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Invitation to MI6  作者: 徳田新之助
第一章 この世界の理
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決別





私は、長官から差し出されたリリアンの子供の頃の写真を見つめたまま、静かに口を開いた。




「あなたの言う『正義』は、彼女の人生を犠牲にして成り立っている。僕は、その『正義』には従えません」




長官は、私の言葉に悲しげに首を振った。




「君は、まだこの世界の現実を知らない。世界は、善と悪だけで動いているわけではない。時には、小さな犠牲を払い、大きな悲劇を防ぐ必要がある」




「小さな犠牲…それが、彼女の人生だったと?彼女は、あなたがたが作り出した『歪んだ物語』の被害者だ!それを隠蔽して、平和を保つなんて、そんなの偽りの平和だ!」




私の声は、怒りに震えていた。長官は、私の目を見て、静かに言った。




「君は、理想を追い求めている。だが、理想だけでは、この世界を救うことはできない」




「それでも、僕は、理想を諦めたくない。誰一人として犠牲にしない『正義』を、この手で証明してみせる」




私は、長官に写真と、胸に着けていたMI6のバッジを机に置いた。




「長官、僕は、MI6を離れます。僕の『正義』のために、僕は、僕の物語を紡ぎます」




長官は、私の決意を悟ったのか、何も言わなかった。ただ、静かに頷き、私を送り出した。


私は、MI6本部を後にした。ロンドンの街は、夜の帳に包まれ、ネオンの光が、まるで僕の心を嘲笑うかのように瞬いていた。


長官の言葉が、僕の頭の中で反芻される。




(君は、この世界を一人で変えられるとでも思っているのか?)




僕は、一人ではない。僕には、僕自身の『知識』と『知恵』がある。そして、この世界の『理』を理解できる、この体がある。




僕は、リリアンの『歪んだ物語』の真実を暴くために、そして、誰も犠牲にしない『正義』を証明するために、孤独な戦いに身を投じることを決意した。


その時、私のスマートフォンが鳴った。リリアンからだ。




私は、彼女からのメッセージを開いた。そこには、ただ一言、こう書かれていた。




「ようこそ、私の世界へ、


『物語の紡ぎ手』」



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