第11話 処分。
「何?この処分案?甘くない?」
「・・・そう?ぎりぎりかと思うんだけどね。」
「ここで厳しくしておかないと、また同じ様な事をする奴らが現れるでしょう?クラブにしても、不正受験にしても、金もうけだけ考えている奴らがどうせまた始めるわ。」
「・・・・・」
イングリットの言っていることは、もっともではある。僕の執務室で処分案を眺めているしかめっ面の婚約者。
替え玉受験が流行って、対処して…すぐまたこれだからね。
「領主は、領民を守らなくちゃいけないって言うのに、守れてないし。これはね、この国の、王室の問題でもあるわ。領民である前に、国民よ?あなたまさか、女や子供は同じ国民だという認識がないの?」
ごもっともです。
「それに、事務官から犯罪者が出たのも、監督不行き届き、と言われてもしかたないことなのよ?」
耳が痛いです。
結局のところ…かなり厳しい刑になった。
財産の没収。身分のはく奪。クンツ子爵は処刑。一人でも領民を差し出したクラブ会員は家族とも炭鉱の強制労働。エルの両親と義弟も炭鉱に送られる。不正を行った事務官、モーニカとその家族は身一つで国外追放。
もちろん、実名と罪状は公文書で張り出した。
「労働者が足りないと言っていたから、ちょうどよかったわね。即戦力にはならないでしょうけど。」
新しい処分一覧を眺めて、僕の婚約者は嬉しそうに笑う。
そうそう、一浪して合格したことになっていた侯爵家の次男は留学していた国に戻った。一からやり直すらしい。侯爵は蟄居。長男が後を継いだ。
残りのはく奪した貴族家は、縁者でしっかりした、なるべく若い者を探した。しばらくの間、指導官を付ける。汚名があるから初めは大変だろうけど、頑張ってもらいたい。
2月あたりから始まったこの一連の騒動は、4月になってようやく終わった。
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ひと段落した頃、エルフリーデを呼び出す。
「ライナー伯爵家の事なんだけど…。」
「はい。」
しっかりと顔を上げている。カルラに厳しく指導されているようだけど。
小柄な、しかし、しっかりした子だ。イングリットのお気に入り。
「君が20歳になるまで、国で預かって、婿を取って婿が当主になる。女の子は20歳になって婚姻しないと継承権がないからね。」
「・・・・・」
「ん?不満かい?予定通り事務官になるかい?」
「・・・継承するとなると、どなたかと…婚姻することになるのでしょうか?」
え????
どなたか、って?そのどなたかは、君に何も言ってないのね??