第2話 サクラチル。
「・・・265番…。265番…。」
え?いや、そんなはずはない。
もう一度確認する。
「265番…。265番…。え?」
もちろん、補欠として添えられている3名の名前も番号も確認する。
・・・補欠合格でもいい。
・・・ああ…。
「やあ、エル。合格者の受付が始まるぞ?行こう。」
ポン、と肩を叩かれて、我に返る。
「あ、ディー。あははっ。いってらっしゃい。おめでとう!」
「は?」
「サクラチル。って東洋では言うらしいよ。いやあ、私、落ちちゃったんだよね。修業がたりなかったか、な。あははっ。」
握りこんだ受験票がぐちゃぐちゃになる。もういらないものだが。
「はいはい。行ってらっしゃい。」
「・・・・・」
言葉を探しているディーの大きな背中を押す。
「・・・ら、来年もあるし…。何なら夏前に補充募集もあるかも知れないし。」
「あ。そうだね!来年ね!先に仕事決まったディーに、何かご馳走してもらわなくちゃね?あははっ。」
「・・・ん。」
「なによお!早く行ってきな。ほら、事務官が呼んでるよ?」
・・・合格者の皆さんは手続きがありますので、事務棟本館の大会議室にお集まりください!!
採用担当の事務官が大声で叫んでいる。
急ぎ足で向かっていたディーが、入り口で振り返る。そうだと思った。大きく手を振る。
サクラチル、か。
花は咲く前に散ってしまったな。
ディーが事務棟に入ったのを見届けて、大きく振っていた手を降ろす。
さて…。
帰るか。