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第17話 番外編 変わっていくもの。

「あら。」


久し振りにディーから手紙が来た。


【私の親愛なる友人へ】

手紙の書きだしはいつも一緒ね。


体調を崩して、療養していると聞いていたから、お見舞いはお送りしたけど。

うちの領の特産品のサクランボ。ライナーのルビーという品種。


お見舞いのお礼と、療養先の別荘で学生時代の本を見つけたから、送る、という簡単な内容だった。


「あらあら。まあ。懐かしいわね。」


送られてきた本は、もう何十年も前に二人でああでもないこうでもないと論じた物。日に焼けて、表紙がボロボロになっている。

【為政者の資格】

懐かしいわね。


あの頃の私は、親の勧める結婚から逃れるために、それだけのために王城の事務官を目指していた。きちんと自立できさえすれば、あの家と係わることもなくなる。

正直、必死だった。


ディーと知り合って、彼の夢を聞いた。

「僕は…アンドレアス殿下とイングリット様が目指している国の将来を、僕の夢としたい。だからね、あの方の右腕になりたいんだ。事務官試験はその一歩だね。」


・・・いつの間にか、自分もその一環になりたいと、そんな望みが湧いた。じゃあ、お二人を支えるディーを支えようと。


そして、あの合格発表の日。指先が凍るように冷たくなった。

努力しても努力しても努力しても…手に入れられないものはある。

なにもかも、本当に夢物語だった、と。現実に戻ろう、と。



降ってきたような機会をつかみ取った。

皮肉にも逃れたいと心から願った自領に、領主として戻った。


私は私の場所で、ディーを応援した。わかってくれていた?

あなたは国王を支える、立派な宰相になったわね。


パラパラッ、とページをめくるとノートの切れ端が挟まれていた。


三つ編みを揺らして走ってくる、学院時代の私?


嫌だわ。うふふっ。ディーの落書きね?


あのままの気持ちで、ディーの所に走って行けば、人生はまた変わっていたのかしら?


「・・・おばあちゃま?どうしたの?おなかいたい?」

「まあ、アデリナ、大丈夫よ?ありがとう。」


小さな孫娘が私の膝によじ登って、涙を拭いてくれた。

私は…養女を取って育て、娘は立派な領主になった。孫は女の子と男の子。この領を大事にしてくれれば跡取りはどちらでもいい。



そんなことを考えられる時代になりましたよ?ディー?




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― 新着の感想 ―
二つともを手にしようとは、しなかったんですね。 リアルで、厳しい。 遠くにあっても、繋がっているのがわかっていたから、それが心の支えだったのかな。
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