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近い彼方  作者: 三角テトラ
2/5

始まりはいつの間にか 2

やっと話が進んだようで進んでないかも?

そこはよくTVで見る場所だった。

4畳半か5畳程度の殺風景な部屋には安物じみた灰色の机にパイプ椅子。

そのまま刑事ドラマなどのロケにピッタリな場所。

それもそうだ、ここは警察署の取調室なのだから。


俺の目の前には所持品というべき物が並べられている。

ラッキーストライクにライター、サイフ、それにスマホだ。

それを前に俺を連行してきた警官は何度も同じ質問を繰り返す。


「で、名前は津乃峰 修でいいんだな?」


「はい」


「もう一度聞くが、生年月日は?」


「1991年、平成3年4月15日ですよ」


俺の答えに、はぁ~~と短いため息をついた警官は3度目の同じ言葉を口にする。


「だから、平成なんて年号は無いんだよ、マジメに答えないと拘束することになるよ?」


拘束することになるよって言われても今の俺は拘束されてるじゃないか…


そう思いつつも口に出さずにただ何度もおなじ質問をしてくる警官に多少は飽々していた。


「では、住所はこの免許証みたいなのに書かれているので合っているんだな?」


「えぇ、合ってますよ。てか、さっき教えた実家の電話番号に電話したら親が

 出るからそれで俺の身元はわかるでしょ?」


「今確かめている最中だ。しかし、よくこんな免許証を作ったもんだな? 

 何に使う気だったんだ?えぇ?」


「何に使う気って、そりゃ~車の運転とか身分証明書代わりしかないでしょ」


「これだと身分証明書の代わりにはならないなw」


あ、この警官、鼻で笑ったな。たしかに今、鼻で笑った!!

ムカつくなーーーーー


「だから、この免許証はあんたら警察が発行したもんだろ?」


警官の態度にやや腹がたった俺は少し椅子から腰を浮かし気味に言う。

そんな俺に警官は「なんだ!!」と言わんばかりの厳しい目線を送ってきた。

重苦しい空気がただよう取調室のドアが2度ほどノックされると

別の警官が顔を見せる。


「えーー、津乃峰 修くんだったかな?」


「そうですけど」


「さっき君から聞いた電話番号に電話をしたが、現在使われておりません、だとよ」


「はぁ??」


「電話番号は◯◯◯ー☓☓☓☓ー◯◯◯◯で合ってるんだな?」


「えぇ、それですけど…てか、そっちがかけ間違いしたんじゃないですか?」


「それはない、4回もかけ直したからな。それにそこまで言うなら自分の

 携帯とかもってないのか? 持ってたらそれでかけてもいいぞ」


「じゃ、自分の携帯でかけますよ」


そう言うと俺はテーブルに置かれたスマホを手にする。

そんな俺を見ていた警官がポツリと独り言のような小声を発した。


「それ携帯だったのか? 何かのゲーム機だと思っていたわ…」


スマホを知らないなんて何かの冗談だろ? いくら60近い年齢かもだけど

警官がスマホをゲーム機と間違えるなんてマジでヤバイだろ……


使い慣れた手つきでスマホを操作する。

そんな俺の指の動きとスマホの画面を2名の警官は食い入るように見ていた。


さっきのおっさん警官は60過ぎっぽい爺さんだけど、この警官はどう見ても俺より

10才くらいしか変わらないけど、そんなに俺のスマホが珍しいのか?

別に最新型ってわけじゃないのに……


警官に見つめられながらの操作はどうも気持ちのいいものじゃない。

だけど今は自分の身元を証明してくれる実家に連絡するのが先決だ。


「えっ・・??」


実家に電話をした俺の耳には無機質なアナウンスの声が聞こえるだけだった。

 

そんなバカな?? なにこれ??


俺は二度三度とかけ直してみるが帰ってくるのは感情のこもっていない声だけ。

そっと通話を切ると、しばらくスマホの画面に目を落とすだけ。

そんな俺の姿を訝しげに見ていた警官は小さくフンと鼻で息をはくと、

少しだけ顔を近づけた。


「どうだ?かかったか? かからなかっただろ…」


力の抜けた俺はただコクっと頭を揺らして声に答える。

しばらく沈黙じみた時間が流れるが、それも10秒たらずで破られる。

新たな警官がドアをノックしたからだ。


「ちょっと、内川さんいいですか?」


開いたドアから顔だけ覗かせた若い警官は内川と呼ばれた、さきほどの

60近い警官にむかって小さく手招きしている。


「よいしょ…」


そう言うと内川と呼ばれた警官は歳のためなのか、腰に手をそえて椅子から立ち上がる。

そしてドアの向こうに背中だけ見せて立っていた。

おそらく何やら小声で話しているようである。


何を話しているのか?そんなのは今の俺には関係ない、とにかく電話が実家につながらないのだ。

どうなっているんだよ? 実家がダメなら友達しかない。

そう思い友人の電話番号を画面に出すと、パトカーの中でみた光景が頭をよぎる。


友達の住んでいたマンションが消え、代わりに見たことない

神社がそこにたっていた光景が。

友達に電話するか?

そう考えている時、若い警官が内川の耳もとでやや困惑した表情を作っていた。


「あの人の免許証?ですかね?よくできた偽物の免許証、あの住所を

 あたってみたんですよ、たしかに住所は存在してるのですけど、

 津乃峰という人は住んでないですね」


「そりゃ~そうだろうw あの免許証は偽物だからなw」


「いや、それがですね、一応、名前。津乃峰 修で調べてみたら…」


「ん?どうだった? その名前も偽物だったか?」


「いえ、実在する人物でした。と言うか、実在していたって言ったほうがいいですね…」


「どういう意味だ?」


内川の声に若い警官は手にしていた数枚の用紙を見えるように広げ、先ほどよりも

困惑した声で話しだした。


「これ、見てくださいよ。 4日前の事故なんですけど、姫尾市で起きた

 交通事故の資料をFAXで送ってもらったやつなんですよ」


「姫尾市って隣の県じゃないか? ん? どれどれ…」


それにはこう書かれていた。

4日前の4月8日、姫尾市の国道◯号線でハンドル操作の誤りか

前日からの雨で濡れていた路面でスリップ事故。

中央分離帯に乗り上げた車は大破、乗っていた青年、津乃峰 修(24才)は

全身を強く打ち、病院に搬送されるも2時間後に死亡が確認された。


「内川さん、それにこれが死んだ津乃峰 修の写真なんですけど……」


「おい……これって今そこにいる奴じゃないのか?」


手渡された写真と、今そこの取調室でスマホを片手に固まっている

津乃峰を見ながら内川は小さく呟いた。


「お前はいったい何者なんだ?」





 










これからどーやって話を広げていこうか(泣)

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