管理者の能力
僕は、長官の語るMI6の『正義』を、冷めた目で見つめていた。彼の『正義』は、多くの人々の『物語』を犠牲にしてきた。だが、その犠牲によって、この世界の『物語』の秩序は、保たれてきた。
(長官の『正義』は、MI6という巨大な『物語』によって、作られたものだ…)
僕は、そう結論付けた。長官は、MI6の『正義』の操り人形に過ぎない。彼は、自分自身の『物語』を、MI6の『物語』に、完全に委ねていたのだ。
その時、長官の体が、かすかに光を放った。彼の周囲のクリスタルの光の粒が、一瞬だけ不自然に点滅する。
「長官。あなたは…」
僕は、長官の瞳をまっすぐに見つめ、一つの疑問を投げかけた。彼の冷静な態度、そして僕をこの場所に連れてきた瞬間移動のような能力。そのすべてが、彼がただの人間ではないことを示唆していた。
「あなたも…能力者なのか?」
僕が問いかけると、長官は、悲しげに微笑んだ。その表情は、僕が今まで見てきた冷徹な『管理者』のそれとは、全く違っていた。
「その通りだ。私は…『物語の管理者』…」
彼の言葉に、僕は息をのんだ。リリスが語っていた、MI6の『物語』を管理する、真の能力者。それが、この男だったのだ。
「私は、この世界の『物語』が、歪まないように、すべてを管理してきた。希望も、絶望も…すべてを、私の『正義』で、コントロールしてきた…」
長官は、そう言って、ゆっくりと僕に歩み寄ってきた。彼の瞳は、僕の『物語』を、すべて見透かしているかのように、静かで、冷たかった。
「私が、君を、この場所に連れてきたのは、君の『物語』を、私の『物語』に取り込むためではない…」
彼の言葉に、僕は警戒を解かなかった。
「私は、君に、この世界の『物語』の、真の姿を見せに来たのだ…」
長官は、そう言って、部屋の壁に触れた。すると、壁が、まるで水の波紋のように歪み、その向こうに、この世界の『物語』の、すべてが映し出された。
そこには、人々の喜びの『物語』、悲しみの『物語』、そして、僕たちが知らない、無数の『物語』が、まるで星のように輝いていた。
「この世界の『物語』は、とても脆い。少しの『歪み』で、すべてが崩れ去ってしまう…」
長官は、そう言って、悲しげに瞳を閉じた。
「そして…君は、この世界の『物語』の、最大の『歪み』だ…」
彼の瞳には、この世界の『物語』を守るという、強い『正義』が宿っていた。




