第三話
お待たせしてしまい、誠に申し訳ございません。
投稿が遅くなってしまった理由といたしましては、内容をできるだけ自然で分かりやすい日本語にまとめようと、時間をかけて推敲しておりましたためです。その結果、公開が予定より遅れてしまいましたこと、ここに深くお詫び申し上げます。
また、本作品の内容につきまして、至らぬ点やご期待に沿えない部分がございましたら、その点につきましても、あらかじめお詫び申し上げます。まだまだ未熟ではございますが、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
最後までお読みいただければ、大変光栄に存じます。何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
――火曜日の朝。
聖凛高校の空気は、目に見えないはずなのに、やけに重たかった。
まるで分厚い気圧が校舎全体を押し潰しているみたいに。
特に張りつめていたのは、二年A組の教室、いちばん後ろの席。
そこは、通称――「即席・母子コンビ」の戦略拠点だった。
マイク・パチャラは背筋を固め、冷房の効いた教室にもかかわらず、手のひらにじっとりと汗を滲ませていた。
理由は、これからある数学の小テストじゃない。
――前の席。窓際。
西村リカの放つ、言葉にならない圧のせいだ。
昨日の「おんぶ帰宅事件」以来、リカは異様なほど静かだった。
話しかけてこない。腕を組んでこない。視線すら寄こさない。
……それが、逆に怖い。
嵐の前の静けさ。
成績表を見たあと、母親が無言になるあの瞬間みたいに。
一方で、すべての元凶――
田中ハミ(見た目・十六歳)本人はというと。
「はぁ……青春って、忙しいわねぇ」
などと、完全にエンジョイしていた。
「……マイク」
後ろから、ひそひそ声。
振り返ると、足を組み、なぜか高級そうな陶器のカップで紅茶を飲んでいる“母親”がいた。
どうやって通学カバンに入れたのかは、永遠の謎だ。
「なに、母さん……っていうかそれ片づけて! 今ホームルームだから!」
マイクは必死に小声で訴える。
「大丈夫よ。担任、近眼だもの」
ハミは手をひらひらさせる。
「それよりね、今日はお詫びに特製お弁当を作ってきたの。
ロブスターのチーズオーブン焼き、トリュフソースがけ」
「派手すぎます!」
マイクは頭を抱えた。
「普通はタコさんウインナーと卵焼きです! ロブスターは目立ちすぎです!」
「失礼ね。田中ハミが赤いウインナーなんて食べられるわけないでしょ。
ブランドイメージが崩れるわ」
――その瞬間。
ギギィ……と、前方で椅子を引く音。
教室が一斉に静まり返る。
西村リカが、ゆっくりと立ち上がった。
所作は優雅なのに、放つ威圧感は異様だ。
鋭い視線が向けられた先は、マイクではない。
紅茶のカップを持ったまま固まっている、茶髪の少女。
リカは歩き出す。
コツ、コツ、コツ――
靴音が、時限爆弾のカウントダウンみたいに響く。
(来た……第三次世界大戦……)
ハミの机の前で、リカは足を止めた。
そして――
バンッ!
机に手を叩きつける。
カップの中の紅茶が跳ねた。
ハミは一瞬だけ肩を震わせたが、三十代経営者のメンタルは伊達じゃない。
ゆっくりカップを置き、にこやかな営業スマイルを浮かべる。
「どうかしたのかしら、西村さん?」
「……来て」
リカは低く言った。
「屋上。今すぐ」
「待って、リカ!」
マイクが慌てて立ち上がる。
「ここで話せばいいだろ! なんで――ハミさんを連れてくんだよ!」
リカは一瞬だけ、感情の読めない目でマイクを見る。
「あなたも来るの。三人で」
――屋上。
強風が吹き荒れ、スカートがはためく。
西部劇の決闘前みたいな空気の中、三人は向かい合った。
中央でマイクは冷や汗だらだら。
腕を組み睨みつけるリカ。
フェンスにもたれて余裕ぶるハミ――
(指が、ちょっと震えている)
「単刀直入に言うわ」
リカが口を開く。
「あなた、何者?」
「ふふ……変なこと言うのね。私は田中ハミ、交換留学生――」
「いい加減にしなさい!」
鋭い声に、ハミの肩が跳ねる。
「あなたはただの留学生じゃない。
マイクの遠い親戚でもない」
一歩、また一歩。
距離が詰まる。
マイクの脳内で、言い訳案が乱舞する。
(従姉妹? 借金取り? 宇宙人?)
