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自己チュークエスト!  作者: くもいひも
11/24

自己チューと狐?の冒険11


 「えぇっとぉ、アデルとサリーちゃんが

出発した後すぐにアデルの家へ向かった所から。話していくね」

今回のペンデール暴動の顛末。俺達と別行動になったウィルの1日。



******



「ボクがアデルの家につくとボクの事を覚えていてくれた

バーグさんが急いでおじ様に取り次いでくれたんだぁ」

ボクらがまだペンデールギルドに所属していた頃の事だ。

何度かアデルの家へボクとクラウドは招かれる事があった。

その頃すでにアデルは家を半分飛び出したような形で冒険家になっていたんだけど

執事のバーグさんが何かにつけて半強制的に呼び戻したりして。

なんだかんだと交流を持つことが多かったんだよね。


 その事もあり、急に現れたボクの唐突の話にも真摯に聞いてくれた。

「そして簡単に事情を話してると、アデルのお父さんが結界の所について

詳しく話して欲しいって。それでボク自身は何もわからない状態だったから

テリアちゃんとラガー君を呼んで詳しく聞く事になったんだぁ」

そこで今までの事。テリアちゃんとラガー君の目的を話す事に。

「テリアちゃん達の森とボクら人間は交わらない結界があるって事だけど

あのね?どうしてアデルとクラウドはテリアちゃんと出会う事が出来たのぉ?」


「森の中には代々わたくし達グリーンウォルフが魔術師様より賜り

守り継いできた結界を発生させる装置、封印の祠というものがありますの」

その祠が魔力を放ち森全体を包み歪ませ、結界という形で表れているんだって。

そしてそれは年を重ねるごとにどんどん強くなっていくんだっていう。

これには ?てなった。だって魔力を消費したら消えていくもんだよね?

そんな自然に回復していくなんて、まるで人やモンスターみたいじゃない?



