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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
19/24

自己チューと狐?の冒険19



 陽はもう沈みきってしまい、辺りは暗闇が広がるばかり。


「デイジーちゃん、コルトア!どこだ!」

家々に明かりはなく村は静けさと暗闇に支配されていた。

なんだ、なんで誰もいないんだ。

あれだけの大所帯、皆はどこ行ったんだ!?


「アデル、これ見て」

サリーが指さす先には泥の塊が山になっていた。ん? こんなんあったっけ?

「ペンデールを襲ったゴーレムは土で出来てたらしいけど、これって」

「まさかゴーレムか!?じゃあやっぱr ……ん?おいサリー、なんか音がしないか?」

どっか遠くから金属音が鳴ってるような?


「おーい、あんたら!」

不意に掛けられた声に顔を向けると家々の間の暗がりから

モグのお袋、ナタリアさんが顔を覗かせていた。

「ナタリアさん! 他の皆も無事ですか!」

「ああ、わたしらはなんとかね。でもモグが連れて行かれちまってて……!」

「ナタリアさん、村はどうなったんですか?他の人達は一体どこに?」

「唐突に人間達とそのリーダーが仲間割れをしだしてね。

騒ぎで混乱してるとこにモンスターまで出てきちまってさ。

モグを連れてあっという間に坑道の方に逃げていったんだ。

それで村の若い衆も人間達もその後を追いかけていって」

「それで皆いなくなったって事か。俺達もすぐ追いかけよう」

「そうだ、これを持っておいき」

そう言って取り出したのは小さな箱?

その箱を勢いよくカラコロ振ると、なんとぼんやり明るくなってきた。

「明かりは小さいけど役には立つだろ」そう言ってベルトに紐で固定してくれた。

「おおお、ゴブリンの発明品! 実際に使ってるのあたし初めて見たかも」

「2人とも、モグを、モグを頼んだよ!」




******




 遠くで聞こえたような気がしていた金属音はまさに交戦中の剣がぶつかる音だった。

坑道への道を入ってすぐにそれは見えてきた。ギルドのメンバーと思わしき数人が

黒いローブを羽織ったゴーレムを相手に波状攻撃を仕掛けている。


「おい、大丈夫か!」

近くに足を負傷し木に体を預けるメンバーが。俺が声を掛けると素早く振り向き

「危ない!」そう叫ぶと持っていた剣を俺に向けて突き出す!

「うおっ!? なんd」言いかけた後ろで唸り声とともに勢いよく飛びのく音。

闇に紛れ姿が見えなくなっちまったが、今のは、まさか……!

「あのデカブツだけでも厄介なのに、気を付けろ。

敵はあのでかいのだけじゃない。巧みに暗闇に潜んで襲う機会を伺ってやがるんだ」

「アデルさん!? 戻ってきたんですね!?」

振り向けと両手で応急箱を抱えたコルトアの姿が。



「状況を教えて下さい、加勢します!」

「サリーさんまで!? お身体はもう大丈夫なんですか!」

「じ、状況は、あのですね。この奥に今、リーダーとデイジーさんが……

それで、ああ。なんていうか、信じられないでしょうけど、オイラ見たんです。

リーダーがあのでかいモンスターを出した所を……!」

「落ち着け、本物のドレイクさんなら今ペンデールだ、もうすぐこっちに来る」

「え、ええ!? じゃあ今まで一緒にいたリーダーは偽物!?」

驚愕した表情から一転、またも焦り出すコルトア。


「とにかく今はこの場をなんとかしないと! サリー!あのデカいの止めてくれ!

