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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
21/24

自己チューと狐?の冒険21



「アデルさ~ん!」

朝になり外の井戸で顔を洗っているとコルトアが村の工房から顔を出し俺を呼んでいた。

「今から最後の組が移動始まります。

その後に例の狼達も移動になる予定です。その間の短い時間になりますけど」

「おお、サンキュ。悪いな、なんかこんな事頼んじまって」

「いいえいいえ、それにこれはドレイクさんからの指示でもありますんで」

「え? ドレイクさん?」訝しむ俺にコルトアがしまったって顔をする。


「と、とにかく時間が無いんで。こっちです」

そそくさと工房の中に引っ込むコルトア。ドレイクさんが、ねぇ?

工房の中は臨時の捕虜収容の為の部屋になっていた。といってもただ単に

一番頑丈そうな建物だったってだけで、とりわけ俺とサリーが訪ねた時と

代り映えしてるなんて事はなかった。一番奥、鍛治の窯がある部屋にガロンさん達はいた。

「なんとか捕らえる事が出来たのはこの5匹だけなんです。

この中にアデルさんの目当てのウルフマンがいればいいんですけど」

俺とコルトアの声に耳を大きく揺らすとゆっくりと顔を上げる。

「一応、緊急用って事でいつもは荒くれ者に使う護送用の枷をしてますけど

モンスター用ってわけじゃないんで……気をつけてくださいね」

「おう、了解。じゃすまねぇけど少し邪魔するぜ」



 どすんと腰を下ろす。その様子をただじっとみつめるガロンさん達。

「これから、俺達ブルティアに戻る。テリアの所へ行くために」

ガロンさんは俺の目を見つめたまま口を開こうとしない。

「この後ガロンさん達もペンデールに行くんだよな。

でも心配しなくても大丈夫だ、そこには俺の親父もいる。

いっつも眉間に皺よせて怒ってるような顔しててとっつきにくいが頼りになるんだこれが」

俺達が村に来る時に使った獣道じゃ馬車どころか馬すら通るには危険だ。

大きく回り込む形で坑道付近から時間を掛けて馬車を送っているみたいで

往復の時間がかなり掛かってる。

ゴブリンの集落っつっても結構な人数が居たからなぁ。なんて考えてると

「ほんとお人好しだな、俺は敵だろうに。なんでそんな話を?」

「敵? 俺は未だにガロンさん達を敵だなんて思った事ないぜ」

「あのな。あの時俺はお前の命を狙ったんだぞ、邪魔が入らなければ今頃」

「まぁ確かに。でもそん時はそん時で仕方のない事だろ。

お互い事情があっての事だってのは分かってんだしさ」



 ふぅと息を吐く。

「全く、肝が据わってるというか、なんていうか。冒険家ってのは皆こうなのか?」

「いやあ……アデルさんはなんというか、独特というかアホな所があr」

ガロンさんの呟きに返すコルトア。俺の顔を見てすぐさまそっぽを向く。

「独特、か。なんとなくわかるような気もするな」

豪快に笑うガロンさん。

「それで、こんなとこまで押しかけてきた理由は?なにか聞きたい事あるんだろ?」

「ガロンさん達がロンドに協力した理由が知りたい。

今回ロンドを助けたのはテリアからの命令があったからなのか?」

「いいや……お嬢は関係ない。なぁ覚えてるか。俺が若い頃、森の歴史を調べたって話を」

「ああ、覚えてるよ。随分調べたけど何も分からなかったって」


「あん時のあれは、よそ者に対する方便ってやつだ。お前はもう分かってるとは思うが」

次の言葉を言い澱む。そんなガロンさんを心配そうに眺めるグリーンウォルフ達。

「昔、お嬢が暴走して人間達どころか森に住む仲間にまで手を出しちまう事が起きた。

ご先祖達は1人の人間の説得によってある覚悟を決めたんだ」

1人の人間……?それってまさか?