 その時ボクは漠然とあの紫の霧の正体が分かった気がした。

「アデル達を森へ誘い込む為の手紙を出した時には

すでに祠の制御は限界だったんですの。祠を破り一気に溢れ出した魔力は

外へ溢れ出してしまい一時的に消え森は結界を失った、という事ですわ」

やっぱりあの時ボクが見た紫の霧は噴出した魔力の塊だったんだ。

「でも」テリアちゃんは言葉を詰まらせてしまった。

「でも、溢れ出した魔力はばらばらに分散、消えたわけじゃないんですの。

今の所は森を包むように上空に停滞していますけど時間が経って

徐々に降りていく事になれば強すぎる魔力が森全体を蝕んでいくんですわ」

森の上空に停滞した濃い魔力は時間とともに徐々に森の中へと浸透していき

そこに住むあらゆる生き物を狂わせていく。ボクもその考えには納得した。



「こんなにわたくしが説明しましたのに。

それでも、それが自然の摂理なら受け入れるべきだと頑固ジジイが

全く話を聞かないものですから、ついつい飛び出してしまったんですの」

「えぇ!?お嬢、まじッスか、その話!?」ラガー君が頭を抱えて言う。

「そもそも影響が森の外へ出ていないとは限りません。

消えてしまった結界を戻す術はわかりませんし。ならばせめて

森のその上から更に強い結界で封印出来ないかと思ったんですの」

「にわかには信じられん話だが……。どうにも嘘をついてるとも思えん」

呟くおじ様の表情は暗い。本当ならこんな事、大陸を巻き込む大異変だもんね。

「結界で蓋をする、という話。確かにそれで一時は収まるかもしれん。

が。それでは問題が小さな祠から森全体に変わっただけだ。

時間の経過とともに更に強力になって噴き出してしまう事になる」

おじ様の話を聞き血の気の引いた顔のテリアちゃん。

「問題は魔力を出し続けるというその祠の中の何か。

これを解決せん事には堂々巡りだな」





 何か手がかりはないのか、と話すおじ様にテリアちゃんが

結界を張った魔術師の話を切り出した。おじ様の険しかった表情は

さらに固く、険しくなっていくのがわかった。

ボクがペンデールでブルティアの歴史を調べている時見つけた一冊の本。

その著者によると、とても重要で名誉な事を時のペンデール市長より

任されたと記されてた。でも肝心の内容については何もなくって。

今回の事できっとこの封印の事じゃないのかなって疑いを持った。

「も、もしかしたらですけど。ボクが見つけた本の著者がその人かもしれません」

「ウィル、お手柄ですわ!そうと分かれば今すぐにでもその方の所へ」

おじ様はいてもたってもいられないと言った風のテリアちゃんを

優しくなだめる。行動とは裏腹にその表情はなんともいえない苦みがあった。


「実はね。その本の著者を知っているんだよ」

ええ!?と、大声を出すボクとテリアちゃん。以前曇った表情のおじ様。

「結界や封印技術の研究において第一人者と言われる魔術師ケアロ氏。

彼とは学会で何度か顔を合わせた事がある。だが彼は……うぅむ」

押し黙ったまま考え込むおじ様を見て、こういう所はアデルとそっくり。

やっぱり親子なんだぁと変に感心してしまった。

「事が事だな。今紹介状を書いてあげよう、それで会えるかはわからんが……」





 とにかく、まずはその祠が何なのか知る必要が出て来たボク達は

ボクとテリアちゃん、ラガー君はケアロという魔術師に会いに行く事になった。

おじ様はその間、研究塔に何か資料がないか当たってくれる事になった。

おじさんが紹介状を手渡してくれる際ゆっくりと、諭すように話してくれた。

「彼は、彼の一族は特別な一族、らしい。らしいというの

その詳細が一切わからないのだ。だがペンデールから保護され……

いや、あれはもう軟禁といった方が近いか。とにかく彼に関する情報が全くない。

だから何か危険を感じるような事があったら迷わず逃げなさい」

ボク達はそりゃもうガクブルしながら

紹介状を手にケアロさんの居る住居区南地区へと足を運んだんだ。




******



 住居区の中でも一際自然の多い事で知られる南地区。

家屋通しの間隔も他の地区に比べかなり開いている。

ケアロ邸のある辺りも例に漏れず

さながら森に囲まれた怪しい屋敷といった雰囲気だった。

ウィルが恐る恐る呼び鈴を鳴らす。……出ない。

鳴らす。……出ない。さらに鳴らす。……も出ない。


 緊張からガチガチになっていたウィルにドッと疲れが出る。

あれ?住所間違えた?それともお留守かな?なんて考えていた。

