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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
17/24

自己チューと狐?の冒険17


「着きましたよ! アデルさん、……アデルさん!?」

俺の様子におろおろとするデイジーちゃんを横目に

こみ上げてくる物を押さえるのに必死な俺。

デイジーちゃんの愛馬のスピードは凄まじく、夕方になる頃には

ゴブリン達の住む村への入り口に到着していた。



******



 ゴブリンの集落への入り口からは徒歩になる。

デイジーちゃんは愛馬を程よい大きさの木に繋ぐと傍にある大きな石に腰かけた。


「アデルさん、大丈夫ですか?」そう言って水筒を差し出す。

「ああ、サンキュー。なんとかダイジョウブ……」

と、ポーチがもぞっと動いた。ニーナもあの振動を喰らったんだ。無事では済むまい。

ニーナ人形を取り出しながらデイジーちゃんを見ると何やら考え込んでいる様子。

「どうした?」声を掛けると一瞬口を開くもすぐに閉じてしまい

デイジーちゃんから言葉が発せられる事はなかった。


 まだちょっと酔いが残ってた俺は

依然考え込むデイジーちゃんの横に座り辺りの景色を眺めていた。

どれくらい経ったか、デイジーちゃんが口を開いた。

「……ずっと、考えていたんですが」

「どした?」


「もしサリアがニーナさんやシルフィーの力でペンデールを脅したとして。

その時ってギルドはどうするつもりでしょうね」

「どうするって……、ああそうか。サリアの政治とギルドは別だもんな」

「はい。その場合本部はギルドの撤収を命じるでしょうけど……」

「確かえらく国が介入してるんだったっけ? サリアのギルドっt」

言いかけたところを手でがっつり塞がれる俺。

「ふがふが!」 (静かに、何か来ます)

目で林道の奥を見るように促すデイジーちゃん。かすかに草をかき分ける音がする。

お互いに頷き合い距離をとるように飛びのくと剣の柄に手をかけた。



 はたして林道から出てきたのは。荒々しい息遣いと共に踊り出る影。

「ぜぇ、ぜぇっ うわっ!? って、あ、あんたはっ」

見るとゴブリンの青年が必死の形相で繁みから這い出てきた。

と、思ったらその後ろには見た事あるでけえコカトリス!

「うおわ、ってコッコ!?コッコか、お前!?」

「これがコカトリス、初めて見ました……!」

コッコは襲ってくるでもなく、大人しく俺達を眺めている。

「やっぱり、あんたあん時の人間だよな!?」

青年は安心したのかその場に倒れ込む。

「お、おいどうしたよ。ってケガしてんじゃねぇか」

よく見れば全身擦り傷だらけ。それを見たデイジーちゃんが

すばやく愛馬に駆け寄ると応急処置用のポーチを開き戻ってきた。


「こんな事頼める立場じゃないのは分かってる

でも俺じゃどうしようもないんだ。頼む、助けてくれ!」

「とりあえず一旦落ち着け、ほら水、水」

持っていた水筒を差し出すと一気に飲み干す。

そういや、なんか見覚えのある顔だな…… あ。

「あぁ、あんた確か集落の門番やってた奴だよな?」




******



 このゴブリンの青年、名前をゴズと言うらしい。

そのゴズが言うにはつい数時間前に大勢の人間が村を襲った。

その手際は見事でまるでコッコの事を知っていたかのように

村からモグを引き離し、連れ去っていったという。

激昂するコッコもその意味が分かったらしく村のピンチに駆け付けたはいいが

手を出す事が出来ず村は制圧されてしまったんだそうだ。


「奴ら、俺達を縛りあげてどこかに連れて行くつもりらしいんだ」

コッコにはデイジーちゃんの愛馬とある程度繁みになっている場所で待機してもらう事にした。

「モグの事は俺達に任せとけ、って言っても言葉わかんねぇか」

俺の予想とは裏腹に言葉を理解してくれたのか大人しく腰を下ろしてジッとしている。

「コッコは頭のいい奴だ、今の状況では自分が下手に動く方が危険なのをわかってる」

ゴズに大人しくついてきたのも、その証拠だと言う。



 緊張感に押しつぶされそうだ。

三人で辺りを警戒しながら進んでいると遠くに人影が見えた。

(コズに気付いて追いかけてきたか、警戒に出てるだけか)

(一人、ですね。ゴズさん、アデルさん音を立てずにここに居て下さいね)

そう言うとパッとデイジーちゃんが消えた。そのまんま、パっと姿が消えちまった。

あまりの事に俺もゴズも口をあんぐり開けてデイジーちゃんが今まで

居た場所を見ては互いに顔を合わせ、視線を戻す。ええええ???



 そうこうしてると小さく呻く声が聞こえた。

何事かと思うと遠く、人影のいた場所から

デイジーちゃんらしき小柄な影が手を振っているのが見えた。

「ちょ、ちょっ、なんだ今の!? 何したのデイジーちゃん」

興奮気味に話す俺に向けてしーっと人差し指を立てる。

(ここ、見てください)

デイジーちゃんに促され見た腕章。これ、ペンデールギルドの腕章じゃねぇか!

