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近い彼方  作者: 三角テトラ
3/5

始まりはいつの間にか 3

どうしてこうなった…??


そんな言葉しか出てこなかった。

今の俺の目の前には鉄柵があり、手には薄い毛布と、これまたどこかの寂れた

昭和の香りがする温泉宿の一番安い宿に泊まったときに目にしそうな枕が一つ。

それだけを持って口をポカンと開けたまま俺を留置場に放り込んだ警官を見ていた。


「悪いが身元がはっきりしないうえに免許証の偽造の疑いがあるんだ、

 ここでしばらく泊まることになると思っておいてくれ」


「いや、ちょっと、まって下さいよ!!」


ここでしばらく泊まるってどういうことだよ? 

そんなのは全身全霊で拒否するわ!!


そんな俺に警官は苦笑いしつつも目だけは厳しく向けた。


「今晩よく考えて明日の取り調べの時に正直に言えば楽になるぞ」


「ちょっと、俺はウソなんか言ってないっすよ!! ちょっと、まって下さいよ!!」


俺に背を向けて歩いて行く警官にむかって何度も声をかけるが、

その背中はついに立ち止まらなかった。


ハァ~~~、どーすんだよ??

留置場に入れられたぞ、マジどーすんだよ? 俺、何かしたか??


頭を抱えるとはまさにこの事だろう。


明日からの仕事はどーすんだよ? 無断欠勤になるぞ? 

てか、警察に捕まってるから普通に考えたらクビだよな??

それよりも実家に電話が繋がらないってなんだよ、それに友達のマンションが神社って?

光文? そんな年号マジ知らないよ…なんだよ、あのナンバープレートや信号?

ナンバープレート…??


あぁ、俺の車まさか、あの場所に置いたままじゃないだろうな?

勘弁してくれよー、中古だけど買ったばっかなんだぞ……

いや、キーもたしか没収されたから警察署にもってきてるだろうな…

車検書とか調べるっぽいし……


毛布と枕を抱えたまま突っ立っている俺の頭の中はこの数時間の間に

おこったことでグチャグチャになっている。

ようは疑問点ばかりでてきて何もまとまらないのだ。


「よう、兄ちゃんw」


そんな俺の背後からやけに軽い声が聞こえてきた。


「兄ちゃん、兄ちゃんwちょっと兄ちゃん言うてるやんかw」


恐る恐る振り返ると、そこには先客がいた。


「兄ちゃんは何して捕まったんや?」


「何もしてません、俺は無実です!!」


「はっはっはっは~、そりゃええw 無実で捕まったんか?」


「そうですけど…」


「せやけど、さっきは免許証の偽造とか言うてはったやんw」


「それは間違いです」


「そうか?」


「そうです…」


「まぁええ、そーやったら無実って思っとくわw」


「あ、ありがとうございます」


なにやらベタな関西弁で話しかけてくる前歯が2本ほどない50代半ばと思われる

男は俺にニカッと笑いながら隣に座るよう手招きした。


「兄ちゃんも無実、ワシもホンマは無実で捕まってんw」


「それは本当ですか?」


「あぁ、ホンマやで、ちょっと電車の中で女子高生に当たっただけで

 こんな所に入れられてん…難儀なことやろ?」


「え??」


「この右手がおしりに当たっただけやで? 無実やw、ワシも

 兄ちゃんも無実や、同じ仲間やな~」


ちげーーよ!! それただの痴漢じゃないか!! 勝手に痴漢の仲間にすんなよ!!


「おっ、どーしたんや兄ちゃん。なんか不服を申し立てる!!みたいな顔しとるで?」


「申し立てますよ!!」


「ええで、言うてみ?」


「いいですか、俺はですねーー」


津乃峰が痴漢男と留置場で実りのない話をしている時、内川は机の上で

4日前に死んだ津乃峰 修の写真を見ていた。

その表情は困惑を通り越して今はやや青くなっている。


それもそのはず、つい4日前に死んだ津乃峰の指紋がいま留置場に入っている

津乃峰と一致したのだ。

死んだはずの人間が今この警察署にある留置場にいる。

それも見たことのない所持品と共にだ。


見たことのない所持品とはスマホであり、巧妙に作られたであろう免許証であり、

またはサイフの中身なのだ。

白い手袋をした鑑識官がそんなサイフからお札を取り出すと珍しそうに

1000円札を電灯にかざして見ている。


「これ、1000円ですよね? 肖像画は野口英世か…しっかしよく出来てますねー」


「たしかにな、札の大きさといい、紙質といい、本物とそっくりだ」


「ただ坂本龍馬じゃないからすぐに偽札ってバレるところがなんとも言えないけどな」


それは本当に偽札なのだろうか?


そんなはずはない!! そんなバカな話があるか!!


不意に内川の頭によぎった疑問を自身で振り払うように頭を振ると、

冷めたコーヒーを口に運んだ。





題名から(仮)を無くしました。続きはボチボチ考えます

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