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Invitation to MI6  作者: 徳田新之助
第一章 この世界の理
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死人の痕跡





私は、長官から受け取った地図を手に、ゾンビが目撃された牧場近くの森へと足を踏み入れた。昼間だというのに、森の奥は薄暗く、ひんやりとした空気が肌を刺す。獣道に、不自然なほど深く刻まれた足跡を見つけた。それは、ふらふらと、しかし力強く地面を踏みしめたかのような、奇妙な足跡だった。




「やはり、人間ではない…」




私は、その足跡を辿って、さらに森の奥へと進んだ。足跡は、途中から途絶えていた。まるで、地面に吸い込まれたかのように。




「消えた…?」




私は、足跡が途切れた場所の周囲を、注意深く調べた。すると、木の幹に、奇妙なメッセージが刻まれているのを見つけた。それは、牧場に残されていたタロットカードの絵柄と似ていた。




『X The Wheel of Fortune(運命の輪)』




そして、その下には、血で描かれたような、小さな記号が二つ並んでいた。




「これは…モールス信号…?」




私は、その記号を、頭の中で必死に解読した。僕が元いた世界で、趣味として学んでいた知識だ。




「……--... . -... -..-」




それは、二つの単語を意味していた。




"HOPE"




そして、もう一つは。




"DEATH"




「希望…そして、死…」




私は、このメッセージが何を意味するのか、その場で考え込んだ。


ゾンビは、ただの生物兵器ではない。彼らは、何かを僕に伝えようとしている?いや、それはありえない。彼らは、意志を持たない。




では、このメッセージを残したのは、誰だ?


私は、この事件の背後にある、ある人物の存在を確信した。彼は、ゾンビを操り、この奇妙な事件を起こすことで、僕に何かを伝えようとしている。そして、その目的は、ただのテロではない。それは、僕にしか解けない、奇妙な謎かけなのだ。




その時、背後から、低い唸り声が聞こえた。


振り返ると、そこには、目撃された男が立っていた。痩せこけて、顔色はまるで死人のようだった。彼の目は虚ろで、口元には、乾いた血が付着している。




「グルルルル…」




男は、私をじっと見つめ、ゆっくりと歩み寄ってきた。彼の腕は、不自然なほど長く、爪はまるで獣のようだ。




このままでは、戦闘になる。だが、彼は、ただの人間ではない。僕の知る常識が通用しない相手だ。


私は、長官から渡された拳銃を構えた。しかし、この男を殺すことは、この事件の謎を永遠に解けなくすることになる。




誰かを救うために、誰かを犠牲にする。この世界に来てから、僕は何度もそのような選択を迫られてきた。それは、この世界の常識なのかもしれない。だが、僕が元いた世界の物語は、その選択によって、主人公自身が傷つき、救われなかったという悲劇的な結末を迎えていた。




僕は、誰かを犠牲にする「正義」を選びたくない。




どうする、ジョナサン・クラーク。



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