「えええ、村を襲ったのってペンデールなのか!?」

「急ぎましょう。すごく嫌な予感がします」

眉間にしわを寄せるデイジーちゃんに促され俺達は全力で村に向かった。





******


 村につくとそこは異様な雰囲気に包まれていた。

「誰だ、今ここは立ち入りを制限されている。通ることは出来ないぞ」

入口に立ついかつい装備に身を包んだ数人。厳しい顔で俺達を見ていると

「おい、後ろにいるのはこの村のゴブリンか!? お前達が捕まえたのか!」

と、先程の険悪な表情から一転して明るく声を掛けてくる。

「よくやったな、そいつはどこに隠れていたんだ? さぁ早くこっちn」

伸ばした手を払いのける。

「悪いけどこいつは俺らの連れなんでね、捕まえるとか冗談じゃねえよ」

「……な、なに?お前達は一体」

異変に気付いたのか、村の奥に居た数人がこっちへ歩いてきた。


「おいおい、勘弁してくれよ、揉め事か? 一体どうしたっていうんだ」

「あん?お前がここの責任者か……って、コルトア!?」

「えええ!?ア、アデルさん!どうしてここに!」


「それはこっちのセリフだ、おめぇが居るって事はまじに

こいつらペンデールギルドのメンバーってことじゃねぇかよ!」

俺の怒声に幾分ビビるコルトア、慌ててごほんと一回咳払いをする。

「と、と、とにかく、アデルさんが何の用でここに来られたのか知りませんけど

今はダメです、まずいです! 早いとこ、ここから離れたh」

そこまで言ったコルトアの声を別の声が遮った。

「何をしてるんですかあなた達。早く持ち場に戻りなさい」

ああ、この氷よりも冷たい威圧を含んだ声。間違いない。

「……ドレイクさん」


「おや、どなたかと思えば。アデル・ノート」

俺から視線をそらしデイジーちゃんを見たドレイクさんは

ほんのちょっとだけピクッと眉を動かしたように見えた。

「あなたは……デイジーさん。なるほど、このタイミングとは……

コルトア、ここは私が応じましょう。あなたは持ち場に戻りなさい」

コルトアは戸惑った様子で俺とドレイクさんを交互に見ていたが

ぺこりと深くお辞儀をすると元いた村の真ん中あたりにある人だかりの中に戻っていった。


「さて」


 ドレイクさんが眼鏡を掛けなおしながら俺達を一瞥した。

「あなた方の後ろにいるそのゴブリンの青年も気になります、が」

デイジーちゃんを見据え視線を外さずにいるドレイクさん。

「あなたがここに居る事が一番分かりませんね。ブルティアギルドリーダー?」

その声にはさっきより一層の冷たさを含んでいるように聞こえた。


「あら、それはこちらの方ですよ。ペンデールのギルドリーダー様?

