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Invitation to MI6  作者: 徳田新之助
第三章 終焉と創造のプロトコル
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隠された道筋





ウォレス・マッケンジー(006)は、長官の隔離空間へ続く通路の裏側、メンテナンスシャフトの中で、小型の電子デバイスを握りしめていた。長官がクラークに最後の指示を与え、通信を閉じる音を耳にした直後、彼のデバイスに警報が鳴り響いた。




「サー・ロバート・スローン、最高機密エリアへ侵入開始」




「来たか…」ウォレスは小さく呟いた。




彼は、MI6の**『情報領域』のすべてを監視できる立場にある。長官とクラークの取引は、彼ら二人とウォレスの間だけの『物語』**のはずだった。しかし、長官の『管理』の正義を組織の力として信奉するスローンは、長官の動きを常に疑い、独自のルートでクラークの移動を突き止めていたのだ。




ウォレスは冷静にデバイスを操作した。彼の役割は、長官とスローンの衝突が起きている**『時間』を最大の武器にし、クラークを『物語の空白地帯』**へ送り届けることだ。




彼は、長官の**『物語の管理者』としての能力が維持する隔離空間の『弱点』**を突き、空間のセキュリティを一時的にオーバーライドした。




長官、あなたの『管理』の物語は、あまりに重すぎる。だからこそ、その物語を維持するための『記憶の断片』に、隙が生まれる。




ウォレスは、長官の最も古い記憶の断片、すなわち第一次世界大戦の戦場の記録を一時的に不安定化させた。長官の意識がその『絶望の物語』の修復に向かう一瞬の隙間。それが、クラークを脱出させる唯一のチャンスだった。




隔離空間の扉が、激しい音を立てて開くのが、シャフトの壁を通して伝わってきた。スローンの怒声が、通路に響き渡る。




「長官!ジョナサン・クラークの身柄はどうなっている!なぜ、記録室から移動させ、ここに隔離するなどという独断を下した!」




ウォレスは、長官がクラークの居場所を伏せながら、スローンと対峙している様子を脳内の**『情報領域』**でリアルタイムに把握していた。




そして、長官が**『管理者』の力を解放した瞬間**、ウォレスは動いた。




「今だ…!」




彼は、隔離空間へと繋がるメンテナンスハッチを静かに開き、そのわずかな隙間から、クラークのいる部屋へ侵入した。長官とスローンが能力と権力で激しく衝突している瞬間、誰もこの影の動きに気づかない。




ウォレスは、クラークに素早く電子デバイスを押し付けた。




「ウォレス・マッケンジーです。時間がない。このデバイスが、あなたをMI6の**『情報網』**から隠します」




そして、彼はクラークを、自分が開けた**『隠された道筋』へ誘導した。長官とスローンの間に能力の衝突が起きている今、この道筋は『物語の理』**からも見えなくなっている。




「MI6は、あなたを捜索します。長官の命令ではなく、スローンの命令でです。あなたは、**『プロト』へ向かいなさい。長官は、あなたの『創造』**に、すべてを賭けています」




ウォレスは、クラークを脱出させた後、再びハッチを閉め、通路の裏側で長官の最後の言葉を聞いた。




「ウォレス…ジョナサン・クラークを、必ず『プロト』へ導け…」




ウォレスは深く息を吸い込んだ。長官は、クラークの『創造』に時間を与えるため、自らMI6という『絶望の物語』に囚われることを選んだのだ。




ウォレスの使命は、ただ一つ。長官の命と、この世界の唯一の希望であるクラークの『創造』を、MI6の『管理』の物語から、守り抜くことだった。



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