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ザ☆旅行記Ⅴ ダーク・エルフ  作者: 小宮登志子
第4章 真実の歴史
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真の帝国成立史3

 ヒューマンの反撃が始まった。それは、魔力の弱い子供や赤ん坊のエルフを人質に取って要求を突きつけるという、極めて卑劣な戦略だった。しかし、心が優しすぎるエルフには、その要求をはねつけることができない。のみならず、エルフが抵抗できないのを見ると、これまで鬱積していたヒューマンの不平不満が一気に爆発した。もともとの要求は富の再分配制度の見直しや政治的権力の獲得だったが、それらは既に問題ではなくなっていた。この機会に積年のうらみつらみを晴らしてやろうという、生命にとって最も根源的な感情、すなわち復讐感情が、ヒューマンの心を隅々まで支配していた。

 ヒューマンは、エルフが手を出せないのをいいことに、暴行や略奪や虐殺や陵辱を繰り返した。エルフは、「自分がどんなひどい目に遭わされても、仲間の命を助けてくれるならば」と、一切の抵抗をしない。こうして、わずかの間に多くのエルフが命を落とした。ところが、受難はこれだけではなかった。ドワーフやオークなど、他の種族もヒューマンの側に勝手に参加し、ヒューマンと同じことを始めた。

 もともと、ヒューマノイドのうちで魔法を使えるのはエルフだけだった。現在、ヒューマンやオークでも魔法を使える者がいるのは、暴行・陵辱されたエルフから生まれた子供をヒューマンやオークが引き取って育てたからである。すなわち、エルフの「魔法使い遺伝子」が、この時に他の種族にばら撒かれたのだ。


 このような蛮行に対し、エルフは当初、黙って耐えるばかりだった。しかし、いつしか我慢も限界を迎え、エルフの中には、積極的にヒューマンに反撃を行うグループも現れるようになった。そのグループは「ダーク・エルフ」と呼ばれた。ダーク・エルフの怒りはすさまじく、たった一人のダーク・エルフによって、ヒューマンの大部隊が壊滅させられることもあった。

 ダーク・エルフの出現にヒューマンは慌てた。本来、正面から戦って勝てる相手ではない。人質作戦が通用しなくなれば、敗北は火を見るよりも明らかだ。「これまでエルフにしてきたことが、今度は自分たちに……」、ヒューマンはダーク・エルフの復讐に恐れおののいた。


 しかし、頭は帽子を乗っけるためだけにあるのではない。ヒューマンの中には悪知恵に長けた者がいて、またしても秘策を編み出した。ヒューマンはエルフに和解を呼びかけた。条件は、①ヒューマンとエルフは、これまでのことを水に流して和解する、②子供や赤ん坊の人質を全員解放するが、和解の証として、エルフのうちで最も高貴で代表的地位を占める者一人が、代わりに人質となる、③エルフはダーク・エルフを取り締まる、という、ヒューマンにとって都合のよいものだった。

 疲弊し、数も激減していたエルフは、これ以上の流血を望まなかった。エルフはこの不利な条件を呑み、ヒューマンと和平協定を結んだ。そして、「すべてのエルフの母」と呼ばれるエルフの最高指導者が人質となり、特別の施設の中に厳重に封じられた。その施設は、現在で言うところの魔法アカデミーの塔。「すべてのエルフの母」は、今も、外界から一切遮断された塔の最下層、カギ(魔法のカギも含む)を何重にもかけられた小部屋から、仲間の安全を祈り続けている。

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