3話 僕と彼女と第一試合
ありがとうございます。
思ったより文章が長くなってしまいました。
さてさて、剣術大会当日になりました。
ドクン、ドクンと僕の心臓が跳ねる。
大会のせいか…流石に緊張してきた。
第一試合は注目を集めやすいし、心の準備が…いかん!
テンパってるかも?
「これより一回戦第一試合を始めます…Bクラス モブン選手、Cクラス クロト選手、会場に上がりなさい。」
Cクラスの選手席から試合会場に向かう僕は、Aクラスの前を通ったときにスカーレットと目が合った。
スカーレットは満面の笑顔で声をかけてきた。
「クロ君!絶対に勝ってきてねー!」
「…頑張ってみるよ。」
周りの視線が痛い…。
(あいつか!最近スカーレット様にまとわりついてる虫は。)
(私のスカーレット様があんなのを応援するなんて!世界が逆さまになってもありえないわ!)
(親衛隊同志諸君!我々の団結力を示すときがきた!)
(おおおー!抹殺作戦決行!死してししかばねひろうものなし!)
(…モゲロ)
…絶対ワザとだよね!
スカーレットはこうなることが分かってて言ってるに違いない…悪女め!
会場に入り中央でモブン選手と向き合う。
試合会場は四角くて結構な広さだ。
審判員が小さな声で呪文を唱えると、僕達の身体がうっすらと光る…防護の魔法をかけてくれたのだ。
そして、審判の頭上に【100:100】と数字が浮かび上がった。
これは防護の魔法が吸収できる攻撃ポイントを示す。
これで勝敗を決める…つまり、これが0になった方が負けだ。
「始め!」
「セイ!」
キン!
速い!イキナリ突かれた!
僕の胸に剣先が当たってそこが赤く輝いた…攻撃力を吸収したのだ。
相手は片手剣に丸盾のオーソドックスなスタイル、僕は両手剣…どちらも剣。
剣の闘い方は【振るう】【叩きつける】であって、【突き】はあまり威力が出ないので使われない。
意表を突かれて、一歩下がってしまった。
そこへモブン選手の連続攻撃が襲いかかってきた…受けるのが精一杯でどんどん下がる…相手の勢いを止められない!
「場外はダメ!」
スカーレットの声が聞こえた。
ライン際ギリギリで踏みとどまるが、相手はシールドを構えて低い位置からチャージをかけてきた。
くぅ!
抵抗することもできず、場外に弾き飛ばされた。
「やめ!中央に戻って。」
審判の掛け声があって、中央に戻りながら点数を確認する…得点は【83:100】になっている。
場外は[マイナス10]なので、最初の一撃で7点食らったことになる。
「始め!」
「やあ!」
また相手は速攻で攻撃をしかけてきた!
スカーレットほどではないが…速い!
キン、カン!っと、相手の攻撃を大剣で凌ぐものの反撃の機会がつかめない。
徐々に押されていたみたいで…またライン際まで下がっていた。
狭い!会場が広いなんて誰が言った!…僕か!
回り込もうとしたが、逆にコーナーに追い詰められてしまった!
流石にBクラスだ!
モブン選手強いよ~!
うわ〜頭が真っ白になってきて…打開策が全く浮かばない!
「【対】の振り!」
ガン!
(はれ?)
僕の大剣が相手の盾に当たり、にぶい音がした…相手が慌てて距離を取る。
今、僕はスカーレットの声に反応して反射的に剣を振った。
【対】の振り、は相手が”繰り出す剣”に合わせるように剣戟を振るう振り方(今までは相手の剣を受けていただけ)。
にもかかわらず”盾”に当たったのは、相手が強引に剣を引いて盾で防いだからだ。
(まさか?…でも、そういえば!)
思いついたら実行あるのみ!
今度はこちらから行く!
「ハッ!」
僕は上段から大振りの一撃を繰り出した。
僕が繰り出した攻撃はモーションが大きいので簡単に動きを読まれた。
モブン選手は僕の攻撃を盾で受け止め、動きの止まった僕に攻撃を仕掛けてきた…ポイントは取られるが、これはあえて食らう。
モブン選手は攻撃直後…隙ができる!
そこで”【連】の振り”、を繰り出す。
【連】の振りは、”攻撃を防がれたり弾かれたりしたときの勢い”…つまり反動を使って連続で剣を振るう振りだ。
盾で防がれた勢いを溜めておいて…狙いは”相手の剣”!
『パキン!』
乾いた音がして…相手の剣が折れた。
ヤッパリ…細剣並みに軽い剣だったんだ。
あれじゃ剣で攻撃を受けるのを必至で避けるのは当然だよ。
思いついてみれば、受けていてなんとなく攻撃が軽い気がしていたし…大剣相手じゃ簡単に折れるよ。
「やめ!」
審判の掛け声があって、僕達は中央に戻る。
「武器の交換は認められません。モブン選手はそのまま闘うか、棄権するか決めてください。」
「…棄権…します。」
「では、モブン選手から100ポイント引きます。
よって、【73:0】でクロト選手の勝ちとします。両者、礼!」
「「ありがとうございました。」」
僕は握手しようと前に出かけたけど…その前にモブン選手さっさと降りちゃったよ、嫌われたかな?
僕はフーッと深い息を吐き出しながら会場から降りた。
降りたところで僕をスカーレットが迎えてくれた。
「おめでとうー!頑張ったね!」
「はは、でも事実上1ポイントも取れなかったよ。」
「でも、私の意図をシッカリ読んでくれて〜相手の剣を折ってくれて嬉しかった〜以心伝心てこのことよね〜♡」
♡はヤメロ!周りの視線が、殺意がドーピングされるから!
「最近、剣術大会でポイント取るためだけに軽い剣選ぶ人が多かったから嫌だったのよね〜。
だけど〜私が折ったんじゃ問題視されないかもしれないじゃない?
だからクロ君に折らせたかったんだヨネ。」
最後の部分は僕だけに聴こえるように小声で話しながら、スカーレットは人の悪い笑みを浮かべた…こいつ本当にいい性格してやがんの。
「さあ!次は私が大剣で勝ってみせるから観てなさい!」
そう言ってAクラスの席に戻って行くスカーレットの後ろ姿は、とっても楽しそうだった…。




