表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自己チュークエスト!  作者: くもいひも
10/24

自己チューと狐?の冒険10



 町中を走って走って、走りまくった。

一目散に俺の家を目指し走る。

冒険家としてここを出るまで、感じた事のない空気。

ここまで殺伐とした町の空気は初めてだ。

サリーとモグは先に研究塔へ向かう事になった。

二人とも危険だからとついて来たがったが本来

サリーの症状を見るために急いで帰って来たんだ。

それこそ本末転倒だろ?と納得出来ないといった顔で唸るサリーを

半ば強引にモグに引きずられる形で連れて行ってもらった。



 コネで入れてもらった俺達だが。

こう言っちゃなんだが、普段ペンデールの警備は

そりゃもう尋常じゃないくらい厳しい。通行許可がない者は

例え有名な資産家だろうと、王族だろうと外からの来客は入れねぇようになってる。

何も問題が無かった訳じゃなく今までも町の外で軽いいざこざがあった事もある。

でも恐らく第三者が起こした暴動ってのはペンデールでは初なんじゃねぇか。

「はぁっ、はっ。 ふう、ひでえなこりゃ」

まだ完全には疲れのとれてない体での全力疾走。こりゃ堪えるな。

それでも見えてきた実家の屋根を目指し、走る足は止めない。




 白バラのレリーフをあしらった門は、今や跡形もなかった。

親父が手入れしていた庭園もグチャグチャに潰されていて見る陰もない。

家は焼け焦げ、壁は崩れてしまっておりボロボロの客間がまる見えだ。

二階にあった親父の書斎は完全に跡形もなくなってしまってる。

これ1日、たった1日だぜ?実家は廃墟寸前の状態になっていた。

「そのお姿、……アデル様ぁ!ご無事でしたかっ!」

中庭の方からひょっこりと顔を出すバーグ。

その顔は俺を見るなり泣き崩れんばかりにくしゃくしゃに歪んだ。


「おおお、バーグ!無事か!」

「皆無事でございます!アデル様こそ、よくぞご無事で」

バーグの言葉に一気に足の力が抜けるような脱力感を覚えた。

そうか。親父もテリアも。ウィルもラガー君も……皆無事か、良かった。

「これは一体全体何があったんだ、それで皆どこにいるんだ?」

「何があったかについては後程お話致しましょう。

皆様ですが旦那様は研究塔へ行ってらっしゃいます。

テリア様、ラガー様はウィル様がペンデールギルドへお連れになりました。

現在ギルドは保護された住民でいっぱいだと聞いております。

私は旦那様の仰せで屋敷にある物を探しておりました。

見つけ次第私もギルドへ合流させて頂きます」

「そうかわかった。俺も今から向かうわ」

「どうぞお気をつけて。賊は今だ、捕まっておらんようですから」




******




いつもは騒がしい事もない、どちらかというと物静かな印象のペンデールギルド。

エントランスを抜けるとそのイメージを打ち破るように慌ただしく動き回る冒険家達。

受付に押し寄せる人々の対応で大忙しといった様子が見て取れた。

あまりの騒然とした様子に入口で唖然としていると横から急に声をかけられた。


「アデルさん~!無事でしたか!」

振り向くと懐かしい顔。同じ冒険家訓練校で汗水垂らした同期のコルトアだった。

「コルトア!久しぶりだな。元気してたか?」

「うんうん、オイラはいつも元気dって今そんな話してる場合じゃないでしょ!」

盛大なツッコミがくる。何を隠そう俺とクラウドのツッコミはこいつから学んだもんだ。

「俺の連れが来てるだろ?どこにいるか教えてく」

「アデル・ノート。何故ここに……?」


背中から投げ掛けられた冷たい言葉の氷の刃。

抑揚がないっつーか、このあまりにも無感情な声は、まさか……

「パ、パンパーバからお戻りになられていたんですね!」

コルトアが萎縮しながらも声を掛ける。

「ペンデールの一大事です。当然でしょう」

「そ、その節はご迷惑をおかけしました。ドレイクさん」

振り向きながら、なるべく目を合わせないようにして言う。


大都市ペンデールギルドを束ねる冷静沈着にして冷酷な事で有名なギルドリーダー。

焦げ茶色の短髪を逆立て固めた髪に剃り落とした眉毛。切れ長の三白眼。

そしてこの高身長。相変わらずギルド入口の天井に頭がつきそうなくらいだ。


「今は緊急事態です。挨拶は抜きにしましょう」

その、冷や水でも含んでんのかってくらい低く冷たい声で言う。

「リーダー!?いらしてたんですかっ!

今パンパーバに書簡をお送りしようとしていた所でした!

