二つの歪んだ物語
僕たちは、MI6の隠蔽工作を阻止し、**『物語の支配者』**の真実を紡ぎ直すために、新たな旅を始めた。リリアンは、まだ体が透明なままだが、その瞳には、確かな光が宿っていた。テオは、何も言わずに僕たちの後ろを歩いている。
僕たちは、MI6の追跡をかわしながら、彼らの動向を探っていた。MI6は、**『物語の支配者』**の消滅を隠蔽するため、すでに、ロンドン中の通信網を封鎖し始めていた。
「彼らは、僕たちが、彼の『物語』の真実を、世界に知らしめることを、恐れている…」
リリアンが、かすれた声で言った。
その時、僕のスマートフォンが、けたたましい音を立てて鳴った。画面には、見慣れない番号が表示されている。
「誰だ…?」
僕は、警戒しながら、電話に出た。
「ジョナサン・クラーク。君は、また、MI6の邪魔をするつもりか?」
電話の向こうから聞こえてきたのは、冷徹な、そして、どこか悲しげな声だった。**『プロメテウス』**の声だ。
「プロメテウス…!なぜ、君が…?」
「私は、君たちの『物語』を、見守っていただけだ。君は、私の『物語』を否定し、リリアンの『希望』を選んだ。だが、その『希望』は、君を、MI6の新たな『絶望』へと導く…」
プロメテウスは、そう言って、嘲笑した。
「君は、この世界の『物語』の真実を知った。そして、その真実を紡ぎ直そうとしている。だが、それは、この世界の『理』を、さらに歪ませる…」
彼の言葉は、僕の心を揺さぶった。彼は、この世界の『理』を守るために、絶望を紡いでいた。僕が、彼の『絶望』を否定すれば、この世界の『理』が、さらに歪むというのか?
「僕の『正義』は、誰も犠牲にしない『物語』を紡ぐことだ!」
「それは、偽りの『正義』だ!君の『正義』は、多くの人々の『物語』を、無に帰すことになる!」
プロメテウスは、そう言って、電話を切った。
その時、僕たちの目の前に、一人の男が立っていた。いや、正確には、男の姿を模した、影だ。その影は、まるで生きているかのように、形を変え、僕たちに襲いかかってきた。
「プロメテウス…!」
僕は、リリアンから託された光の粒を、手に握りしめた。
その時、僕たちの背後から、冷たい声が聞こえてきた。
「ジョナサン・クラーク。あなたは、私の『物語』を、否定した…」
振り返ると、そこには、リリスが立っていた。彼女の瞳は、怒りと憎悪に満ちている。
プロメテウスとリリス、二つの『歪んだ物語』が、再び僕たちの前に現れた。彼らは、僕たちの『希望』の物語を、終わらせようとしている。




