4 人助け
おひさしぶりにございます。
新たな事件、勃発です。
楽しんで頂ければ幸いです。
田原坂から興路町への途中にある、葦沢の林の中。着物姿の女が走っていた。その後ろから浪人らしい、二人の浪人が走って来ていた。どうやら女を追っているらしい。女はだいぶ息があがっていて、ふらふらとしていたが、とうとう木の根につまずき、足をひねり、うずくまってしまった。
「待ちやがれ!」
「まったく、手間かけさせやがる。」
二人の男が女に詰寄って来た。
「誰かたすけて!いや!来ないでぇ!」
女は這って逃げながら叫んだ。着物も髪も乱れてしまっていた。
「そういうわけにはいかねえんだ。」
一人の男が女の胸倉を掴み立たせようとしたとき。
「やめないか!」
突然、茂みの中から人が現れた。
「なんだ、お前は!」
「その手をお離しなさい!」
まだ、十代らしい少年であった。着流し姿の少年は女に歩みより、男達を見据える。男達は少年だとわかると、侮ってかかった。
「邪魔をするな!」
男の一人が抜刀して少年に斬りかかった。そうすれば、逃げて行くだろうと思ったのだ。しかし、少年は逃げもせずに正面から男に向き合い、男の太刀筋を見極めてすうっと左にかわすと、
「やあっ!」
とにぎりこぶしで男のみぞおちを突いた。
「うぐっ。」
男はうずまりこんだ。倒れた男に驚きながらも、
「なめんじゃねえぞ!」
ともう一人の男も抜刀し、少年に襲いかかる。少年は大振りする男と交錯する。と、ドサッ。男が倒れた。
やはり少年が急所を突いたのだ。
「手加減しました。ありがたく思いなさい。」
少年はそう言うと、女の方に向かう。女はあまりに突然の出来事に、唖然としている。
「大丈夫ですか?立てますか?」
少年がにこっと笑って声をかけると、
「あ、え、ええ。」
と言い、女は立とうとするが、
「痛っ。」
と言って座り込んでしまった。すると少年は自分の袖を引き千切り、女の足に巻いていく。応急処置をし終えると、
「おぶっていきますから背中に乗ってください。」
と、背を向けて座って見せた。女は最初躊躇していたが、少年の肩に手をかけて、乗った。少年は軽々と立ちあがり、林の中を歩く。
「あなたの足を治療するのに、医者のところに行きますね。」