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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
23/24

自己チューと狐?の冒険23



「ううう、うががっ!」

白目を剥き苦しみ出したテリアの周りの空気が歪んで見える。

「うわっなんだ、やたら空気が重いっ」

テリアの周囲の歪みは段々と広がりを見せる。

これまさか魔力か!?さっきのハゲのせいか!?

「うっ、こんな濃い魔力、体が持ちません」

膝をつき身体を折り曲げるデイジーちゃん。

「うっぷ、またっ」虹を量産するハゲ。



ガクガクと体を震わせ苦しむテリア。

まさかテリアの奴、魔力の制御が出来てねぇのか!?

このままじゃどうなるかわかったもんじゃねぇぞ!

重く鈍い体を走らせテリアの投げ捨てた抗魔鏡を拾う。

くそ、こいつじゃ駄目か。見るとくすんだ玉を横断する一筋の亀裂。ガロンさんが封印を解く時に割った跡だ。


「こうなったらとっておきの切り札、使わせてもらうぜ親父!」

懐からお袋のペンダントを取り出すとテリアに向かって突進する。が

いててて!どうなってんだ、魔力が厚い壁みたいになって弾き飛ばされちまう!前に全然進めねぇ!

「クソ、これじゃ切り札も何も」

「アデルさんっ!」急に掛けられた声に振り向くと膝を揺らして立ち上がるデイジーちゃんの姿が。

瞬きした瞬間、その姿が消え俺の傍で倒れ込む。


「なっ、無茶すんなって!」

「今が正念場、無茶をしなくて、どうするんです」

「で、でもよ!」デイジーちゃんは不敵にニヤリと笑うと

「たまの我儘くらい、いいじゃないですか。そのペンダント、どうすればいいんですか?」

こうなった時のデイジーちゃんは是が非でも引かない。

「ああ〜、もう!わかった、わかったよ!」


「このペンダントをどこでもいい、テリアの体につけてくれ」

「なんだ、勿体ぶって、簡単な事じゃないですか」

そうは言うが傍目にも満身創痍。

「では、その後は頼みますね」の言葉を残しテリアに向かって跳ぶデイジーちゃん。

魔力の膜のような壁に遮られ半分も距離を縮められない。

何度も弾き飛ばされながら次第に距離を縮めていく。

「〜〜〜!」何か叫び声のような声が聞こえたかと思うと今までと

比べ物にならないすげえ勢いで弾き飛ばされてくるデイジーちゃんを全身で受け止める。

「おい、大丈夫か!おい!」

体には無数の切り傷が刻まれ、おびただしい量の血が流れ出ている。

「……ミッション、コンプリート、です」

か細く弱々しい声で呟くとガクリと首を落とし気を失った。


「デイジーちゃん、しっかりしろ!」

早く手当しないと、デイジーちゃんが!

