんだから
俺の平穏な日々はなかなか帰ってこねぇんだよ、はぁ。
そこらへんはまたおいおい話すとして、今日くらい思いっきり寝ていt
「え、そんなとこでなにしてるのアデルん」
お、ニーナか。いいだろう。この晴れやかな昼寝にお前も加えてy
「そんなとこでサボってると女将さんに言いつけますよ?」
……。なんでこう俺の回りの女性陣はこう、……ねぇ?
そうそう、この間なんかひっどかったんだぜ?あのデイジーちゃんがよ
「アデルさん……?」あ、うん。なんでもねぇ。じゃあまたな!




