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ザ☆旅行記Ⅴ ダーク・エルフ  作者: 小宮登志子
第4章 真実の歴史
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危うし神がかり行者

 帝国建国500年祭まで残すところは数日となった。エルフの王、ドワーフの王、トカゲ王国の「王」など、要人も次々と来訪し、帝都には厳戒態勢がしかれている。

 非常に有力な大貴族の場合、そのような要人を私的に賓客として迎え、晩餐会を開くことが一種のステータス。本来わたしには縁のない話だけど、ツンドラ候の開催する「トカゲ王国御一行様歓迎会」に「ツンドラ侯の無二の親友でありよき理解者」の資格で招かれ(引っ張り込まれ)たため、宴で調子に乗りすぎたツンドラ候を抑える役回りになってしまった。

 それはさておき、検問を強行突破した件については、予想に反し、追及はなかった。ドラゴニア候は全体的な帝都警備計画の策定・実施に手が一杯とやらで、それどころではなさそうだ。帝国宰相と宮殿の廊下ですれ違った時、「風の便りで聞いたのだが」という前置きで、極めて簡単な質問を受けただけだった。

「ウェルシー伯よ、ドラゴニア候の警備兵との間でトラブルがあったとか……」

「ありました。『ドラゴニア候』の言葉の響きを耳に入れることさえ、今のわたしには、耐え難い苦痛なのです」

 帝国宰相は苦笑していたが、感じとしては、わたしが危険人物としてマークされていることはなさそうだ。でも、用心は怠らないようにしなければ。


 その日も例によって、帰りは一旦公園に向かう。目当てはもちろん、神がかり行者。

 プチドラは呆れ顔で、

「マスターも物好きだねえ。そんなに面白いの?」

「まあね。でも、どこが面白いかと言われると難しいわ。甲高い声で派手なアクションを交えて意味不明な話をされると、理由も理屈もいらないけど、とにかく面白いとしか、言い様がないわ」

 なお、誰とは言わないが、ヘタな漫才よりも面白い政見放送で、視聴者を笑わせてくれる人は多い。

 やがて、馬車は公園の入り口に差し掛かった。プチドラを抱いて馬車を降りようとすると、

「このバカモノども! いつか必ず後悔するであろう!! 偽りの海の中で溺死するがいい!!!」

「ハハハハハ! 何を言ってやがる、この基地外め!!」

 ちょっとした事件だろうか。神がかり行者の声に混じって、数人の若い男の声が聞こえる。急いで声のする方に行ってみると、

「耳あるものは聴け! しかし私は欄干ではない!! キサマらみんな、ウソ偽りの大海に沈め!!!」

「この、クソジジィ! さっきから、わけの分からんことを!! うざいんだよ!!!」

 神がかり行者は数人の警備兵に取り囲まれ、どういう経緯かは知らないが、ボコボコにされている最中だった。人々は、見て見ぬフリを決め込んでいる。

 別に助けてやる義理はないが、相手がドラゴニア候の騎士団(の下っ端)なら話は別だ。警備兵相手に悶着を起こしてやろう。「ウェルシー伯とドラゴニア候が不仲で、事あるごとに衝突を繰り返す」という印象を世間に与えておけば、多少は、先日の一件のカムフラージュになるだろう。

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