「アデルさん、俺達に任せてくだせぇ!」

聞き覚えのある声。ふと顔を上げるとグリーンウォルフ達に囲まれていた。

「早く、この人に薬草を!」一際大きなグリーンウォルフ、ラダ爺がそう叫ぶ。

「ラ、ラガー君、ラダ爺!?」

「話は後だ、その子はワシらに任せろ。ワシらが言えた義理はないが、アデル。

あの子を、ワシらのお嬢様を頼む」

深々と頭を垂れる老いたグリーンウォルフに俺は

「当然だろ、テリアには説教かまさねぇと腹の虫が治まらねーしな!」






「さぁて、ほんとに上手くいくんかね」

言葉ではそう言うも内心心配しちゃいない。

古臭いショートソードを構えテリアを見据える。首元にはお袋のネックレス。

「さぁさ、お立ち会い、ペンデールの研究者、ガイア・ノートの自信作、とくとご覧あれ!!」

叫ぶと同時にショートソードをテリアに向け柄の部分をぐりっと力を込めて回す。

くるくると回り始め中から青い水晶が露出しはじめた。

「あとは、俺の、体次第、だっ!」

柄が伸びきると水晶が激しい光を放ち始める。

同時にテリアに掛けられたペンダントからも同様の光が溢れ出した。

「うぉっ、こ、こいつぁ、しんどい!」

「ううう…………?……!!」

テリアを覆っていた空間の歪みが徐々に収まっていく。

そう、親父の自信作とは抗魔鏡のカラクリを利用した魔法剣だった。

本来の使い方的には親父の魔力をペンダントを通してお袋に渡すという物。

抗魔鏡の事を知っていたお袋は親父の負担を心配し、ついに一度も使わなかったそうだ。

テリアの魔力を剣が吸い取りつくせば、大人しくさせる事が出来る。

これが俺の切り札だった。が、

「さすが、にっ、供給が多すぎるっ!」

全身がミシミシと軋む。体が暑いのか寒いのかもわからない。

内から膨らみ続ける魔力に皮膚が切れ血が流れだしてくる。



あ、まずい。気が遠くなりかけてる

。見るとテリアはまだまだ元気な様子。やべぇ、作戦的には

間違いなかったけど人選的には大失敗じゃねーのこれ。

堪らずショートソードを地面に突き立て杖がわりに縋り付く。

このままじゃ吸い切れねぇ……。


ごそっ。ごそごそごそ。

なんだ、ポーチが? ……あっ!!

力を振り絞りポーチから取り出した物。

「ニーナ!」

俺の声に反応するようにショートソードにピトッとしがみ付くと

溢れ出す魔力を吸収していく。例えるなら乾いた雑巾。

目に見えてみるみる魔力を吸っていくニーナ人形。見てて気持ちいいくらいだ。


すると、ドサッと倒れる音が。

「テリア!」駆け寄るとテリアは気を失っているようだった。

「ふぅぅぅ……一時はどうなるかと思ったぜ」

「わたしさん〜〜、ふっかぁーつ!!」

剣にしがみついていたニーナが途端びょんびょん跳ね回る。

「アデルさん、こうして話すのは久しぶりですね!わたしさんですよ!」

はしゃぐニーナ人形をむんずと掴むと無言でポーチに押し込んでいく。

「ちょ、な、なにすんですか!泣きますよ!?」

「今お前が出てくるとややこしくなっだろ!ちょっと大人しくしてろ」

強引にねじ込んだ後、テリアを抱えラダ爺の元へ行こうと歩き出した、時だった。



爆発音と共に屋敷が吹っ飛ぶ。

「え?」もうもうと煙りを上げ半壊した屋敷から巨大な人影が姿を現した。

「な、んなっ!?」

それは屋敷程の大きさのゴーレム。

ゆっくりと体を起こすと地響きを立てながらこっちに向かってくる。

その手には、「ウィル!!」

しまった、まさか屋敷にゴーレムが残ってたなんて。

俺達がテリアを引き付けてる間にニーナの体を回収するもう一つの作戦失敗だ!

「精霊シルフィーとはいえ、その程度の魔力だったとはガッカリですね」

「ロンド、てめぇがなんでここに!」

ゴーレムの足元には溜息をつき嘆くロンドの姿。

ばかな、こいつサリアに戻ったんじゃなかったのか!

「こんなものではニーナ様を恒久的に維持する役目には程遠い、あなたは用無しですね。シルフィー」

なんだ、こいつ一体何言ってんだ?

「あ、あああ、ああああ!」

ポーチに押し込んだはずのニーナ人形がひょっこり顔を出し叫ぶ。

「あ、あれ、あのゴーレム、わ、わた、わたわた」

「お、おい落ち着け!あのゴーレムがなんだって!?」


「あのゴーレム、わたしさんの体を使って動いてる!!!」




******



「おや、そこにいる毛玉は……」

「ロンド、あんた、なんて事をっ!」

「やはりニーナ様の絞りカスでしたか。

いやはや、あなたのお爺様は有能な方でしたねぇ。

そこの期待外れとは違って。実に計画通りに動いて下さいました」

「し、絞りカス、だぁ!?」

「計画……ですって?まさか、わたしさんがこうするだろうと最初から!?」

「ええ。私のニーナ様に精神や意識などという美しくないものは必要ありませんからね。

見て下さい、この素晴らしい魔力、そして芸術的なまでのこの姿をっ!」

ロンドは高笑いしながらゴーレムに抱きつくとその足をベロベロと舐め始めた。きめぇ!


「今までの事、やっぱりお前が糸引いてたんだな」

「はい。勿論。全ては愛するニーナ様を永遠に美しく保つ為。

このゴーレムと一体化する事で肉体は滅ぶ事なく生き続けるのですよ!」

「い、意味がわからない、アデルさん、わたしさん意味がわからないんですけど!」

「落ち着け!と、とにかく、隙を見て……」

「ああ、動かないで下さい。殺しますよこの人」

グググとウィルを握りしめるゴーレム。

「ばっ、やめろ!」

「ぐ、駄目です、体に戻れない!ゴーレムに妨害魔術を掛けてるみたいで……っ!」

ニーナが鼻声で訴えてくる。どうする、どうすりゃあいい!?



