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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
20/24

自己チューと狐?の冒険20


 木々を掻き分け走る。走る。

今はただ、モグとデイジーちゃんの事だけ考えて。


「アデル、あそこ!」

火花の散る音が。サリーの指さす先に争う人影が見えた。

コッコが居た坑道の入口に程近い開けた場所にデイジーちゃん達はいた。

ゴーレムを相手に鞭のようにしなる細身の剣で捌きつつ

隙を見てドレイクさんの偽物に一太刀を浴びせる。


 が、ひらりと躱され代わりにゴーレムの腕から延びる

何本もの黒い鎖がデイジーちゃんに襲い掛かった。が。

「せいっ!」

鎖がデイジーちゃんへ届く事はなく、サリーの振り下ろした

ロングソードによって思いっきし地面にめり込んだ。なんつう馬鹿力。

「デイジーちゃん、無事か!」

駆け寄るとこくりと小さく頷く。額には汗が吹き出し肩で息をする姿は

今までの戦闘の激しさを物語っている。こんなに疲弊したデイジーちゃんの姿を初めて見る。

「おやおや、援軍ですか。全く使えませんね、あの狼共は……」

ドレイクさんの顔をしたそいつはゲスな笑い声を上げてガロンさん達を罵る。

「おや?よくよく見てみればアデル・ノートではありませんか。

はて……、あなたは確かペンデールへ向かったはずでは?」

「てめぇがドレイクさんの偽物だってのはもうばれてんだよ。

無駄な演技なんてしてねぇで正体を現せ、クソ野郎!」

偽物の足を目がけてショートソードで切り付ける。

「おっと、それは失礼。時間稼ぎとしては少し足りませんでしたか」

ボン、と音がしたかと思うと派手な煙が上がる。

偽物はものすげえジャンプ力でゴーレムの背後へと着地した。


「モグは!? ゴブリンの子供はどこ!?」

サリーが問いかけるも偽物は笑うだけで答えない。

代わりにデイジーちゃんが指を指した先は。

「えっ まさか、ゴーレムの中か!?」

ウィルから聞いていた人を飲み込んだって話が頭をよぎる。

「おいおい冗談じゃねぇ。返してもらうぜ、大切な友達だからよ!」

そう言ってゴーレムに切りかかろうとした、その時。

パンと手を叩く音に続いて「いいでしょう。お返ししましょう。

もう充分な解析結果は得られましたし、これ以上は不要ですからね」

「は? 解析?」唖然とする俺に向かって向けた偽物の顔は

干からびた土のようにヒビだらけ。髪はボロボロと抜け落ち

皮膚はパリパリと音を立てて剥がれ落ち始めた。


「ふう、皆様。改めましてごきげんよう」

なんと剥がれた顔の下には別人の顔。どういう理屈かわかんねぇが

ドレイクさんの顔をマスクみたいに真似て被っていたって事か。

「あなたはロンド……! なぜあなたがここにっ!」

「それはこちらとて同じ事ですよ。なぜあなたがここに?」

ロンド、ロンドって言ったか? じゃあこいつがニーナの!

「王室からのお目付け役であるはずのあなたがなんでこんな事を?

