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剣客起居  作者: 緑風の小道
通り魔の道場破り
1/10

1 通り魔

お楽しみいただけると幸いです。

 波倉宗介(なみくらそうすけ)の朝は早い。夜明け前に山道を走り、井戸で顔を洗うと、浅間寺の、今は亡き師、十高明兵右衛門とだかあきへいうえもんの墓の掃除をする。そして薪を持って帰る。宗介の住居は田原坂の浅間寺の近くにある杉岡道場である。道場の裏にある母屋の台所に行くと、すでに女中のお(りん)が朝食をつくっている。薪を置くと、木刀を持って庭へ行く。素振りをするのだ。すでに庭には、以前は兄弟子であり、今の師である杉岡隆行(すぎおかたかゆき)が素振りをしている。三百程振った頃、お凛が二人を呼びに来る。今、道場に住んでいるのは、宗介たち三人だけだ。いつもなら朝食を済ませると、宗介は読書を始める。


 しかし、今日は違った。三人が食卓を囲んでいると、


「先生!先生!大変だぁ!」


近所の葦沢村の大作(たいさく)が叫びながら庭に入ってきた。


「どうしたんだ?大作。」


隆行が味噌汁をすすりながら声をかける。


「笹谷のとっつぁんが浪人に斬られたんだ!」


お凛と宗介は目を見開き、隆行は眉をひそめた。


「笹谷のとっつぁんは無事なのか?」


「傷が浅いけど、体が弱いから体力が持たないかもしれねぇと、浅井先生がいうていらっしゃった。」


「巧之介が診ているのか。とっつぁんは任せるしかないな。とっつぁんを斬った浪人はどうした?」


「興路町の方に行っちまった。どうにかしてくださいよう。」


大作は縁側に上がって隆行に泣きついた。


「なんでとっつぁんが浪人に斬られなきゃならなくなったんだ?」


「とっつぁんがまいてた水が浪人の服にかかったっていうてうそついてきたんだ。」


「なんで嘘ってわかるんですか?」


隆行に代わって宗介が口を挟む。


「おれがとっつぁんが水をまいているのを見ていたもの。とっつぁんと浪人の距離はこんなに離れていた

のだぞ。」


そういって、大作は手を広げて見せた。


「それじゃあ、かかるはずないわね。」


お凛が応える。隆行がお凛を見やり、


「いや、水がかかったくらいで斬りつける奴のほうがそもそもおかしい。そいつは何人も斬っていそうだ。

そいつの人相はわかるか?」


「鼻の上にほくろがあったなぁ。身体がだるまさんみてぇにでかかった。顔も丸くて、浅黒かったなぁ。

 鼻の下に毛をはやして、髪も結ってあった。服は着流しだったなぁ。」


「ふうん。だるまか。見つけたら敵討ちしてやるよ。」


「私も一太刀浴びせたいです。あのとっつぁんを斬るなんて許せない。」


めずらしく腹をたてている宗介に隆行とお凛は目を合わせた。宗介は滅多に怒らないのだ。食べ終わった三人は大作と共に葦沢村に行った。




葦沢村にある笹谷という茶店には近所の人が集まって来ていた。隆行達が奥へ入る。


「巧之介、容態はどうだ?」


「五分五分だな。笹谷のとっつぁんも年だからな。」


興路町に診療所を開く、隆行の親友で剣友の医師、浅井巧之介(あさいたくみのすけ)が笹谷の翁を看病していた。


「犯人は見つかったのか?」


「いや、見ていたのは大作さんだけらしい。その後の足跡が掴めない。」


今度は巧之介が隆行に尋ねた。宗介たちは笹谷の翁を浅井診療所に笹谷の翁を運ぶ手伝いをした。

設定1 

波倉宗介 なみくらそうすけ

以前は亡き師十高明兵右衛門について修行していたが、

ある事件で亡くなったため、兄弟子である隆行が師匠となり、そのまま修行している。

性格は真面目で正直者。でも、髪は後ろで軽く結んでいるだけで結っていない。

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