偽りの服従
「さあ、私の**『物語の奴隷』**となりなさい」
リリスの冷たい命令に、私は一瞬、息をのんだ。彼女の銃口は、僕の頭に向けられたままだ。ここで反発すれば、僕は確実に殺されるだろう。
だが、僕は、彼女の瞳の奥に、わずかな動揺を見つけた。彼女は、僕を本当に殺すつもりはない。彼女は、僕の『知識』と『知恵』を欲している。そして、僕を『物語の道具』として利用しようとしている。
(彼女の目的は、『絶望』を世界に蔓延させること。そして、その目的を達成するには、僕の力が必要だ。なら、僕は…彼女に従うふりをして、彼女の目的を探ればいい)
僕は、ゆっくりと両手を上げた。
「わかった。君の言う通りにしよう。僕は、君の『物語の奴隷』になる」
私の言葉に、リリスは警戒を解かないまま、静かに言った。
「賢明な判断だ。君の『物語』は、私の『物語』の栄養となる。そして、君は、私の『正義』を完成させるための、最高の道具となる」
彼女は、そう言って、銃を下ろした。
「まずは、君の『知識』を、私の『物語』に繋げてもらう。この日記のコードを、私の物語に上書きする準備をしてくれ」
私は、彼女の指示に従い、日記をアーカイブ室のコンピュータにセットした。その間も、彼女は、警戒を解かなかった。彼女は、僕が彼女を裏切る可能性を、常に考えている。
(彼女の『絶望』の物語は、リリアンの『希望』の物語と対になっている。そして、その物語の鍵を握っているのは、僕の『知識』と『知恵』…そして、この日記に記された『世界の理』だ)
私は、日記のコードを、リリスの『物語』のシステムに接続しようと試みた。だが、その瞬間、エラーメッセージが表示された。
「どういうことだ…?」
私は、モニターの画面を、目を凝らして見つめた。そこには、日記のコードに、不自然な『バグ』が仕掛けられている、というメッセージが表示されていた。
「この日記には、誰かが、君の物語を破壊するための、ウイルスを仕込んでいる…!」
私の言葉に、リリスは、信じられないという顔で、モニターを見つめた。
「そんなはずはない…!この日記は、MI6のアーカイブ室で厳重に保管されていたはず…!」
その時、私の頭の中に、リリアンの声が響いた。
「…ジョナサン…あのバグは…私が仕込んだ…」
リリアンは、この日記を、彼女の能力の秘密を、僕に託す前に、彼女自身が『リリス』の能力を破壊するために、ウイルスを仕込んでいたのだ。
「彼女は、僕に、リリスの能力を破壊してほしかったのか…!」
リリスは、絶望的な表情を浮かべた。彼女は、リリアンの『希望』の物語に、再び敗北したのだ。
「ジョナサン・クラーク…!お前…!」
リリスは、怒りに震えながら、再び銃を構えた。彼女は、もう、僕を道具として利用するつもりはない。彼女は、僕を殺すつもりだ。
私は、この絶体絶命の状況を、どう切り抜けるべきか、必死に考えた。