ニーナはどこ? この事態をあの子も知ってるのかしら?」

「えぇ、勿論ですよ。ニーナ様は勿論ご存じですとも……

それに今、ニーナ様は世界一安全な場所で私の帰りをお待ちされてます」

にやりと笑うその姿に背筋が寒くなる。サリーに目をやると

わかってる、とでも言うように小さく頷いた。

俺が市長室で話した事がここで役に立つとは。


「つまりそれって、二人してサリアを裏切ってるって事になるわよね?」

「裏切る? まさか…… 

それはあなた方ではないですか? ギルド本部諜報部のサリーさん?」

鋭い目つきでサリーを睨みつける。

「なっ……それをどこで」

「もうわかったでしょう。どちらが裏切り者なのかが。まぁそれはそうとして」

不意にパチン、と偽物が指を鳴らすとゴーレムの動きがピタリと止まった。

「私は約束は守る質でして。望み通り解放して差し上げましょう。

ああ、でも念のため。あなた達はそこから動かないで下さいね。

……じゃないと殺しますよ? このゴブリン」

俺達にそう釘を刺すとゴーレムの背中に腕をめり込ませていく。

次第にゴーレムの腹の部分がぐにゃぐにゃと蠢き始めると

くるみみてぇにバックリ割れて中からモグがずるりと投げ出された。



 すかさずモグの所へ駆け寄る。

随分ぐったりした様子だが見た所目立ったケガもない。

それを見たサリーがゴーレムの鎖を抑えつけていた剣を更に押し込み

離すと一気にロンドに距離を詰める。マントで隠れた背中から小ぶりな剣を抜き放って。


「だと思いましたよ」

不敵な笑みを浮かべたままのロンドはゴーレムから腕を抜くことなく

何かブツブツと呟くと、ロンドをかばう様に動き出すゴーレム。

「そうですか、だと思いましたよ」

ぼそりとデイジーちゃんの声が聞こえた。

振り返ると屈伸するみてぇに屈んでる。と思ったら次の瞬間には居なかった。

「へ!?」その間、多分1秒とか。とてもじゃないが

2・3歩でいける距離じゃないゴーレムの足元にすでにデイジーちゃんはいた。

「くっ、まだ魔力を残していたと言うのか! 疾風のデイジー!」

ロンドの焦る声。デイジーちゃんがゴーレムの足元をくぐり抜けたかと思うと

すぱっと切断面が現れた。急に支えを失ったゴーレムは前のめりに倒れk



「うおおおおお!」

って俺に向かって倒れてきてんじゃねぇか!モグを抱え込み必死に転がる。

地鳴りと共に激しい風で辺り一面を覆う砂埃。

「アデル! アデル無事!?」サリーの声に顔を上げると

モグをかばう俺を更にかばうかのようにマントを広げて俺の前に立っていた。

目の前の水着のような恰好に一言物申してやりたいが、今はそんな場合じゃない。

「俺もモグも大丈夫だ! ロンドは!?」

そこには喉元に剣を突き立てられた状態のロンドが。

「いやはや、まさかあれだけ消耗してまだ魔力を残してあるとは驚きですねぇ」

言葉とは裏腹にその顔は怒りで歪んでいた。ギリギリと歯ぎしりが聞こえてきそうだ。

「切り札を、残す、のは当然でしょう……」

言うデイジーちゃんの息は荒い。相当無理をしてるみてぇだ。

「そうですよねぇ。切り札はとっておかないと」一転、にやつくロンド。




「状況は?」

どこからともなく聞こえた声。勿論俺でもなければサリーでも、モグでもない。

声の主はいつからそこに居たのかロンドの後ろに佇んでいた。

赤いフードとマントを纏い素顔は見えない、声で女だと分かるのみ。

すっと手がロンドの喉元に突き付けた細身の剣に向けられると

ゆっくりとデイジーちゃんの手から離れ地面に落ちていった。

「デイジーちゃん!?」

「危ない所でした、助かりましたよ」

「状況は?」

どうしたんだ、デイジーちゃんが固まってしまったかのように動かない。

「ま、まさか……ネフィティリ、なの?」

サリーが口をわなわなと震わせながら赤マントに向かって言う。



 ネフィティリと呼ばれた赤マントの女はこっちを凝視したかと思うと

おもむろにフードを脱ぎうねる金髪を鬱陶しそうにかき上げ俺達に顔を向けた。

「サリー」

「やっぱり! まさかドロッセル達もこんな事を!?」

なんだ、話が見えねぇけど。二人は知り合いみたいだな。

て事はこいつはサリア関連の人間ってことか。また面倒な奴が出てきたな。

金色の腰まで届く長い髪。長い睫毛、真っ赤な瞳。

さっきから微動だにしない様子はほんとに生きてるのかと

思わせる程の無機質さを醸し出してる。人形って言われても信じられるレベル。

「おい、お前デイジーちゃんに何したんだ!」

「あの子の魔術よ。色んな物の時間を少しだけ止めてしまうっていう」

「時間をとめ……時間を止めるゥ!?」


「サリー、なんで邪魔をするの? あなたはアイドルナイト、でしょ」

抑揚のない声で語りかけてくるネフィティリ。「あたしは……」

「全く、サリアから認められた誇り高いアイドルナイトから裏切り者が

出てしまうだなんて。いっその事今ここで処理しましょうか。事故死として」

ロンドがデイジーちゃんの剣を拾い上げサリーに向けた。

が、動かない。さっきのデイジーちゃんと同じように剣を取り落とす。

さっきまでの息づかいが嘘のようにロンドも石像みたいに止まっちまった。

見るとネフィティリがロンドに手を向けてる。「人の話に割って入るやつ、きらい」


「でも、ロンドの言う事も一理。王室から選ばれた誉ある5人。

それが私達アイドルナイト、でしょう? サリー」

「それはそれよ。今のサリアはおかしいと思わないのネフィティリ。

このまま進めば、いずれ他の国と衝突する事は避けられないのよ」

「分からない。それを考えるのは、ネフィティリじゃない」

ロンドにかざした手を離すと途端に動き出すロンド。

「さぁ一思いに……おや? 剣が?」

「そんな事してる時間、ない。状況は?」

