第二話
こんにちは。
この作品を開いてくれた皆さん、ありがとうございます。
……と、普通ならここで何か気の利いたことを書くんでしょうけど、
特に思いつきません。
あ、そうだ。
最近ちょっと困ってることがありまして。
借金です。
いや、重い話じゃないですよ。
たぶん。
ちゃんと生きてれば、そのうち返せるタイプのやつです。
たぶん。
ただですね、
原稿を書いてる最中に
ふと「これ、間に合うかな……」って思う瞬間があって、
そのたびに頭の片隅に
なぜか“請求書の顔”が浮かぶんですよね。
不思議です。
物語とはまったく関係ありませんが、
こういう余計なことを考えてる時ほど、
逆に文章が進んだりします。
現実逃避って、大事。
というわけで、
今日も元気に逃げながら書いてます。
それでは、本編をどうぞ。
月曜日の朝。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、
俺――マイク・パチャラの顔を容赦なく照らしてきた。
目を開けた瞬間、
昨夜の悪夢が脳裏をよぎる。
……いや、違う。
これは夢じゃない。
母さん――
田中ハミ。
超有能で冷徹な女性経営者。
その母が、
今も十六歳の姿のまま、
俺の部屋の前で現実として存在している。
しかも。
「マイク! 見て見て!
この制服、どう?」
鏡の前でくるりと回る少女。
短めのプリーツスカートがひらりと揺れる。
――同じ学校の、同じ制服。
「……」
俺は歯ブラシをくわえたまま、完全に固まった。
「昨日の夜ね、秘書に頼んで
戸籍とか経歴とか、ちょっとだけ“調整”してもらったの♪
校長先生にも、ほんの気持ち程度……ね?」
ほんの気持ち、で済む額じゃないだろ。
「今日からママは、
交換留学生の“ハミちゃん”です!」
「……母さん、正気ですか!
会社は!? 仕事は!?」
「大丈夫大丈夫。
ワーク・フロム・ホーム……
今回はワーク・フロム・スクールね」
可愛くウインク。
元の母なら、絶対やらない。
「それに、今のママが
息子を一人で学校に行かせるわけないでしょ?」
――まず自分の身を守ってくれ。
リボンを結ぼうとして絡まっている母を見かねて、
俺は黙って直してやった。
「いいですか母さん。
学校では――」
「うんうん」
「俺に話しかけない。
母だとバラさない。
目立つ行動、絶対禁止」
「了解でありますっ!」
……そして当然のように。
その約束は、
登校から三十分ももたなかった。
◆
聖凛高校。
俺は今日も、
存在感を極限まで消して歩いていた。
壁沿い。
下を向いて。
忍者見習いのごとく。
だが。
「マイクくぅぅん♡」
――詰んだ。
振り向くまでもない。
この声は。
西村リカ。
学校一の人気者。
金髪ゆる巻き。
笑顔ひとつで男を殺せる女。
彼女は当然のように俺の腕に絡みついた。
「おはよー!
今日も一緒に登校だね♪」
「……おはよう、リカさん」
「また“さん”!
“リカちゃん”か、“ダーリン”でしょ?」
頬を膨らませて、腕に顔をすりすり。
周囲から突き刺さる殺意の視線。
――そう。
これが、俺の人生第二の厄災。
『いつの間にか彼女扱いされてる問題』。
断るタイミングを完全に失ったまま、
ここまで来てしまった。
「放課後デートしよ?
カラオケ、VIPルーム取ってあるの♡」
「今日は……無理です。
用事があって」
「えー?
リカより大事な用事?」
その瞬間。
校門の方から、
異様などよめきが起こった。
「誰だよあの子!?」
「可愛すぎない!?」
「脚、細っ……!」
俺は悟った。
そして、
恐る恐る振り返る。
――いた。
田中ハミ。
いや、“ハミちゃん”。
緊張で挙動不審になりながら、
必死に優雅さを装って歩いてくる。
子鹿か。
人混みに飲まれ、
完全に迷子。
そして――
助けを求めるように、
俺を見つけた。
「マイクー!」
高くて、よく通る声。
終わった。
「……誰?」
リカが一歩前に出る。
「どうして、
私の彼氏の名前を知ってるの?」
「彼氏!?」
母が目を見開く。
「マイク……
いつの間に……?」
――やめろ!
頼むから喋るな!
「ち、違います!
この人は……親戚です!
北極から来た遠い親戚!」
俺は母の手を掴み、
全力で逃げた。
◆
午前中。
母はなぜか別のクラスに突撃し、
自己紹介で頭をぶつけ、
最終的に俺の後ろの席に座った。
「……恥ずかしい……」
「静かにしてください」
「マイク、
ママそんなに変だった?」
「……可愛かったです」
「ほんと!?」
即、復活。
◆
昼休み。
いつものベンチ。
いつもの一人飯。
のはずが。
「マイクぅ~♡」
高級弁当を持った母が隣に。
「男の子にナンパされた……怖かった」
「断り方が問題です」
「え?」
◆
午後。
体育。
猫。
木。
転落。
そして――
俺は、
母を背負って帰る羽目になった。
「……軽いな」
思わず、そう呟く。
「そう?
ママ、昔は体重気にしてたんだけど」
夕焼けの中、
母は小さく笑った。
「……マイク。
ママ、ちょっと怖い」
「……俺がいます」
その言葉に、
母は少しだけ強く腕を回した。
◆
その背後で。
電柱の影。
リカが、
こちらを睨んでいた。
「……あの女。
許さない」
――戦争の火種は、
確実に撒かれていた。
――第二話・完。
こんにちは、読者の皆さん。
いきなりなんですが、
もし家で飼ってる猫に布団の上でおしっこされたら、
あれってどうするのが正解なんでしょうか。
そのまま洗濯機に突っ込んでいいのか、
それとも一回天日干ししたほうがいいのか。
そもそも布団って洗濯機で洗えるんでしたっけ?
調べればすぐ分かる話なんですが、
調べないまま「うーん……」って考えてる時間、
意外と嫌いじゃなかったりします。
たぶん、
こういうどうでもいいことを考えてる時が
一番頭が休まってるんだと思います。
……で、結局どうしたかというと、
まだ何もしてません。
今も布団はそのままです。
まあ、そのうち何とかなるでしょう。
人生だいたいそんな感じです。
それではまた次回。
読んでくれてありがとうございました。




