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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
16/24

自己チューと狐?の冒険16


「ペンデールはその昔、林業でなんとか成り立ってた小さい町だったのよ」

「そんなこたぁ、今じゃガキンチョでも知ってるぜ」

ウンウンと頷くウィル。

「じゃあ、実はそこから消された事実がある。って事は?」

「それ!それを調べてたんだぁ。でも……」

「てことは魔道図書館? あそこにあった本を調べたのね」

「あそこにケアロおじいさまの本があったでしょ。わたしさんも読んだ事あるわ。

正義感の塊だったおじいさまが一族の禁忌、秘密の口外を意を決して

残そうとしたんだけど、見事にもみ消された幻の告発本。

それ以来、異端扱いされちゃって研究塔に出入り禁止にされたとかなんとか」

「なるほどぉ。書き換えられたものだったんだね。

なんか自伝にしては文章に繋がりが無かったりして意味不明だと思ったんだぁ」



「事の発端はね。約200年前、ペンデールの開拓時代にまで遡るわ」



******



 ニーナが言う昔の話。

ここら一体はブルティアの大森林と呼ばれ様々なモンスターや小動物

果てはシルフィー(妖精の一種!)までが多く住みついていたらしい。

そこへどこからともなく人間達が現れ、あっという間に町を作り

町から毎日来る人間達が周辺の木々を伐採をしていった。

住んでいた森を突然追われる事になったシルフィー達は

訳も分からず逃げ惑い、人間と交戦する者もいたらしいが

ほとんどはどうする事も出来ず森の奥へ奥へと追い詰められていった。


 次々と伐採は進み、残ったのが今のブルティアの森。

もはやここを追われてしまっては精霊のシルフィーは森とともに

消えてしまう。そして生き残りを賭けた彼等は人間と戦う事を決断する。

争いが始まった時、意外な事が起こった。

シルフィー達の玉砕覚悟の攻防はいとも簡単に人間達を退けていく。

森への侵攻を阻止するどころか

そのままの勢いで人間の町に攻め込み壊滅させる事に成功したのだ。

ここからブルティアは一時的にシルフィーの支配下に置かれる事になる。

事態を重くみたペンデールはギルドに依頼を出し精鋭を派遣するも

この状況を打開するには至らず長い膠着状態が続いた。



「この時期、ペンデールで徹底的な緘口令が敷かれたらしいわ。

なにせギルドが関わっているにも関わらずギルド本部にも当時の資料は一切残されてない程」

「そっかぁ。だからどこにも資料が残ってなかったんだね」


 森を守り、平穏を取り戻したかのように見えたが

シルフィー自身も予想していない変化が起こってしまう。

今まで穏健に争いのない世界で培っていたその心に

他者を制圧するという言いようの無い闘争心が生まれてしまった。

血を浴びたシルフィーは徐々に凶暴性を増していき

以前のような妖精然とした雰囲気は微塵も感じさせない

非常に好戦的で残忍な性格へと変貌してしまったという。


 その後シルフィーはあろう事か同じ森に住んでいたモンスター達に対しても

見境無く襲い掛かるようになりブルティアの町は生きる者のいない死の町となってしまった。

そこでニーナの先祖である封印の魔術師ニックスは凶暴化したシルフィーは

やがて自らの森にも手をかけペンデール、さらには世界に牙を剝くだろうと当時の市長へ進言した。

そこで出された解決策がブルティアの町ごとに彼等を封印する、というものだった。

これ以上の損害を出す訳にはいかないとペンデール市長はこれを了承した。

「待て待て、ブルティアの町ごと?」

「そうよ、今の森はブルティアの町があった場所。

シルフィーが出す強烈な魔力で自然の理を無視した異常な成長で育った森なのよ」

あっ!そうか。あれはそういう事だったのか。

森の中の廃墟達は旧ブルティアの名残だったんだな。



 ニーナ人形は疲れたように頭をふらふらと揺らすと

その麻の塊の体が少しほつれたような気がした。

「でもそんな凄い奴が相手でなんとかなるもんなんだな」

「この世には相手の魔力を吸い取ってしまう恐ろしいアイテムがあるのよ。

まぁ滅多に見れるもんじゃないし、どっちかというと噂レベルの代物だけど

実際にあったって話。名前は確か、抗魔鏡だったかしら」

「えっ、珍しいとは聞いてたけどそれってそんなレベルの物だったのかよ」

「知ってるの? そうよ。持っているだけで国に箔がつくとまで言われてるんだから」

親父……なんてものを持ってたんだ、そら狙われるわ……。


「でもあれって呪いとか、精神を操られた人間の魔力を空にするもんなんだろう?