あなた方のような大きなギルドが

それもリーダーのあなたが直々に何をなさっているんでしょう?」

こっちも負けてはいない。てか事務モードの氷のようなデイジーちゃんと

ドレイクさんって似てるな……今更ながら思った。

「……答える義理はありません」

周りのギルドメンバーからさっきとは比べもんになんねぇくらいの敵意を向けられる。

「俺達はモグ……ここのゴブリンの子供に会いにきただけだ。通してもらえませんか」


「ゴブリンの子供……? ああ、あのコカトリスの飼い主の。

あの子なら市長の命で一足先にペンデールへ送りましたよ。

これから残りのゴブリンの皆さんもペンデールへ送らなければいけませんので。

彼らの処遇がはっきりした後、ゆっくりと面会すればいいでしょう」

「へ? ペンデールへって……ええ!?」

「ど、どういう事ですか!? ちょっと待って下さい!」

俺達に目もくれずメンバーに指示を出し始めるドレイクさんに

焦りを含んだ声でデイジーちゃんが抗議した。

「さぁ。早い所立ち去りなさい。あぁ、そうだ。アデル・ノート。

あなたも市長の元へ連れて行くよう命じられていたんでした」

ドレイクさんが言うやいなやギルドメンバーに囲まれる俺達。

「んなっ! ちょっと、待ってくれよドレイクさん!?」

「離してください。あなた方にも事情があるように、わたし達にも事情があります。

こんな、ギルド同士での諍い等あってはならない事ですが……」

言うとデイジーちゃんは腰に手を掛ける。そこには銀装飾の綺麗な細身の剣が。



「いやいや、待ってくれ! デイジーちゃんも!」

俺は必至に今にも剣を抜きそうなデイジーちゃんの肩を押さえる。

「ちょっと、一個だけ確認させてくれ!ギルドはゴブリン達をどうするつもりなんだよ」

「保護です。ただ今はゴブリンの方達に説明し、納得頂いてるような時間はないのです」

「その言葉に嘘はないですよね、ドレイクさん」

フン、と眼鏡を掛けなおし、さも当然という顔。

この人が嘘をつくような人間じゃないのは俺も知ってる。が

「デイジーちゃん。俺、市長に会ってくる。その間、ここのみんなには手を出させないでくれ」

冷笑を浮かべ俺を見る。一瞬の間を置いて

「……いいでしょう。1日、予定をずらしましょう。

ギルメ、村の回りの警戒を強めなさい」

ドレイクさんの後ろに控えていたギルメと呼ばれた茶髪のメンバーは

ゆっくり頷くと傍らにいた数人に指示を出し始めた。


「じゃあ俺が戻るまで村の事頼んでいいか」

神妙な顔つきで頷くデイジーちゃん。

「お話は済みましたか? 早く連れて行きなさい」

強面3人のギルドメンバーに連れられ俺は再びペンデールに向かう事になった。



******



 ペンデール中央研究塔14階、そこに市長室がある。

場所はペンデールに住んでる奴なら誰でも知ってると思うけど

実際に足を踏み入れた事がある人は少ねぇだろうって場所に俺は来ていた。

ギルドのメンバーはどうやら入口までのようで

奥から出てきた年配の研究塔の職員にバトンタッチされた。


 一般の利用者が来ることはない職員用のフロアに何やら見た事のないものが。

自動で上や下へ行き来する数人乗りの荷台のようなもので上の階へ上がったんだが

中々乗る事なんてないもんに俺は内心興味深々だった。これも魔術道具かなんかなのか?

「ここで待つように」

荷台から降りるとそこは1階の談話室のような空間だった。

円状になっている空間に一か所ドアが見える。あれが市長室か。

「たっけぇー……」中央の吹き抜けから初めて見る下の様子は壮観だなこりゃ。

しばらくその景色をぼんやりと眺めていると後ろで昇降荷台の上がってくる音がした。

二人の衛兵に囲まれて降りてきたのは俺が小さい頃に見たよりも

幾分老け込んじまったおじさんの顔だった。

「大きくなったなぁ。何年ぶりだろうな、こうして会うのは」

「5年ぶりくらい?ですかね、お久しぶりですおじさん」

「私とアデル君が中にいる間、誰もこの中に入れないでおくれ」

連れてきた衛兵に言伝すると、俺を例の市長室へと招いてくれた。




「手荒な真似をして悪かった。どうしても君と話しをしておきたくてな」

綺麗に結わえられた胸まである青い髭をゆっけりと撫でながら市長は

なんとも見るからにふかふかしたソファーに優雅に腰かけながら話してきた。

部屋の中は市長の性格が伺えるレベルで整理整頓されている。てか物が少ない。

あるのは部屋の中央にある来客用の椅子とテーブル。部屋の奥のこれまたどでかい黒曜石の机。

そして壁にちょこんと備え付けられてる本棚と立派な観葉植物のみ。


「俺への話ってのも気になりますけど

それより俺はゴブリン達の事の説明を聞きたくてここまで来たんです」

「そうだな、何から話したものか」


「パパ!」

市長が口を開き何か言いかけたその時だった。

突然部屋の中に響き渡った女の怒声に心底面倒そうな顔になると

短い溜息を吐いて声の主に顔を向けた。

「今は中に入らないようにと伝えてあったはずだが?」

「緊急の要件よ! 今帰ってきてたギルドメンバーから聞いたわ。

こんな事をする為にコカトリスの情報を提供したわけじゃないのよ!

今すぐに村のゴブリン達を解放するよう言って!」

部屋の中をズンズンとツヤツヤの青髪を怒りで逆立たせてやってきたそいつは


「あれ!? アデルっ!?」

以前見た変態服装ではなく白いローブで全身をすっぽりと覆った幼馴染だった。

だがローブからのぞく素足が例の服を着てるであろうと彷彿とさせていた。

そう、俺と市長の接点がこいつ。サリーのパパがペンデール市長だったわけだ。

「っと、お前もう体大丈夫なのかよ」

「もちろんよ! あたしを誰だと思ってんのかしらね!」

「え へんt」

言い終わる前に思いっきり拳骨をかましてくる変態。くっそ痛てえ!

でもほんとに大丈夫みたいで安心した。元気になりすぎだとも思うけど。

「これ、よさんか! いつまで経ってもお前のそういう所は治らんな」

「これは……流れでつい、よ! っじゃなくて話を逸らさないでパパ!」

「俺からも聞きたいです。どうしてギルドに依頼してまでゴブリン達を

ペンデールに連れて行こうとしてるのか」


「う、うむ。ゴホン。アデル君はペンデールを襲った例の黒いローブの犯人の事は知っているね?」

「それは、知ってますけど……まさか、それでこんな事を?」

「それもある。だが一番の切っ掛けは今朝、サリアから全国に向けて発信された発表にある」

「サリアの発表?」嫌な予感が……。

「サリアがね、ギルド加盟からの脱退を表明したのよ」

なんだ、ギルドからの脱退か。てっきりブルティア関連だとおm




「えええええ!?」



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