「まぁ、そうでしたね。上々ですよ。間違いなく抗魔鏡でした。

ただ機能が破損していてこのままでは使えませんがね」

そう言いながら崩れたゴーレムから袋を取り出す。

「いい、使えるかどうか決めるのは、ネフィティリじゃない」

ロンドから袋を受け取るとデイジーちゃんに向けた手を下ろす。


「っ!?」急に動き出したデイジーちゃん。

目の前に現れたネフィティリの姿に驚いたのかデイジーちゃんが飛びずさる。

「なっ、一体どこから!?」

「今日の所はこれで帰る。サリー、待ってるから」

それだけ言うとネフィティリとロンドは闇の中に消えていった。

「待ちなさい!」追いかけようとするサリーを止める。

「駄目だ、お前一人追いかけても2対1じゃ分が悪すぎる」

「だって、抗魔鏡がっ……じゃああんたも一緒に!」

「落ち着け。俺が一緒に行ったとしても俺の実力じゃ

あんな得たいの知れないのが相手ならお前の足を引っ張るだけだ」

俺達が言い合っているとドサッと音がした。

「デ、デイジーちゃん!」

崩れ落ち倒れ込むデイジーちゃん。

モグも息はしてるものの苦しそうに顔は歪み憔悴しきっている。

「このままここにいちゃ二人とも良くならねぇ。村まで戻ろう、いいな? サリー」

俺の問いかけに無言で頷く。

ちらりとロンド達が消えた方向を見た後二人を抱え来た道を戻っていった。




******



「モグ! ああ、無事でよかった!」

集落に戻ると涙で顔がくしゃくしゃのナタリアさんに出迎えられた。

「アデルさん、サリーさん。それにその小さい子も……

なんてお礼を言ったらいいのか、ありがとう」

モグの親父さんのウェイトさんには頭を下げられっぱなし。

「ケガ人は応急処置を受けた後、速やかにペンデールへ避難して下さい」

村の中央でテキパキと指示を出すドレイクさんの元へ。

「戻りましたか。ともかく無事でなによりです、二人共」

状況の報告はサリーにまかせ俺はデイジーちゃんを

休ませる為にモグの家に向かう。



 家に入るとあのハーブの匂いが出迎えてくれた。

「さぁそっちの子も奥のベッドに」ナタリアさんに言われ移動しようとした時

「わ、わたしならもう大丈夫です」背後から声がしたかと思うと

背中におぶられているデイジーちゃんがもぞもぞと降りようとする。

「駄目だ、駄目だ。あんな倒れ方した奴を、はいそうですかって離せるか」

必死に降りようとするデイジーちゃんを押さえつける為思いっきし力を入れた。


「んぉおおおお!?」今までに聞いた事のない声を発するデイジーちゃん。

なんだなんだ?と振り向こうとした。そこにまさかのグーパン!


「お、おおおお!」

その後も暴れまくるデイジーちゃん。さすがにこりゃ無理だと降ろす事にした。

「いってて、なんなんだよ一体……」

「なっなんでもないです! というか、分かってなかったんですか!」

怒ったり呆れたり、くるくる顔を変える。まぁこれだけ元気なら大丈夫、か?

「何やってんだいあんた達……」

モグを寝かしつけていたナタリアさんから冷たい視線を浴びせられたのは言うまでもない。



 ナタリアさんとウェイトさんにデイジーちゃんを任せて

俺はガロンさん達の事をドレイクさんから聞くために広場へ出てきていた。

「アデル!」声を掛けられた方を見るとサリーとドレイクさんの姿が。

「あたし、このまま本部に戻る事になったわ。今回の事、報告する為にね。

あんたはブルティアに戻るんでしょ? あの子達、ネフィティリ達まで

動いてるとなるとギルド単位でさえどうにかできる問題じゃないわ。

……って言っても、行くんでしょうけど。危険だと思ったら逃げるのよ?」

「任せろ、逃げるのは得意だ」俺の返事を聞くと

苦笑いを浮かべ軽く手を振りながら「じゃあモグによろしくね!」と行ってしまった。


「あなたが聞きたい事はあのウルフマン達の事、でしょう?」

サリーを見送った後、ドレイクさんが声を掛けてきた。

「はい。ガロンさん達は、どうなったんですか」

「あの黒色の体毛のリーダー格、ですね。

彼なら他のウルフマン達を逃がす為に最後まで我々に抵抗してました」

「じゃあ……」

俯く俺にゴホン、と大きな咳払いをするドレイクさん。

「勘違いしないで頂きたいのですが、彼らは全員、捕虜として捕えました」

そうか、やっぱりもう……ん?ガロンさん生きてる!?

「本来砂漠に多くいるはずのウルフマンが森に居たというのは非常に貴重ですからね。

研究塔にてこの度の騒動への尋問と同時に研究が行われているでしょう」

「け、研究塔……か、解剖とか、したり、しませんよね?」

「捕虜だと言ってるでしょう。殺してしまっては無意味です。全く」

と言葉を区切り背中を向ける。

「あなたが今置かれている現状は市長とサリーさんからの話で

おおよそ理解しているつもりです。正直、この問題に個人が

これ以上首を突っ込むのは無謀だと思いますよ」

「俺もそう思います。でもまだ仲間が捕まってるんです」

はぁ、と大きなため息。「この村のゴブリンについては、ペンデールギルドが

責任を持って守りましょう。あなたは精々無駄死にしないように頑張って下さい」

そう言い放つとドレイクさんはギルドメンバーを集めて指示を出し始めた。




 言葉はひでぇがドレイクさんなりの気遣い……だと思っておこう。

ブルティアに残してきたウィル達は大丈夫だろうか。

すぐにでも帰りたいのはやまやまだがデイジーちゃんのあの消耗具合は心配だしな。

背に腹はかえられねぇ。このまま朝までゆっくり体を休ませてもらおう。

首を回すとゴリゴリと音がする。とりあえず、熱い風呂に入りてぇなぁ。





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