それなら、と大きめの声で屋敷へ呼びかけようとした時だった。


 その『黒い物体』が屋敷の窓を割り外へ飛び出してきたのは。

突然の事に固まる三人。その黒い物体はもぞもぞと動くと、一気に伸び上がる。

まるで黒い塊がモチのようにニューッと伸びていくように見えた。

そこには2メートルは優に超えるだろう長身の男がいた。

ズタズタに引き裂かれた黒いローブを体中に巻きつけた恰好。

顔もその黒い布で覆われ表情を窺う事は出来ない。

そして、ウィルは気づいてしまった。


 その怪しい男が小脇に何か、何かを抱えている事に。

真っ赤な液体で濡れピクリとも動かないそれは人間のように見えた。

見るからに敵意むき出しのそいつはウィル達をしばらく眺めた後、

怪しい男は突然人とも獣とも言えぬ、おぞましい叫び声を発した。

あまりの事に動くことも出来ずに立ち尽くす。全身の身の毛がよだつ。

早々にノックダウンしたテリアをラガーが抱きかかえると

呆然とするウィルの肩を揺すり強めに叫んだ。

「ウィルさん!こいつヤバイッスよ!ここは一旦逃げま」

ラガーが全て言い終わらないうちに、その大きな体からは

想像もつかない俊敏な動きで黒ローブが腕を振るう。

手に巻きつけていた布がいつの間にかほどかれている。

そこにはなんと男の腕にびっしりと食い込む真っ黒な刺々しい鎖。


 その鎖がベリベリと嫌な音を立て男の腕から剥がれ落ちる。と

ラガー目掛けて、もの凄いスピードで向かってくるではないか。

「っ!?」すんでの所で身を躱すラガー。えぐり取られた地面が破壊力を物語る。

まるで生きているようにウネウネと男の周りを漂う鎖に気味悪さを覚える。



「おぉいっ、そこのお前達!無事か!?こいつはモンスターか!?」

ウィルが振り向くと先程の叫び声を聞きつけたであろう2人の衛兵が。

「人間、じゃない!?一体どこから入ってきたんだ……てっおい、おいあれ!」

衛兵の一人が黒ローブに抱えられた人を指差す。

「あれはまさか、ケアロ博士か!?」

「貴様、その方を誰だと思っている!今すぐその手を、離せぇ!」

衛兵の一人が勢いをつけ黒ローブへ手にしたヤリを突き立てた。

グッサリと腹部へと突き刺さるヤリを持つ衛兵の顔がどうもおかしい。

動揺してるというか、困惑した表情で黒ローブを見上げた、その時。



 衛兵の首が飛んだ。

なぎ払う黒ローブの手刀がまるで鋭利な刃物であるかのように

いとも簡単に衛兵の首をはね飛ばしたのだ。

これにはウィルも衛兵達も声にならない悲鳴をあげた。

なによりウィルにとっては初めて人が死ぬ瞬間を見たのだ。

こみ上げてくる感情と恐怖に体は立っていられなくなり

思わずしゃがみ込むとその場で嘔吐してしまった。

「ちょ、ウィルさん!しっかりしてくだせぇ、ウィルさん!」


その間も増援に駆けつけた衛兵達は為す術もなく

ぼろきれのように黒い鎖に弾きとばされていく。

必死に立ち上がりなんとかしなければ、とウィルは考えるのだが

目の前の惨劇に足がすくみ、動く事が出来ないでいた。

やがて衛兵達は全員血溜まりの中に沈み、次のターゲットへ

ゆっくりと向き直る黒ローブ。動きが途端に止まる。

急に体を曲げ苦しそうに身をよじる。


「ゴォォォゴオオオオゴオオオオオォォ!」

またあのおぞましい叫び声。でも今回のは何かが違った。

「っと、なんだこいつ、気持ち悪いな!」

そう、苦しみに悶えたような。そんな感じの叫び声だった。

ふと気づくと黒ローブの前にコマを二つ合わせたような奇妙なヤリを携えた男の姿が。

その槍は柄が異常に短く穂先が上下についていた。

そしてなにより驚くべきはその槍からはハッキリと見える程の

おびただしい量の魔力が放出されていた。

苦しみにもがきながらも次々と鎖を放つ黒ローブ。

男はそれを難なく払いのけていき、再び足の付け根部分へ一突き。

すばやく切り返し今度は黒ローブの胸へと深く槍を突き立てた。

「ゴオオオオォォオオォ!」


「ん?さっきも感じたが、やっぱりこの感触人間のものじゃねぇな」

更に追撃をしようとヤリを引き抜く。

その一瞬をつき、大きく後方へ飛び退く黒ローブ。顔に巻きつけた布を荒々しく脱ぎ捨てたかと思うと傍らに抱えていたケアロをあっという間に丸飲みにしてしまった。

その光景にア然としたウィル達の見た黒ローブの素顔とは。


耳の当たりまで裂けた口があるだけの、のっぺらぼう。その額には何かの札のようなものが張り付いている。

肌はヒビ割れ、さながら乾ききった土のようだ。

顔にへばり付いた紙を凝視するウィル。

