消滅の法則
長官たちを一時的に消し去ったリリアンは、力を使い果たしたかのように、その場にへたり込んだ。私は、彼女のそばに駆け寄り、肩を支えた。
「大丈夫か?」
「ええ…でも、少し休まないと…。私の『物語』が、また少し削られてしまったから…」
彼女の顔は蒼白で、その瞳は、まるで遠い場所にいるかのように虚ろだった。私は、彼女の腕に残された、まるでガラスのように透明なタトゥーに目を留めた。それは、彼女の『物語』が、少しずつ消えていく兆候なのだろうか。
私は、彼女を抱え、近くのベンチに座らせた。
「なぜ、君は、そんな危険な能力を使うんだ?長官を消さなくても、他にも方法はあったはずだ」
私が問いかけると、彼女は静かに首を振った。
「なかったわ。彼の『正義』は、あなたを排除し、この世界の『秩序』を守ること。彼は、私の『物語』を、この世界から消し去ろうとしていた。私は、自分の『物語』を守るために、彼を消すしかなかった」
彼女の言葉は、まるで、絶望的な運命を受け入れているかのようだった。
「僕が、君にできることは?」
私がそう尋ねると、彼女は、私をまっすぐに見つめた。
「あなたの『物語』が、私の『物語』を守ってくれた。あなたがいなければ、私は、プロメテウスに敗北していた。あなたは、私の『希望』なのよ、ジョナサン」
彼女の言葉に、私の心臓が、締め付けられるように痛んだ。彼女は、自分自身の『存在』を犠牲にして、僕を救った。
「その能力の秘密を、僕に教えてほしい。君の命を削らずに、その力を使う方法があるかもしれない。僕が、必ず見つけ出す」
私は、彼女の悲劇的な運命を、この手で変えてみせると決意した。
リリアンは、私の言葉を聞いて、悲しげに微笑んだ。
「私の能力は、この世界の**『物語の法則』**に干渉するもの。物語が、悲劇的な結末へと向かっている時、私は、その結末を、希望に満ちた結末へと書き換えることができる。だが、その代償として、私の『存在』が、この世界の『理』から削り取られていく…」
彼女は、そう言って、教会の祭壇に置かれた、古びた日記を指差した。
「この日記には、この世界の『物語の法則』が、すべて記されている。この日記を読み解けば、私の能力の秘密を、解き明かせるかもしれない」
私は、彼女から日記を受け取った。その日記は、まるで僕が元いた世界で使っていた、プログラムのソースコードのように見えた。
私は、この日記に、彼女を救うための『鍵』が隠されているのだと確信した。