確かにすげえもんだけどそれで国にってのは、なんかなぁ」

「ああ。なるほど、そうね。確かにそういう医療的な使い方の方が広まってるのかしらね」

ニーナは一瞬話すのを躊躇した。口の部分に手を当て押し黙る。

「これは当然といえば当然なんだけど、その吸い取った魔力、どこにいくと思う?」

「どこ? どこって……ぶわーっと消えちまうんじゃねぇのか?」

「わかったぁ!」と、ここでウィルが顔を輝かせる。

「魔力が移動しただけだから、使った人の中にいくんだね!?」

「そう、そうなのよ。それこそが抗魔鏡の本質。

昔は今と違って魔力を自然回復させるのが苦手な人への治療がほとんどなくてね。

その対策に使われていたのが抗魔鏡だったと言われてるわ。

でも本来とは違う使われ方をするのに時間はかからなかったってわけ」


「話が逸れちゃったわね。抗魔鏡で魔力を奪う事で

一時的に無力化するのに成功するんだけど。精霊ってのは魔力の塊みたいなもの。

当然ニックスの体への負荷は凄まじく倒すまでには至らなかったのよ。

そこでシルフィーの魔力を恒久的に吸い取り続け自らの魔力で自らを封印し続ける装置を作った。

それは森の中心部にあって祠の形をしてるんだけど」

「え、待ってくれ。封印ってシルフィーの魔力で出来てたのか!?」

「でもぉ言われてみれば、そんな凄いモンスターを封印し続けるなんて

普通の魔術師じゃあ全然魔力が足りないもんねぇ」

「一時的に魔力を吸い取られて無力化したものの時間が経てば

いずれ元に戻ってしまうシルフィーの魔力を利用する事し

さらに森の中と外の空間を捻じ曲げて好奇心旺盛な冒険家が

うっかり中に入ってしまわない様に二重の封印を施したのよ」

なんだろう、耳が痛い。ウィルも俺を見て苦笑いを浮かべる。

「そして私が封印の補強の為にケアロおじいさまから

連絡を受けてブルティアに来た……までは良かったんだけど」



「なぁるほどな」

背後から不意にかけられた声に飛び上がる俺とウィル。

見るといつの間に居たのか仏頂面で佇むスライの姿があった。

「ウィルさんがあんまり遅いもんだから探しにきてみれば……」

「あらスライ、久しぶりね。話した事はないけれど」

「話の途中で悪いが、今回の俺の仕事はあんたとその一族の拘束だ。

おとなしくギルドまで来てもらおうか。っと言いたい所だが」

スライから放たれる威圧感にびびる俺達。

眉間に皺を寄せ難しい顔をしていたかと思うと、ふっとやわらかい表情に。

「ギルドマネージャーからの依頼ってところかしら?」

ニーナ人形の言葉に一瞬驚きの表情を見せたスライだったが

「その通りだ。何も説明を受けてない依頼だったが話は大分見えてきたぜ。

事が事だ。サリア王室が何考えてるかわからない今、本部にあんたを」

「まぁ行きたいのは山々なんだけど無理なものは無理なんだけどね?」

そんなスライを制するようにニーナが畳み掛けた。


「今の私はもう自分の意思で指の一本すら動かせない状態なのよ」

ニーナが恨めしそうに言葉をひねり出す。

「ロンドの独断か、サリアの指示か……どちらにせよ

どういった目的があってわたしさんにこんな事してるのか分からない。

確かなのはあいつとシルフィーが協力関係にあるって事だけだわ」


「じゃあ一つだけ聞かせてくれ」

間を置いてスライがニーナ人形に声を掛ける。

「あんたはギルドリーダーについては何も知らない、って事でいいのか?」

「アインツ? アインツってどういう事?」

俺は知ってる限りの事をニーナ人形に話した。

サリーの事、スライの事、ペンデールでの事。

ニーナ人形は話が終わってもだんまりしたまま。

元々人形だし表情なんてわかんねぇが、なんだかひどく考え込んでいるように見えた。

「アインツがわたしさん絡みで何かに巻き込まれたのは確かだと思う」

スライはニーナの言葉に心底納得したように頷いた。

「うっし。この件、本部には暫く報告しない方が良さそうだな、勿論サリアにも」

「いいの?そんな大事な事簡単に決めしまって」

「実はな。はなっから俺はギルドマネージャーを信用してないんだよ」



******



「覚えてるか?ケアロじいさんの屋敷の地下にでかい絵があったの」

「ああ、家族の肖像画のやつな」

「あれを見た時にニーナさんの事をギルドは、いや王室は知ってたんだと確信した」

「肖像画? そんなものがあの家にあったのね」

興味深げにふんふんと頷くニーナ人形はどうやらケアロ邸の地下室の事を知らないようだ。

「俺がギルドから受けた仕事は二つ。

一つは連絡の取れなくなったニーナさんの消息を探る事。これはまぁ分かる。