リカは、ハミの目の前で止まり――
口元に、狡猾な笑みを浮かべた。
「正直に言って」
「田中ハミちゃん――
それとも……マイクのお母さん、かしら?」
――ドンッ。
雷が落ちたみたいに、世界が止まる。
「なっ……なんで分かるんだよ!?」
マイクとハミの声が、見事に重なった。
「どこがダメだったの!?
若者スラングも勉強したし、昨日はTikTokも踊ったのよ!?
見た目だって十六歳でしょ!」
リカは深くため息をつき、スマホを取り出した。
「自然? 本気で言ってます?」
画面をスライドする。
「登校中、マイクの襟が折れてたのを直して、
頭まで撫でて『何回言えばちゃんと櫛使うの』って小言。
転校生がクラスメイトにやります?」
「……な、仲がいいだけで……」
「次。昼休み」
昨日の盗撮写真。
「ピーマンを箸で除けて『野菜食べなさい、便秘になるわよ』。
“息子”って言いましたよね?」
「うっ……」
「そして決定打」
ニュースアプリの画面。
「私は田中グループCEO、田中ハミの大ファンです。
思考中に髪を指で巻く癖……今もやってますよね」
ハミは無意識の手を見て、固まった。
「それに、その通学バッグ。
特注のバーキン改造モデル。
去年、本人がSNSに載せてた世界に一つのやつ」
「……あら。バレてた?」
マイクは顔を覆う。
「終わった……百万円バッグで……」
沈黙。
マイクは覚悟した。
暴露。脅迫。学園生活の終焉。
――だが。
リカは突然、膝をつき、深々と頭を下げた。
「し、失礼しました……お母さま!!」
「はぁ!?」
リカは顔を上げ、目を輝かせる。
「本物の推しに会えるなんて!
しかもJK姿でこの可愛さ!
肌きれいすぎです! スキンケア何ですか!?
若返り技術!? バッグ持ちます!!」
ハミは一瞬呆然とし――
次の瞬間、自己顕示欲が全開になる。
「……まあ、有名人だからね」
「よろしくお願いします、お義母さま!」
「良い子ねぇ」
ハミは頭を撫でる。
「マイク、見習いなさい」
「待って! おかしいだろ!」
「黙りなさい!」
リカが睨む。
「今、お義母さまと話してるの!」
「今日、買い物行きません?」
「行くわ!」
「午後サボりましょう!」
「賛成!」
「やめろぉぉぉ!!」
リカはマイクの肩を叩き、低く囁く。
「秘密、握ってるから」
「“田中グループCEOが女子高生”――
バラされたくなければ……」
「私を恋人って呼ばせる。
毎週デート。いい?」
マイクは青ざめ、母を見る。
ハミは鏡で前髪をチェックしながら言った。
「買い物のあと、ケーキ行かない?」
「行きます!」
マイクは屋上に崩れ落ちた。
――静かな日常は、終わった。
(第三話・終)
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
最後に少しだけ、完全に個人的な愚痴を書かせてください。
正直に言いますと、日本語はまだまだ勉強中で、書いている途中も
「この表現で合ってるのかな……?」
「なんか日本語っぽくない気がする……」
と、一人で何度も悩みながら書いていました。
文法も語彙も未熟で、自分で読み返して「うーん……」と首をかしげることもしばしばです。
それでも「まあ、今の自分としてはこれが精一杯かな」と開き直って、思い切って投稿しました。
もし不自然な表現や変なところがあれば、
「ああ、作者は今ちょうど日本語で迷子なんだな」
くらいの気持ちで、温かく見守っていただけると嬉しいです。
これからも少しずつ成長していけたらと思っていますので、
どうか長い目でお付き合いいただければ幸いです。