俺はここでコルトアと負傷者の救護にまわ うおわっ!」

木々と人を薙ぎ払いながら、巨大な柱を武器に豪快に振り回すゴーレム。

かろうじて衝撃に耐えたメンバーに次々と何かが襲い掛かる。それも1匹や2匹じゃねぇ。

「ウルフマン!?ペンデール近辺に出没するなんて話、聞いた事ないわよ!?」

ウルフマン達の攻撃に次々と倒されていくギルドメンバー達。

鋭い爪をぎらつかせ、今度は俺達を標的に襲い掛かってくる。

「ちょっと悪ふざけがすぎるんじゃない、の!」

サリーが踊るようなステップで向かってくるウルフマンをひらりと躱す。

途端ウルフマンはピタリと動きを止め、糸が切れた人形のようにその場に倒れた。

いつ見てもこいつの抜刀術とかいう剣術はすげえ。目で追える気がししねぇ。

剣と剣が折り重なったような不思議な形をしたロングソードを携え

ゴーレムに向かって一直線に走り出すサリー。その行く手を止めようと

前を塞ぐウルフマン達、が。邪魔をする事なく一様にバタバタと倒れていく。

その様子に何かを感じ取ったのかゴーレムは両腕で顔を隠すような仕草をとった。


 サリーとゴーレムの間に火花が飛び散りギリギリと金属音が響きまくる。

それでもサリーの攻撃は止まらず、大きくよろめき体勢が崩れた所へ

肩から腰にかけて切り付けた。普通の人間ならバッサリいってるだろう傷。

膝を折り、苦しそうにもがく姿を見るに大分ダメージは負ったようだが致命傷じゃないようだ。

「倒れない……!?」

「顔に貼ってある札をなんとかしねぇと!」

目標をサリーから俺達に移したウルフマン達が次々と襲い掛かってくる。

やっぱ強えなぁ、おい!コルトアや他のギルドメンバーと協力しながら追い払う。

「アデルさん、こいつらあの狼君の仲間だったりしませんかね!?」

「わかんねぇ!わかんねぇけど、その可能性は、ある!」

「じゃあどうにか話出来ませんかね!? これじゃあいつか押し切られますよっ!」

無数にも思えるウルフマン達の攻撃に俺達は段々と追い詰められていっていた。

確かにこれじゃあ、時間の問題だ。それまでにサリーがあっちを片付けれくれれば

一気に形勢逆転できる、が。チラリとサリーの様子を確認する。

負傷したメンバーを庇うように立ち回るサリーの表情にあまり余裕の色はない。


「ほぉ。結構やるじゃねーか、あの人間の女」

不意に掛けられたその声に反応しウルフマン達が攻撃の手を休める。

なんだ、急に大人しくなりやがったぞ?なんだかわかんねぇがチャンスだ。

後ろ手にコルトアに合図を送る。ここは負傷した皆を連れて一度撤退するべきだ。

と、その様子を楽しむように大きな笑い声と共に

ひと際でかい黒いウルフマンが群れを掻き分け俺達の前に躍り出てきた。

「いようアデル。こんな形で会うとは思ってなかったが」

「ガロンさん……やっぱり、こいつらはグリーンウォルフだったんだな」

「この先には行かせらんねぇ。どうしてもって言うんなら……」

険しい表情で睨みを効かせるガロンさん。

「そりゃそうしたのは山々なんだけどよ、俺にも譲れねぇもんがあってな」

「交渉決裂だな、お前を手にかけるのは正直気分のいいものじゃねぇが」

ガロンさんの遠吠えにそれまで遠巻きに見てたグリーンウォルフ達が

一斉に動き出す。急いで振り向きコルトアの姿を確認する。

まずい、歩く事ができねぇメンバーを背負ってる最中だ。


「うおおお、ちょおっと待ったああ!!」

急な大声にびくりと体を震わせるグリーンウォルフ達。

「ガロンさん。ちいとばかし話をしよう、そうしよう」

「はぁ?? 話なんざさっき終わっただろうが」

「まぁまぁ、そう言わず。俺だってガロンさん達とやり合いたくないし」

コルトア達を逃がす為に咄嗟に出た言葉だったが本心でもある。

そんな俺を見て、何かを察したのかガロンさんがフンと鼻で笑う。

「まぁいいだろ、で? 話ってなんだよ」

「テリアの事だ。あいつはいつ復活したんだ?ずっと封印されてたはずだろ?」

意外な言葉に面食らった顔で惚けるガロンさん。

「な、おま。どこでそれを知った!?」

この反応。じゃあやっぱりテリアはシルフィーだったって訳か。

「そんなんはどうでもいい。あいつは確かに森の事を心配してたはずだ。

魔力で森の皆がおかしくなるのを止めたいって、そう言ってたって。

俺はそんなあいつに協力したいって思ってた。それも嘘だったって事か?」

「違う!もうあの頃のお嬢とは違う……違うんだ。本気で俺達の事を償おうと必死に!」

ん?償う?なんだ、どういう意味だ?


「アデル、お前がどこまで知ってるのかわからないが。

俺には俺の譲れないものってのがある。その為にはアデル、お前を」

最後の方は聞き取れなかった。次の瞬間、そのデカい体躯からは

想像できねぇ素早さで俺をめがけて突っ込んできた!

大声で叫ぶ。言葉になってなかったかもしれん。

スローモーションで近づく鋭い爪と牙。

ショートソードを構えようとするも間に合わない。

ああ、こりゃ無理だ。こんなんにやられたら

助からねぇだろうなぁなんて頭は驚くほど冷静だった。



 ガロンさんの爪があと数センチまで迫った時

何かがガロンさんを跳ね飛ばした。目の前には独特の黒い意匠の槍。

「何をぼんやりしている、アデル・ノート!」

声に振り向くと、そこにはドレイクさんの姿が。

ペンデールでの準備が終わって追いついてきたんだ。

「死にたいのか君は!」ドレイクさんが俺に詰め寄る。

「早く構えろ!次が来るぞ! 他の者は負傷者を最優先だ!」

「待ってください! あのグリーン……ウルフマンは知り合いなんです!」

「何をバカな、周りを良く見ろ。その知り合いに我々は被害を受けているんだぞ!」

「それはっ」次の言葉は辺りにばかでかく響く地鳴りにかき消された。

見ると土煙を上げ倒れ込むゴーレム。どうやらサリーが札を特定したようだった。


「ちっ、旗色が悪くなっちまったな」

吹っ飛ばされたはずのガロンさんが態勢を立て直しながら言う。

するとガロンさんを囲むようにどこからともなくグリーンウォルフ達が集まってきた。

「その兄ちゃんの言う通りだぜ、アデル。

もうオレ達は敵同士なんだ。遠慮はいらねぇぞ、本気でかかってこい!」

「黒い、リーダー格のウルフマン。一つ聞く、お前達はサリアと繋がっているのか」

「さぁねぇ。俺達は否応なしに足止めを命じられてるだけだ」

「フン、ならばやはり奥の主犯に聞くしかないようだな」

両者がじりじりと距離を詰める。このままじゃガロンさんが……!

「アデル! ゴーレムは倒したわ、早く追いかけましょう!」

「で、でもガロンさん達が!」言う俺を制するようにドレイクさんが命じる。

「ここはペンデールギルドが抑える。君達は先を急ぐんだ」

サリーに手を摑まれ促されるも足が動かない。



 パシン、と乾いた音が耳に響いた。段々熱くなる頬。

「しっかりしてアデル!モグを助けなきゃ、でしょ?」

そうだ。俺はモグを、デイジーちゃんを助けに来たんだ。

俺には俺の譲れないもの、か。「ガロンさんっ! 俺は行く!」

そう叫ぶと俺の手を摑むサリーの手を強く握り返し走り出す。

胸の内に渦巻く複雑な気持ちに蓋をして。




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