ギルドの、ひいては大陸でも随一と言われる魔術師がどこにいるかも

分からなくなりました~なんてサリア内の問題だけじゃなく国際問題になりかねん」

それよりも問題は、と間を置くスライ。

「二つ目が、ペンデールに在住する封印の魔術師一族を拘束する事、だったんだよ。

今にして思えばあれはサリアがペンデールに圧力を掛ける為の人質を俺に連れてこいって話だったんだな」



「おいおい、待てよ。サリアがペンデールに?なんでだよ?」

「サリアは今、経済的な危機を迎えている。ともっぱらの噂を聞いたことないか?」

「経済……まさか最近の農作物の不作の事か?」

「そう。ここ最近の干ばつやら水害やらで主な稲や野菜類が軒並み全滅、なんて事が続いていてね。

表立って公表はしてないが国庫はもう限界だってもっぱらの噂がある。

外との国交なんて無い国なもんだから援助を頼めるような友好国なんて

当然無し。そうなるとどうやって財源確保するか、になってくると思わないか?」


「ペンデールもサリアもお互い爆弾を抱えてるみてぇなもんか……」

おもむろにニーナ人形が立ち上がる。その体はもうだいぶほつれてきていた。

「つまりわたしさんは政治的なものに利用されている、というところね」


「よし。お前の協力の要請、受けてもいいぜ」

「本当!?」

「ただし。俺からも提案がある」

ん?と首を傾げるニーナ人形。

「ここにいる4人、俺達でPTを組もう」

「ち、ちょっと、アデル!? なんでそうなるのぉ!?」

「いいかウィル。PTは仲間だ、仲間のピンチは皆で乗り切るべきだろう?」

「えぇ?う、うん。そうだね、仲間は助け合いだもんね」

そう納得し頷くものの、あれ?んん?と首を傾げるウィル。

「いいのかよ、そんな事決めちまって」

「いいもなにも話を聞いた限りブルティア関連、特にこの森関係とあっちゃ

正直ペンデールもサリアもあてになんねぇだろ。

最悪ブルティアは捨て駒扱いで見捨てられるかもしんねぇし」


 ニーナ人形に向き合う。

「だから、俺達がお前を全力で助けるから。

お前は全力でブルティアを助けてくれよ。これが条件だ」

大きく頷くニーナ人形。こころなしか笑ってるように見えなくもない。

「その話、喜んで飲ませてもらうわ。アデルさん、手を出して下さい」

ニーナに言われるまま人形に手を差し出す。

するとニーナの体はみるみる解けていき

元の大きさの半分以下のサイズに。

「うお!? なんだこりゃ」

「もうすぐ魔力が切れて喋る事が出来なくなります。

でもこの大きさでなら、辛うじて少し動くくらいなら出来ます」

そう言いながら俺の革ポーチにごそごそと潜り込む。

「一度体から離れてしまった精神は、普段なら魔力切れとともに

本体に戻るよう術を組むんですが今回それが出来ませんでした。

暫くここに厄介になりますから、あしからず」

その言葉を最後にニーナ人形は動かなくなってしまった。




******



 アシカ亭に戻ると静かに怒るデイジーちゃんと遭遇。

こっぴどく叱られた。あまりの事に女将さんがびっくりして見に来た程。

その後部屋からいなくなっている俺、ギルドから姿を消したラガー君とテリアで

三人は朝から大騒ぎだったらしい。スミマセン……。



 改めて事のあらましを三人に説明する。

森で見た事、ニーナの操る人形に窮地を助けてもらった事。

「そんな、クラウドが……?」

今にも泣きそうな顔でウィルがうつむく。


「そんな、毛の為に……!」

ウィルに悪気はない。純粋な気持ちを言葉にしてるだけだ。

わかっちゃいるが、笑いたい心が悲鳴をあげている。



「つまり、テリアちゃんがそのシルフィーだったって事ぉ!?」

「そう考えるのが妥当だろうな」

「じゃあこのブルティアの現状は、そのゴーレムを操る為の魔力を集めている可能性が高いですね」

「とにかく、抗魔鏡をシルフィーが狙ってる。ってのはこれで納得がいった。

それにシルフィーを封印する手段も、その抗魔鏡だって事もな」



「分かりました。そういう事でしたら私もPTに入ります」

と、とんでもない事を言うデイジーちゃん。

「このままではブルティアがどうなってしまうのか分かりませんし」

「んじゃあ、とりあえずモグに預けてる親父の抗魔鏡の回収だな」

「ではわたしの馬を使いましょう。ペンデールまでなら半日でいけますから」

「じゃあ俺とウィルさんはここに残るとしよう。町の人間を全員避難させなきゃな」

お互いに確認し合うように頷き合うと俺とデイジーちゃんは小走りにアシカ亭を後にした。



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