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第1話 合格発表。
「265番 エルフリーデ・ライナー…。」
265番、265番…。
受験票を握りしめて、沢山の人が王城の事務棟の掲示板に先ほど張り出された合格者名簿を見上げている。
今期の事務官の募集は30名。受験者は300人を超えた。狭き門。
「…大丈夫。私、頑張ったし…。」
ざわざわと集まった人たちが騒いでいる。
家族連れで合格発表を見に来た人も多いらしく、相当な数だ。
「…265番 エルフリーデ・ライナー…。」
友人に肩を抱かれる者や、家族で抱き合って喜ぶ者…。
早めに出かけてきたが、押されて随分後ろになってしまった。
「…大丈夫。大丈夫…。」
握りしめた受験票は、すっかり汗ばんでしまった。
「大丈夫。何度も確認したし。名前も忘れずに書いたし…。265番…。」