新たな正義
私は、日記のコードの奥深くに隠された、謎の人物の名を見つめていた。
『リリス』
その名に心当たりはなかった。MI6のデータベースにも、プロメテウスに関する情報にも、その名は一切記されていない。この『リリス』という人物は、一体何者なのか?
(このバグは、リリアンが能力を使うたびに、彼女の『物語』を不自然なほど大きく削り取るように仕組まれていた…まるで、彼女の命を意図的に削るために作られたようだ)
リリスは、リリアンの能力の秘密を知り、それを悪用している。彼女は、MI6の『秩序』や、プロメテウスの『絶望』とも違う、別の目的のために動いているのだろうか。
その時、アーカイブ室のドアが、わずかに開く音がした。
私は、慌てて日記とタブレットを隠し、身構えた。ドアから入ってきたのは、長官ではなかった。MI6の制服を着た、一人の女性エージェントだ。彼女は、私をまっすぐに見つめ、静かに言った。
「ジョナサン・クラーク。やはり、あなたがここにいたのね」
私は、彼女に見覚えがあった。MI6の新人訓練で、何度か顔を合わせたエージェントだ。
「どうして、君がここに?」
私が問いかけると、彼女は、警戒を解かないまま、静かに言った。
「長官は、私たちに、君を捕らえるように命令した。君がMI6を裏切ったと…」
「僕は、裏切っていない。ただ、長官の『正義』が、僕の『正義』とは違っただけだ」
「それでも、君は、MI6の機密情報を盗み、逃走した。それは、紛れもない、裏切り行為だ」
彼女の瞳は、冷たく、感情を一切感じさせなかった。
「話せば、わかってくれる。僕は、リリアンを助けるために、この日記を解析していたんだ」
「リリアン?あのテロリストを?」
彼女は、私の言葉に、驚きを隠せなかった。
「彼女は、テロリストじゃない。彼女は、MI6とヘリオンが作り出した、**『歪んだ物語』**の被害者なんだ!」
私が真実を話そうとすると、彼女は、銃を構えた。
「その言葉は、長官に直接話せ。君を連行する」
その時、私のスマートフォンが鳴った。リリアンからだ。私は、彼女からのメッセージを開いた。
「彼女を、信用してはいけない…!」
リリアンの警告に、私は、このエージェントが、ただの追跡者ではないのだと直感した。彼女は、何かを隠している。そして、その『何か』は、僕が今、知ろうとしている、この世界の深い闇と繋がっているのかもしれない。




