歪んだ再会
私がリリアンから差し出された日記に手を伸ばした、その瞬間だった。
教会の外から、甲高い爆発音が響き、ステンドグラスがけたたましい音を立てて砕け散った。月の光が、粉々に飛び散ったガラスの破片を照らし、まるでダイヤモンドの雨が降っているかのようだった。
「何事!?」
リリアンは、警戒するように身構えた。私もまた、拳銃を構え、周囲を警戒した。
「グルルルル…」
砕け散ったステンドグラスの窓枠から、一人の男が、這いずるように入ってきた。その男の顔には、まるで獣のような牙が生え、瞳は虚ろだった。牧場で私と戦った、ゾンビ化した男だ。
だが、彼だけではなかった。
その後ろから、同じように痩せこけた男たちが、次々と教会に侵入してきた。彼らは、牧場の男と同じように、まるで誰かの命令に従うかのように、一糸乱れぬ動きで私たちに迫ってきた。
「ヘリオン…!なぜ、こんな場所に…!」
リリアンは、驚きと怒りが入り混じった表情を浮かべた。
「私の『駒』は、あなたに捕らえられたはず。どうして…?」
その時、男たちの背後から、一人の男がゆっくりと歩み寄ってきた。黒いコートを纏い、顔には深い絶望を宿している。
「ようこそ、リリアン。そして…『物語の紡ぎ手』」
男は、そう言って、私とリリアンを交互に見つめた。彼の声は、まるで地の底から響いてくるかのように、冷たく、重々しかった。
「プロメテウス…!」
リリアンは、敵意をむき出しにして、男の名を叫んだ。
「その呼び方はよせ。私は、世界の『真実』を紡ぐ者だ。そして、お前は、その真実を隠蔽し、偽りの『正義』を主張する、裏切り者」
プロメテウスは、リリアンに一歩ずつ近づいてきた。彼の周囲の空間は、まるで時間が止まっているかのように歪んでいる。
「この世界の『物語』は、悲劇的な結末を迎えるべきだった。だが、お前は、その結末を勝手に書き換えた。私が作り出した『絶望』という名の物語を、お前の『希望』という名の偽りの物語で上書きしようとした」
プロメテウスは、私に目を向けた。
「そして、お前は、私に捕らえられた『希望の太陽』。お前は、私の『物語』を破壊する存在だ。だから、私は、お前たちの『物語』を、ここで終わらせる」
プロメテウスは、両手を広げ、彼の背後に控えていたゾンビ化した男たちに、冷たい命令を下した。
「お前たちの『物語』を、ここで終わらせろ」
男たちは、唸り声を上げながら、私たちに向かって襲いかかってきた。リリアンは、私を守るように、私の前に立ち塞がった。
「彼は、あなたを狙っている。あなたの『物語』を、この世界から消し去ろうとしているのよ!」