「おいおい、誰か忘れてね?」

それは急にゴーレムから、ゴーレムの足元から発せられた。

「!? なんだお前は、いつの間に!」

「いつの間にっつーか、最初から?ずっとここにいましたけど何か?」

言うが早いかクラウドが正拳突きをゴーレムの足目掛けて繰り出した。


ゴツッ「固って!」

大袈裟に手をブラブラ揺らすクラウド。


「は?……ふ、ふふふっ、突然の事に少し焦りましたが、なんて事はない。

そんな人間ごときのパンチなぞ私のゴーレムには無力ですよ」

「すっげーな、これ。ゴーレムってのか。へー」

腕組みをして感心するように頷くスキンヘッド。

「ふん、意味のわからない男だ、貴様も潰されたくなかったら、……ん?」

「いやぁ、あるもんなんだなぁ」

焦りを見せるロンドと対照的に余裕の表情のハゲ。

「なんだ、なぜ動かない!?いや、これは、まるで」

「このゴーレムっての?こいつにも魔力のツボあるんだなぁ。な、そこのにーちゃん!」

途端崩壊していくゴーレムの足。ビキビキと音を立てながらヒビ割れていく。


「な、なぁ!?わ、私のっ私のニーナ様が!」

その手からこぼれたウィルをクラウドが抱きとめるとさっさと俺のとこへ駆け寄る。

「うわ、びびった。ゴーレムってツボついたらあんなんなんのな」

まるで悪びれた様子のないハゲ。

ウィルも気を失っているものの特に怪我もないようだ。


「アデルさん!今のうちに体を!」

ニーナ人形に促され走り出そうとした。

が、足が張り付いたように動かない。なんだこりゃ!?

「よくも、よくも美しい足に、こんな!代償は支払ってもらいますよ!」

怒り狂うロンドの手には、え、抗魔鏡!?

全身から力が吸い取られていく感覚。これが、モノホンの抗魔鏡の力か!

次々と倒れるグリーンウォルフ達。ハゲも膝をつき動けないでいる。

すると、みるみるうちに崩れたゴーレムの足が復元されていく。

「ははははっ、多少の足しにはなるようですね!残りの魔力も根こそぎ頂きましょうか!」

「ロンド、てめぇぇ…!」




「ロンド。これは一体どういう事ですの」

フラフラのテリアが俺の前に立つ。

「これが私が求めた究極のもの。ニーナ様こそが私の全て!ああ、永遠に美しい姿……

全てはこの為にあなたに近づいたんですよ」

ニヤニヤとゲスな笑い声を上げる。

「森を救う為なんて嘘だったのね……

その人の事も、協力してくれてる助手だって。嘘でしたのね……」

「あのガロンというウルフマンといい、あなたといい簡単に騙されて頂いていいコマでしたよ。

ただまぁ。計画の根幹となるはずのあなたの魔力には失望しましたが」

言うが早いかテリアに向けゴーレムが腕を振り下ろす。

「ボサッとしてんな、テリア!」

打ちのめされたように項垂れるテリアを抱え投げ飛ばす。

「っ、てぇ!」

雷が落ちたかってくらいの電撃が走る。

ゴーレムの拳が俺の足に直撃していた。

うわ、これ折れてんじゃねーの!?変な方向向いてんだけど!?

「アデル!」ぶん投げたテリアは無事のようで転がるように走ってくる。

「ふむ。魔力は粗方吸い出したようですね、では用済みの皆様、さようなら」

ロンドが指を鳴らすと巨大なゴーレムの顔が裂け中から光が溢れ出した。


テリアを抱き締め庇うように腹の下に隠す「ニーナ、ニーナ!俺が壁になってる間に

前にやった地面に潜るやつでお前とテリアだけでも逃げろ!」

「それには、じ、時間がっ!それに、皆は!?」狼狽た様子で俺を見る。

と、俺の腕をすり抜けてゴーレムに近づいていくテリア。

「馬鹿っ!テリア、戻ってk」

「アデル」

ポツリと呟くと振り返り俺の顔を覗く。



「わたくし、やっぱり人間なんて大嫌いですわ」

そう言うと空間を歪ませる程の魔力を放出し始めた。

「ほう?まだ魔力が残っていましたか。いいでしょう、ついでに全て頂いていきましょう」

ロンドが抗魔鏡をテリアに向ける。

「テリア!」反応しない。まさかこいつ!