「お嬢を、シルフィー様を封印したのは他でもない。俺達グリーンウォルフだったんだ。

そしてその封印を解いたのは他でもない俺ってわけさ」




******




「アデルさん、もうすぐ着きますよ」

デイジーちゃんに声を掛けられ我に返る。

ブルティアに近づくにつれ速度を落とし始めるデイジーちゃんの愛馬。

俺はといえば集落を出てからずっとガロンさんとの会話を思い返していた。



 封印の魔術師ニックスは激闘の末、シルフィーを倒した。

その後封印を施したのは、テリアを怖れた当時のグリーンウォルフ達とニックスの一族。

この事実に相当ショックを受けたガロンさんはシルフィーに対して罪の意識を持つようになる。

そしていつの頃からかガロンさんはシルフィーを封印している祠に

手を掛ける事を考えるようになっていた。

それは更なる森の繁栄の為、失った主を助け出したいが一身で。

だが封印を解かれたシルフィーには、当時の記憶がサッパリなくなっていた。

赤子とも似つかぬその状態は封印の影響か、或いは過ぎ去った年月のせいか。


 テリアは森のグリーンウォルフ達に受け入れられ大事に育てられていく。

やがてテリアの魔力は回復していき日に日に増大し徐々にではあるが森を蝕んでいくようになった。

繁栄を望んだはずのガロンさんは焦った。豊かになるどころか

森は濃過ぎる魔力にあてられ痩せ細っていく。仲間にも不調を訴え始める者も現れはじめた。

このままじゃだめだ、とその事についてラダに相談を持ちかけた。

テリアの事、森の様子、膨らみ続ける魔力に押され結界が張り詰めてきている事。

だが解決策は出てこなかった。こうして為す術なく時間だけが過ぎていった。



 それはある日突然起きた。テリアが森に人間を連れてきたのだ。

ついに結界がほころんでくてしまったのか。初めての侵入者に

警戒するガロンさんに彼はこう告げたという。

「私は、封印の魔術師の子孫である。いい話がある」と。




「……アデルさん?」

気付けば馬を止め、顔を覗き込むデイジーちゃんと目が合った。

「あ、ああ。すぐに皆と合流しねぇとな」

「何かありましたか? さっきからずっとそんな感じですが」


「なんでもねぇよ。そんな事より体は大丈夫なのか? 急性なんちゃらって奴なんだろ?」

「急性魔力欠乏症、ですね。大丈夫です。すぐに休ませてもらったおかげで」

ギルドの医務員が言うには、魔力の瞬間的な消耗が頻繁に続いた時になるもんらしい。

「私が魔力が元々多い方ではない事と瞬間の魔力消費が激しいのが問題で……。

こればかりはもうどうしようもないんですよ」


 デイジーちゃんの魔法とは体の一部に働きかけるもので主に身体強化タイプ。

圧倒的な瞬発力だとか一瞬だけだがマッチョな冒険家に負けない程の腕力が出せる。

そんな魔法らしい。でも体の負担を考えれば使って1日に2回までだ、と医務員が呆れていた。

デイジーちゃんは口にしないがロンド達と対峙していた時に相当使ってるはずだ。

「なぁデイジーちゃん、やっぱ後は俺達に任せt」

「駄目です。言ったはずですよ、ギルドリーダーとして最後までは、っと」

ゆっくり移動し始めたその時近くの繁みから飛び出す黒い影が。

「!? どうどう! ってウィルさん?」

デイジーちゃんが愛馬を止める。「うわわわあああ」

なんとも情けない声でへたり込んだのは確かにウィルだった。

「ウィル!? なんでこんなとこに」

「アデルゥゥゥゥ、デイジーちゃああん」うん。この涙鼻水まみれは間違いねぇ。


「大変だよぉ!ブルティアが、ブルティアがあああ」

取り乱すウィルが落ち着くまで背中を撫でてやるデイジーちゃん。

「ボク、少しでも役に立ちたくて、ずっと森の様子を調べてたんだけど」

ゴツッとウィルの頭に強めのチョップをくらわす。

「いたっ!」

「危険なのはわかってっだろ!なんで一人でそんな事したんだ」

「まぁまぁ。アデルさんも似たような事したわけですし。

これでお互いの気持ちを確認出来たでしょう? くれぐれも一人で行動しない。

周りは心配なんですからね?」

まさかのタブル説教に発展したが、こればっかりはぐうの音もでない。

いまいち要領を得ないウィルの説明に俺達は全くなんのこっちゃ状態。

このままここでこうしてても埒があかねぇってんで移動を開始したんだが。


「なんでしょう、……やけに静かですね」

大半の人間がもうペンデールに移動した……からか?

