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短編集

慰め代行サービス

作者: 巫 夏希

「恐れ入ります。私、慰め代行サービスのものですが」

「……どういうこった。まったく意味が解らんぞ」


 俺の名前はキョウヘイという。だが、今そんなことは割とどうだっていい。


「キョウヘイ様は、不幸なことがあったとお聞きしましたので慰め代行サービスの私が出動した次第ですが」


 そこに立っているのはひとりの少女だった。

 露出の高い服を着ていて、まるで風俗にでもいるような格好をしていた。


「慰め……ったって、何をするんだ?」

「そりゃあまあ、もちろんいろいろとございます。例えば話を聞いてあげたり、身体を使ってご奉仕したりなどと。私はこういうつるぺったんな体型をしていますが、どちらかというと後者の方が多いですかね」


 ……俺は見ず知らずの人間にロリコン扱いされた、ってことなのか。

 まったく腹立たしい。さっさと立ち去ってもらいたいところだ。


「で? 何が言いたいわけだ。慰め代行サービス? んなもん聞いたこともねえぞ。ふざけてんじゃねえのか、エイプリルフールはもうとっくに過ぎちまったぞ」

「いえいえ、私どもはれっきとした会社でございます。きちんと東証二部にも上場しておりますよ」


 まじかよ、すごい会社じゃねえか。


「しかし、キョウヘイ様がそうおっしゃるのであれば……仕方ありません。今回は無しでも構いませんか? それとも『チェンジ』機能でも使いますか?」


 ますます風俗らしくなってきたぞオイ。

 そんなツッコミを入れようとしたが、そんなことをしても野暮だ――俺はそう思った。


「いや、いい。とりあえず……何をしてくれるんだ」

「やっぱりロリコンじゃねえかこのクズ」

「おい今なんか聞こえたぞ?! 今の発言は俺の心が折れるぞ! 商売なんだろお前!」

「うーん、あっているような間違っているような……」

「どっちだ! はっきりさせろ!」

「ま。どっちでもいいですよ。何分コースにします?」


 そう言って少女は服を脱ぎだした。


「あかん。これはあかんぞ」

「心の声が出てますよ。さ、力を抜いて――」


 俺は――その少女のなすがままに、その行為に及んだ。



 ◇◇◇



 さて。

 終わったのはそれから三十分後のことだった。

 意外と気持ちよかったので、前にあった出来事を思わず忘れてしまうほどだった。なるほど、『慰め代行サービス』とは言ったものである。

 服をいそいそと着て、彼女は請求書を差し出した。


「今回の請求となります。一週間後に再び請求にまいります。あ、コンビニでも大丈夫ですので」


 どうやら請求書と一緒に支払い用紙がついているらしい。


「それじゃ」


 そう言って少女は手を振って帰っていった。それに俺も手を振って答えた。

 服を着て、請求書を見る。


「おい、どういうことだよこれ……!」


 そこに書かれていた金額を見て、俺は思わず絶句した。

 俺の生活費の殆どを占めるほどの値段だったからだ。


「きっと風俗でもこれくらいはしないぞ……」


 いや、ぼったくりバーならありえるかもしれない。そんな冷静な思考をいまだ保てている俺だったが、



 ――ピンポーン



 チャイムが鳴って、その思考は中断させられた。


「なんだよ、今日は人が来るなあ……!」


 そう言って、俺は扉を開けた。

 そこにいるのは黒いワンピースを着た少女だった。

 少女は微笑んで、言った。


「恐れ入ります。私、慰め代行サービスのものですが」

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