「おい、やめろ!ただでさえ俺に魔力吸われてんだぞ、おい!テリアッ!」

ゴーレムの顔はなおも裂け森は光で満ちていく。

呼応するかのように更に濃い魔力を放出するテリア。

「馬鹿な。こ、これ程まで!?……こ、これは、いかん!」

急にロンドが焦り出す。見ればゴーレムの体はパンパンに膨らんできている。

「ど、どうなってんだ、ありゃあ!?」

「吸収した魔力の変換が追いついていないんだわ、さっきのアデルさん状態です」

ゴーレムは膨らみ続け膨張しきった体のあちこちから光が漏れ始める。

「なぜだ、なぜ止まらない!やめろ!やめろぉぉぉ!」


ゴーレムが一際眩しい光を発しロンドの叫び声が森に響いたかと思うと

一瞬で光は消えテリアの周囲の空間の歪みもはたと消え去った。

「た、助かった……」その場にへたり込むロンド。

「騙した、許さない」

突如聞こえた女の声にビクっと体を震わせる。

テリアの首元に剣を突きつけている赤いローブの女。

「お前は、ネフィティリ!」

こいつ、テリアの時間を止めたってのか!

「た、助かりましたよネフィティリ」

「なぜ、偽物の抗魔鏡を渡した」

偽物?あの時渡していたものは複製品だったってのか!?だからこいつ、抗魔鏡を持っていたのか。

「バレては、しょうがありませんね。なんならここであなたも一緒に」

「馬鹿なロンド。この事はもう、皇帝陛下に知られている。お前に逃げ場はない」

その言葉に目を見開きわなわなと体を震わせる。

「だが、お前の研究は、評価されてる。帰って今回の件について、釈明するんだな」

力無く頷くとロンドはゴーレムの肩に飛び乗る。続いてネフィティリもゴーレムに飛び移ると

巨大なゴーレムは地面に溶けるように2人を連れ消えていった。




******




「駄目、魔力が漏れるのが止まらない!」

ロンドとネフィティリがいなくなった後、テリアの時間は進み出した。

脅威が去った事に安堵し倒れ込むテリア。だがその体からは絶えず魔力が漏れ続けていた。

「テリアちゃん!しっかりしてぇテリアちゃん!」

ウィルに揺さぶられ薄く目を開ける。

「ウィル、無事で、なによりですわ」

「お嬢!俺達の魔力を吸ってくだせぇ!」

ラガー君の悲痛な声に首を横に振る。


「薄々気づいてましたわ。自分の事に。森に溢れる魔力は

わたくしが放っていたもの、だと。だからこそ、なんとかしたかった。

こんなわたくしに優しくしてくれる皆を守りたかった」

「あ、ああっ、なくなっちゃうよ!アデルさん!この子から魔力がっ!」

「結局空回りで、なんの役にも立たなかったわ」

「お嬢……」

「ラダ爺、ガロンに謝っておいてね

あなたの期待に、答えられない駄目なシルフィーでごめんなさい」

「テリア、ガロンさんはそんなん思ってねぇよ。

そりゃ最初は考えと違ったって思ったらしいが。お前と暮らしてお前と生きたいって

そう思うようになったんだって言ってたぜ」

「お嬢、俺達だってそうッス!今更お嬢のいない生活なんて考えられないッスよ!」

驚いた表情からゆっくりと笑顔を見せる。

「ありがとう、ラガー。アデル。最後の最後くらい、皆に自慢出来るように

カッコよく、いきたいわね」

そう言うとテリアはニーナ人形に覆い被さった。

「ひゃ!?」

「あなたの事、知ってたのに、ロンドの口車に乗せられ、見て見ぬ振りだった。

まさかあんな事になるなんて。ごめんなさい」

テリアの周りがぼんやり光っていく。

「せめてもの償いに、受け取ってほしいですわ」

段々光が強くなっていき、ニーナ人形とテリアを包みこみ姿が見えなくなっていく。






光が収まり、辺りの景色が戻ってくるとそこにはテリアの姿はなかった。


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