表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/17

第6話 答案用紙。

「・・・と、いうわけで、私はしばらくあなたの仕事手伝えないから。」

「え?俺の片腕、今、ナメクジみたいになってるんだけど??」

「・・・・・」


ナメクジは事務用の机に座ってはいるが、心ここにあらず?

ダメージでかそうね?

大きな体を折り曲げるように俯いている。書類は広げてあるが、さっきから進んでいるようには見えない。


ぷぷっ。


この、殿下の弟分のナメクジは、きっと自分のその気持ちが何なのかさえ…気づいてないわね?


さて。お姉様が一肌脱いで差し上げましょう。



*****


王太子である婚約者の名前と権限を使って、今回の事務官採用試験の試験結果を一式持ってこさせた。殿下の控室に運ばせてある。

300人を超える受験者の、口頭試験の結果表と筆記試験の答案用紙。かなりの量だわね。

カルラと二人でこもって、さくさく目を通していく。

満点は3人。ディーと、一浪して、留学していた侯爵家の次男坊。もう一人、意外にも知っている子だった。モーニカ・アルミン。男爵令嬢だ。


・・・この子?


失礼だが、そんなに賢そうには見えなかった。私と婚約者が学院の3年生の時に1年生。ディーの同学年だが、クラスが違うので奴は顔も知らないかも。

何でそんな子を知っているかと言うと…よく転ぶ子、だったから。

校舎の角とか、渡り廊下とか、カフェテリアの入り口とか…。なんかの病気なの?と、思うくらいに殿下の目の前で転んでいた。殿下とほとんど一緒にいた私も見ていた。不思議な子…。

クリクリの赤毛が目立ってたなあ。

もちろん護衛が付いているので、引きずり出されていたが…。


あの子がねえ…。


まあ、性格と勉強の出来不出来は関係ないけど。

少し不思議だったので、その子の口頭試験の結果表も見てみる。

「・・・・・」

まあ、お勉強ができても、口下手な子はいるからね。うん。先入観で人を見るのはいけないな。


気を取り直して、続き。

ようやくディーの友人のエルの答案用紙を見つけた。


どれどれ?


・・・才女って、言ってたよね?

・・・26点か。論外だな。字も下手くそだ。

体調だの、緊張だの、って感じではなく、これは放棄していた感じ?ははん。家のために土壇場で色々諦めたのか?じゃあ、しょうがないな。


「お嬢様?見つけました。」

「ん?」

「これと、こちらですね。見てください。紙が少し歪んでいますでしょう?」

「ん。そうね?」

「水を含んだ布で、叩いた跡ですね。うっすらと布目が残っています。」

「ん?なんのために?」

「ここを見てください。インクがにじんでいますでしょう?乾ききらないうちに上書きしたと見ましたね。」

「・・・差し替え?」

「で、しょうね。」


え?


自分で見ていた二人分の答案用紙も名前のあたりをよく見る。うーーーーーん。

「カルラ?これは?」


「ビンゴ、ですね。」











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