表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Invitation to MI6  作者: 徳田新之助
第一章 この世界の理
32/86

停止した物語





時間が止まったアーカイブ室で、私は一人、静止していた。長官は銃を構えたまま固まり、リリスは怒りに満ちた表情のまま宙に浮いている。少年の握る砂時計の砂は、わずかに下に落ちたところで停止し、彼の瞳は、僕をまっすぐに見つめている。




「なぜ、君は、僕を…」




少年の声だけが、静寂に包まれた部屋に響く。彼は、僕を標的にしたようだ。




「お前は、この世界の『物語』を歪ませる、異物だ」




少年は、そう言って、僕に歩み寄ってきた。




(彼もまた、僕が元いた世界の人間なのか?いや、違う…彼が持っている力は、この世界の『ことわり』に深く根ざしている。彼は…この世界の『物語』の申し子だ)




僕は、思考を巡らせる。彼の能力は、時間を止めること。だが、なぜ僕だけが動けるのか?




(彼が時間を止めたのは、このアーカイブ室だけだ。だが、僕は、彼の能力の影響を受けていない。それは、僕の『存在』が、この世界の『理』から外れているからか?それとも…)




その時、僕の頭の中に、リリアンの言葉が蘇った。




「あなたは、この世界の『物語』に干渉する、


『物語の紡ぎ手』…」




僕の『存在』そのものが、この世界の『理』を歪ませている。だから、僕は、彼の能力の影響を受けない。




「グルルルル…」




リリスが操っていたゾンビたちが、遠くで唸り声を上げているのが聞こえた。彼らは、まだ動いている。




(彼の能力は、すべての『物語』を停止させるわけじゃない。彼の『意思』が及ぶ範囲だけだ…)




僕は、この状況を打開するための、唯一の手段を思いついた。




「君の能力は、時間を止めること。だが、僕は、君の能力の影響を受けない」




僕がそう言うと、少年の表情に、わずかな驚きが浮かんだ。




「なぜだ…?なぜ、お前は、私の『時間』から外れている…?」




「僕は、君の『時間』の外側にいるからだ。そして、君が止めようとしている『物語』の、本当の『結末』を知っているからだ!」




僕は、そう言って、彼の握る砂時計を指差した。




「君は、この世界の『物語』を、絶望的な結末へと終わらせようとしている。だが、僕の『物語』は、そうじゃない。僕は、この世界の『物語』を、希望に満ちた結末へと、この手で書き換える!」




僕の言葉に、少年は動揺した。その隙に、僕は、アーカイブ室の奥にある、非常用の消火設備に手を伸ばした。




そして、そのスイッチを押した。


ガシャン!


天井から、大量の水が降り注いだ。水は、少年が持っていた砂時計を直撃し、彼の能力を不意に中断させた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