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ザ☆旅行記Ⅴ ダーク・エルフ  作者: 小宮登志子
第2章 帝国建国500年祭
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実行委員の代理

 わたしが帝国建国500年祭実行委員の代理人を引き受けると、ツンドラ候は大喜びし、巨体を揺らせてダッシュで自分の館まで帰っていった。

 侯爵を見送りながら、プチドラは、

「こんなこと引き受けて、いいのかな……」

「さあ…… でも、本人から直々に頼まれたんだから」

 ただ、通常は、実行委員会のメンバー資格が代理になじむものとは考えられない。体調が悪いからといって、その日だけ、仕事を友人(事業主や職場の上司にとっては赤の他人)に代わってもらうことが有り得ないように。ところが、この世界では、あまり固いことは言わないようだ。貴族の間での約束は神聖であり、基本的には強行法規違反でない限り尊重され、単なる口約束でも名誉をかけて誠実に実行するのが絶対の不文律らしい。

 次の日に打合せのため屋敷にやってきたニューバーグ男爵も、

「大事な仕事を他人任せにするとは困ったものだが、侯爵がお決めになったことなのでな。迷惑な話だとは思うが、よろしくお願いしたい。帝国建国500年祭実行委員会というものは、すなわち……」

 と、渋い顔をしながらも、両手に抱えきれないくらいの資料を示し、説明を始めた。


 話によると、今年は帝国建国500年目に当たり、初代皇帝や歴代皇帝の偉業を讃えるとともに、帝国永遠の繁栄を祈念するため、帝国を挙げて建国500年祭が行われることとなっていて、具体的には、現皇帝が帝都郊外にある歴代皇帝の廟で儀式を執り行うとともに、宮殿で大々的にパーティーが催され、これには帝国の諸侯だけではなく、ドワーフの王やエルフの王、さらにはトカゲ王国の「王」なども出席するとのこと。歴代皇帝の廟での儀式など祭祀一般は、本来は帝国の神祇省の所管であるが、今回は500年という節目の年となるため、帝国宰相を委員長とし、神祇省長官及び基本的に侯爵以上の者を構成員とする帝国建国500年祭実行委員会が組織され、ツンドラ候は儀式の企画立案担当として委員に選任されたという。

 前回の実行委員会では、ツンドラ候が企画案(実質、ニューバーグ男爵作成)を提示し、簡単なやりとりが行われたが、本格的な討議は次回(明後日)の実行委員会で行われるとのこと。


「資料は置いていきますから、よく勉強していただきたい。よろしくお願いいたしますぞ」

 代わったばかりでそんなこと言われても…… 今更引き受けたことを、ちょっぴり、いや、かなり後悔。

 ニューバーグ男爵は、さらに、付け加えて、

「やんごとなき方々が委員として出席されるので、あえて言わせていただきたいのだが、くれぐれも粗相のないように。もしもの場合、代理をお願いした手前、帝国成立以来の栄誉と伝統ある侯爵家の一大事になりかねないので……」

 ちなみに男爵によれば、ツンドラ候の御先祖は初代皇帝に従い各地を転戦した英雄で、戦いでは一度も負けたことがない戦上手だったそうだ。御先祖はその功により、北方の広大な領地を賜ったとのこと。男爵の御先祖は、その頃から侯爵に仕えていたらしい。

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