「これゴ、ゴーレムだよ!こんな大きなのが動いてるのを見たのは初めてだけど!」

「ウィルさん、今のうちッス!ここはあの人間に任せて行くッスよ!」ウィルを軽々と肩に担ぐラガー。じたばたと暴れるウィルが叫ぶ。

「あれ、あれ見てっ なんか様子がおかしいよ!」

ゴーレムは膝を折り、うずくまるような姿勢を見せたかと思うと

ズズズ……と地面へ溶けていってしまった。その腹に博士を入れたまま。



「ちっ。逃がしちまった。あんたら大丈夫か?とにかく、この事を知らせないと。あの喰われた人の詳細わかるか?」

「う、うん。怪我とかは全然。あの人は多分この家のケアロっていう魔術師さんだt」

「え、…ケアロおおおお!?おいおいおいおい、マジかよ!」

男は頭を搔きむしり立ったり座ったりと忙しい。ひとしきり悶えた後、力無く声を出す。

「俺、そのジーサンに用事があってペンデールまで来たってのに、マジかよ」

男の名前はスライ。サリアギルドに所属する冒険家だと名乗った。



******



「その後ボクらは異常を察知した衛士団に連れられてギルドに保護されたんだぁ」

「んで、スライはケアロさんになんの用事があったんだ?」

「マネージャーがな。ケアロ氏を城まで連れて来るように、って依頼出してきてな」

「マネージャー??」ウィルとハモる。

「あーそっか。えぇと、まず、うちのギルド、サリアギルドにはリーダーとは別に

ギルドマネージャーって呼ばれてる城から来た奴がいて、こいつがギルドの管理と運営を一手に担ってるんだが」

普通どこのギルドもそこのリーダーがそういう管理をするもんだと思ってたが。



「まぁそんなこんなんで事情をギルドで説明してたんだが

その時に緊急の伝令が飛び込んできたんだ。今度は住居区にて黒ローブの不審者が民家を襲ってるってな」

急遽ギルドの数名を引き連れて駆けつけたスライ達が見たものは。

至るところで火の手があがる住居区だった。


「えっ!?燃やされたのって、俺んちだけじゃなかったのか?」

夢中で走り抜けたせいか周りの家々の様子に全然気付いてなかった。

「犯人は全部で3人いたわけなんだが、すばしっこい連中でな。俺達だけじゃ追い払う事だけで精一杯だったんだ」

犯人の狙いが何だったのか。未だよくわかっていないらしい。

なんとか被害を食い止める為に衛兵団と協力し、うち1人を捕まえる事に成功。それを見た残りの2人はあっという間に逃げてしまったらしい。




「そんで、取っ捕まえた奴を引っぺがして見たら、こいつも案の定ゴーレムだった」

そういってスライは懐から紙を取り出す。

「ゴーレムを操るためのアンテナ、術札っていうらしい」

「そうか、それであの時、火を嫌がったのか」

「信じられない話だけど。

ボクらがブルティアで見た黒ローブの人達。それが全部ゴーレムだったとしたらマズイ事だよぉ」

ウィルがスライの持つ紙をまじまじと見ながら言う。

「うん。やっぱりケアロさんを襲ったゴーレムも同じものだ。

つまり、あれ全部を動かしてる人がいる……?少なくとも三体を同時に動かすような」



「なぁ、何がマズイんだ?俺にはピンとこねぇんだけど」

「そうだね。わかりやすく言うとゴーレムっていうのはまず組み上げる事がもう難しくって」

ウィルはポケットからメモ帳とペン数本を取り出し床に置くと

「まず均等に魔力を流し込むの。それで魔力を糸みたいに全体に張り巡らせ、てぇ」

メモが浮かび上がりペンがそれぞれ腕と足の位置にくっついた。


「これでゴーレムとしての器が完成」

ウィルが別のメモから一枚破り取ると、スラスラと模様を書いていく。書き終えたのかそれをメモゴーレムの上、頭の位置に乗せた。

「ううぅ~、いくよー?」

ピリッと音がしたかと思うとカタカタと音を立て

「おおお~!」

メモゴーレムが一歩を踏み、出さなかった。

一瞬ガクンガクン揺れながら歩き出したかに見えたがそのまま空中でバラバラになっちまった。


「……ふぅ。ボクの魔力じゃこの程度だけ。

かなり高い魔力の先生でも組み上げて歩かせるくらいなら出来ても

実用的なものは一体動かせるかどうかだって言ってた」

見るとかなり消耗した様子のウィル。これを、何体も、しかも人くらいの大きさで。

「なんか、途方も無い話だな……犯人は人じゃないってか?」

「いや、そうとも限らん。俺に心当たりがある」スライが神妙な面持ちで続ける。


「サリア最高の魔術師。ニーナならあるいは……」

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