敵の敵は味方
わたしは、伝説のエルブンボウで一撃必殺の皇帝暗殺計画を話した。喜んで話に乗ってくれると思いきや、反応は芳しいものではなかった。
ガイウスは難しい顔をして、
「うまくいけばいいけど、失敗すれば、どういうことになるかな。それに、魔法アカデミーの魔法使いが上空から見張っているなら、巧妙に偽装するか、完全に視界外から狙わなければならないだろうし、あなたが随行員と暗殺者の一人二役を演じなければならないとなると、うまいトリックを考えないといけないし……」
「だから、あなたたちダーク・エルフの力を借りに来たのよ」
ガイウスは腕を組み、しばらく考えると、
「そもそも、どうしてあなたが皇帝の暗殺を企てるのか? その辺り、納得のいく説明がほしいものだが……」
「『どうして』と言われてもね」
有り体に言えば、ふと思いついただけで、わたしには皇帝を暗殺しなければならない理由も必然性もないのだ。
「大丈夫だよ。この人は信用できるから。ボクが保障するよ」
プチドラはトンと小さな胸を叩いた。しかしガイウスは「う~ん」と首をひねるばかり。知り合ってからあまり時間がたっていないということもある。わたしはさほど信頼(あるいは信用)されていないようだ。
わたしは少々時間を置き、
「暗殺の理由が必要なら、説明しましょう。要するに、皇帝を暗殺すれば、わたし個人の利益につながるからよ」
「どういうことかな。もう少し、具体的に願えないか?」
「暗殺が成功すれば、スキャンダルどころの騒ぎじゃ済まないわ。きっと、警備の責任者のドラゴニア候や帝国宰相は失脚する。あいつら、嫌いだし……」
「しかし、彼らはあなたの『仲間』ではないのか? 仲間同士で憎み合い、足を引っ張り合うとは……」
仲間同士のつながりの強いエルフには、例えば「出世競争でライバルを蹴落とす」みたいな、わたしたちの世界で日常的によくある話は理解しがたいのだろう。
「あいつらは『仲間』じゃないわ。『敵』よ。タダの敵じゃない。『仇敵』と言っていいかもね。そして、その敵の敵が、あなたたち、ダーク・エルフ。だから手を組みましょうという、単純な理屈なんだけど……」
「なんと、まあ……」
ガイウスは、あきれ顔でわたしを見つめた。
プチドラはガイウスの決意を促すべく、畳みかけるように、
「いずれにせよ、結論を早く出してもらわないと。時間的に余裕があるわけでもないんだから。ただ、ボクから言わせてもらうと、暗殺がうまくいって帝国に混乱が発生すれば、『すべてのエルフの母』を救出することにもつながるかもしれない」
ガイウスはしばらく考えた末、クラウディアを横目でちらりと見つつ、
「分かった。隻眼の黒龍がこうまで言うのなら、協力しよう。ただし、仲間全員を危険にさらすわけにはいかない。協力は、今ここにいる者だけで行うこととしたい」
クラウディアは、同意という意味だろう、無言でうなずいた。