「正面は避けてゆっくり、近づいてみましょう」




「ギ、ギルドが……!」

ブルティアに着いた俺達が目にしたのは焼け崩れたギルドの姿。

他にも被害が出ているようで市場の一部が焼け出され煙が上がっていた。

「そんな、あそこには動けない人がたくさん……!」

「落ち着け、デイジーちゃん。とにかく状況を確認しよう」

「な、なんでそんなに落ち着いてるのぉ」

泣きそうなウィル。頭を軽く叩くと以前呆然とへたり込むデイジーちゃんを抱え、その場を離れた。



 町中に行き交う人はなく変わりにいるのは鎧の一団。

「ギルドが使えない今、おそらくアシカ亭に人が集まってるはずだ」

人目を避けたどり着いたアシカ亭前はバリケードが張られ、親父さんが仁王立ちで睨みを効かせていた。


「入り口、見張りがいますね、裏口から入りましょう」

その様子を見たデイジーちゃんがいつもの調子を取り戻す。

促されて見てみるとアシカ亭の様子を伺うように数人の鎧姿が。


 物陰を上手く利用しつつ裏口へ。

デイジーちゃんが鍵を取り出し音が出ないよう慎重にドアを開ける。

「ウィルさんお先に。アデルさんも急いで中へ」

追ってデイジーちゃんも素早く中へ入り鍵を閉める。と

「あああ、リーダー! わだじ、うわああ」

ぱっつん頭の女の子が顔をくしゃくしゃにしてデイジーちゃんに特攻してきた。

「シャンさん無事で良かったです」

その声を聞いてぞろぞろと集まってくるアシカ亭の従業員達。

声をひそめながらも皆嬉しそうに話しかけてくる。

「おう、二人とも無事だね。安心したよ」

屈強な従業員達をかき分け現れたのは女将さんだった。


「女将さん、これは一体」

「ペンデールからの馬車が到着したくらいだったか。急にあの兵隊達が襲ってきたのさ」

「じゃあ、病人達は!?」

「安心しな、そこはちゃんと送ったよ。あの人が随分体張ってくれてね」


「おう、お前達無事か!ウィルさんも、あいつらに捕まったかと心配したぜ」

二階からの声に顔を上げると包帯を巻いた痛々しいスライの姿。

「スライ!その格好、大丈夫なのか!?」

「ちぃと無理したな、流石にあの数はきつかったぜ!」カッカッと笑う姿に惚れそうになった。

「他にもすでにジルタンと周辺の町や村は完全に支配下に置かれたみたいです」

鼻をずずっとすするとシャンちゃんがデイジーちゃんに一通の手紙を差し出した。

「今朝ギルドに届いたギルドリーダー宛の魔便箋です。宛名は……」

「サリア……皇帝国!?」



******



「でもなんでサリアはこんな強硬策を? ジルタンだってパンパーバだって

昔っからそれなりの対応はしていたはずだろ?」

「ギルド、ですね。大きい町にしろ小さい町にしろ、狙われてるのはギルドのある町のようです」

手紙を読み進めるデイジーちゃんの顔は一層険しくなるばかり。

「ここには、速やかにギルドを閉鎖し投降するよう書いてあります。

なんでもこの行為に侵略性はなく、自国の防衛とより一層の繁栄の為のものだそうですよ」

フン、と鼻で笑う。ものっすごいトゲトゲしく言うデイジーちゃん。


「ううう。私達一体どうなってしまうんでしょう……」

「どちらにしても時間がないですね。このままではギルド本部が介入するまでに私達が持ちません」

「でも会談の要求って蹴られてるんじゃなかったか?」

「よくご存知ですね。ただ今回は話が違います。国内の話とはいえ、これはれっきとした侵略行為です。

恐らくですがギルド本部からの要請でカルデナールが重い腰を上げるでしょう」


 カルデナール城塞連国といやぁ、世界最大の国家都市。

ペンデールが最も交易を行ってる相手だ。確かにこのままギルドを巻き込んで内戦状態に

発展していったら物流が滞ってカルデナールの損益にまで話が及んでくる事になる。

「さすがのサリアも現状カルデナールからの会談要請を断る事はしないでしょう。

ギルド本部はそこに話し合いの場を設けるはずです」

「じゃあ、それまでにあいつらをなんとかしながら、シルフィーもなんとかせにゃならんって事か」

「そうだ、それだ。どうだったんだ抗魔鏡は?」

スライの言葉にどんよりとしたオーラを纏う。

「ま、まじか……」

「しかも最悪な事にロンドに奪われちまった」

まるで葬式状態。と、ここでニヤリと不敵に笑う俺。

「だが、なんとかなる。俺の切り札にまかせろ!」

「き、切り札!?アデルいつの間にぃ!?」



  にわかに外が騒がしくなってきた。なんか団体が到着したような騒音。

「これは……噂をすれば、ですかね」

窓の外をそろそろと覗くとさらに増えた鎧集団。

二人でまじまじと様子を見ているとグイっと裾を引っ張られた。

「アデル兄さん、兄さんの切り札、信じていいんだよな?」

大きく頷くと、にんまりと笑う。

「オッケーだ。ここは俺に任せて兄さん達はシルフィーを頼んだぜ!」

「おいおい、身体大丈夫じゃねぇだろ!」

「おいおい、そっちこそ俺を誰だと思ってるんだ?サリアギルドでナンバー4の実力者だぜ?」


「森へ入りましょう! 後の事は頼みます、スライさんシャンさん」

ブンブンと大きく首を振ると「任せて下さいっ 町の皆さんは必ず守りますからっ!」


 階段を出来るだけゆっくりと音を立てないように降りる。

「この状況、何か解決策があんのかい?」そんな俺達に女将さんが声を掛けてきた。

三人してにやりと笑う。

正直ウィルは俺の真似をしただけだろうが。

「よっし、わかった。行ってきな!」

バッシバッシと背中を強打してくる女将さんに見送られ俺達は

裏口からこっそりと外へ出ると森に向けて真っ直ぐ走り出した。



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