ギルメさんが今緊急の対策会議を開く為に奥の会議室に」

「それでは道すがら出来るだけ詳しい状況を説明して下さい」

と、足早に歩きだしたかと思うと急に立ち止まる。

「そうそう。用件が済み次第、あなたはここを離れなさい。いいですね」

それだけを言うとギルドの奥へと消えて行った。


「ぷふぅっ」強張った体が解放され一気に息を吐く。

まるで水の中にいたみたいに汗びっしょりだ。

呼吸も出来ねぇ、あの威圧感。こえええ。

正直すぐに追い出されるんじゃないかと覚悟してたんだが。

流石に混乱した今の状態では多めに見てくれるらしい。

「フゥゥ……」長いため息が聴こえ隣を見ると

俺と同じくらい疲弊した様子のコルトアと目が合った。

「あの威圧感は卑怯ですよねぇ」二人して自然と苦笑いが出た。




「アデル!アデル!うわあああああ、アデルううう!」

絶叫とも悲鳴とも似つかぬ声を出しながらこっちへ走って来る。

バッ!と手を突き出し飛び上がったのを見てスッと横にずれてやった。


 ビターン!


「ううぇ、なんで避けるのぉ!?ひどいよアデル……」

ヨロヨロと立ち上がるウィル。うん。

あんなキラキラと光る涙鼻水よだれコンボのウィルを受け止める勇気はねぇ。

ギルド受付から移動した俺達は冒険家達の寮のある住居スペースに来ていた。

全くの等間隔に並んだ扉の一つをコルトアが開けながら中へ誘う。

「今は誰も使ってない来客用の部屋だから、安心して中入って」

促されるまま入ると、中にはテリア、ラガー君、モグ、……誰????

知った顔の中に全く知らない若い男。まさにマッチョマンて風体。

ピッチリとした黒光りするノースリーブ型の革服にヒョウ柄の腰巻が目立つ。

途中までオールバックにした髪は後ろに流すだけでまとめてはいないようだ。


「アデル!どこまで行ってたんですの!?

あなたが居ない間わたくし達大変だったんですのよ!」やら。

「アデル、こちらはボク達を助けてくれたスライ君だよぉ」やら。

「うおおーん!アデルさん!無事だったんスね、良かったッス!」だの。

「お、お兄ちゃん!、ウルフマン!ウルフマンとか初めてみたばい!?都会はすごかね!」

もう皆一斉に喋るもんだから意味がわからねぇ!俺は聖人じゃねっつの。


「ま、まぁ落ち着いて皆さん!一辺に喋っちゃ全然わかりませから!ね?」

シーッと人差し指を口に当てコルトアは一面々に言い聞かせる。

ほんとここがアシカ亭だったなら今頃全員沈んでるぞ。



******



 事は思うより深刻だった。研究塔に着いたモグは

ギルドにテリア達の保護を求める為に訪れた親父に出くわし

そのままサリーは親父に連れられ研究塔の医療機関へ。

モグは俺の帰りを待つ為に親父の推薦状を持ってギルドへ行く事にした。

サリーの事だが本人は元気そうに見えていたがかなり無理をしていたらしく。

石化の症状は和らいでいるものの無理に動いたせいで多少悪化し

完全な解毒には最低でも一週間はかかるだろうって事だそうだ。

ましてやゴブリン達の血清が無かったら命は無かっただろうと言われたらしい。

と、ここまで大人しくモグの話しを聞いていた若い男は驚き戸惑っていた。

「サリーの姐さんがそんな危険に!?くっ……近くにいながら、なんて失態!」

と床に拳を落とす。


「助かったからいいものを、なんでそんな事に!」

とギリギリと激しい歯ぎしりと共に俺を睨みつけてくる。

「待ってよスライ君。ボク達は君達程強くは無いんだ。

アデルだって精一杯戦ったんだよ。わかるでしょう?」と

まるで母親が子供を諭すように言う。

その言葉に我に返ったのか今度は深々と頭を下げだす始末。

ん、スライ? すらい……って誰だっけ。なんか聞き覚えがあんな。

「!お兄ちゃんもお姉ちゃんも命掛けで僕ば守ってくれた!

お姉ちゃんも言いよったもん、お兄ちゃんは真面目にやれば

まあまあ出来るって!ボクもそげん思う!!」

モグよフォローは嬉しい。

嬉しいんだがそれは遠回しな、お前ちゃんとしろ。って事か?


スライは顔を上げると気合を入れるようにパンパン!と強く自分の頬を叩き

「よく事情も知らず、頭に血が上っちまった俺が一番悪い!

話の腰を折ってしまって申し訳ない。悪かった」

と今度は全員に向けて深々と頭を下げた。くそ真面目な好青年じゃねぇか。




******



「黒ローブ、ってあの?あの黒ローブ……!?」

俺の話しを一通り聞き終わったテリアが身を震わせながらぽつりと漏らした。

「ほぼ同時に……って事になるのかなぁ」

ぽつりと呟くウィル。表情は険しく心なしか少し震えているように見える。

「実はねぇ。ペンデールを襲った犯人の一人を、ボク達見てるんだ。

巨体で、すごい威力をもった鎖を操る真っ黒なローブに身を包んだ犯人を」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