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MIYOSHI!。





 日本人の男が、どれだけ『妹』と言う言葉に甘く、優しい響きを感じているかはインターネットで妹と検索してみれば一目瞭然である。


20300000件という是非とも自分の貯金の数にしたくなるような、0いっぱい夢いっぱいな数字にここは一つ、三好京平が物申す。



 妹なんて生き物が穏やかで素直なのは想像と2のつく次元でだけ。


裸ワイシャツなんて死んでもしないだろうし、したとしてもリアル妹など可愛くない。可愛いわけがない。


 人畜有害。生ける有害図書。

Z指定してやりたくなる程暴力的なシーン有り。なのだ。


 それから、99%わがまま。

そして99.9%の確率で五月蝿(うるさ)い。若しくは面倒くさい。





 一人っ子や、男兄弟で育った人間にこの苦しみはわかるまい。ええい、わかるまいとも。



 きっと犬の方がよっぽど従順で、まごころを尽くしてつとめてくれるだろうし、

インコの方が馴れてつき従うだろう。

手のかからなさで勝負するなら亀が優勝候補。シード権獲得。



 そんな風に妹に対して否定的に考える三好京平の家族構成といえば父、母、自分、妹というごくありきたりなもので、ペットは何も飼っていない。



 しかし、聞いてくれ。若しくは聞いて下さい。



 非常に矛盾してる話のようにも聞こえるが、ここは言い訳させてほしい。……させて下さい。


 この境遇には二つ程ワケがある。



 まず一つ目は、気付けば妹は存在した事。


 四歳差というちょっとだけ近い年齢差の為に、物心ついた頃には家族の中にいたのだ。


妹を産むかどうかの選択権など当然自分にはなかった。設定であり、オプションであり、自らの意思で手に入れたものではない。



 そして二つ目、その自分の妹と言うのが――「おっかえりい〜!おにいー♪」


「ただい……ぐはっ」



 残りの1%だった。彼女は少数派に属する0.1%側の妹なのだ。


 彼女は京平が帰ってくるのを玄関で待っていたのか、扉を開けた瞬間薄っぺらい胸板へ大きくダイブしてきた。

飛び込んだ拍子に彼女の頭が京平の肺の空気を無理矢理抜き、勢いのまま押され背中を強打し咳き込む。


京平の迷惑も御構い無しに彼女は小さな手を京平のお腹のあたりにまわしてぴっとりとくっついてきた。



「お帰りなさいおにい。さっそくのあと遊ぼー!」


「げほっ……わかったからどけって。ほら。」



 京平は後ろ手に鍵をかると革靴を脱ぎ、少し前に帰ってきた筈の妹の靴と一緒に玄関の端に並べた。


くっついて歩く妹に、二人三脚でもしてるような歩きにくさを感じて、二人三脚がこれだけ大変ならば、20人21脚はもうありえないくらい大変なんじゃないか……

と下らない事を考えながら妹を引きずりリビングへ向かう。

「おにいってばあ〜〜!遊ぼ遊ぼ!何して遊びたい?」


「だぁーっ!何なんだよ。今帰ったばっかだから後で。」


「いつならいーの?後でってあとどれくらい?何時何分地球が何回まわったころ?」


天井も高く、広々とした部屋の造りになっているからか、彼女の高い声は一階中に響いた。


小柄な彼女には釣り合わない程の元気いっぱいさ、今まで学校に行っていたのは同じの筈なのに、京平とテンションに差がありすぎる。


「……地球が何回まわったかなんてわかる訳ないだろ。ちょっと静かにしとけ。」


「わかるもーん!地球は1日に1回しかまわらないんだから、それと地球が誕生してからの日にちをかければだいたい……」


「なんだ、そんな地球規模の曖昧さでいーのか?じゃあ今月中には乃愛と遊ぶ。」


「やだあー!今日中がいい!今日遊ぶ!おにいはだまってのあと遊べばいーのッ」



 彼女――妹の名前は三好乃愛(みよしのあ)


外見は京平と全く似ておらず、小顔の為ショートカットがよく似合っている。小さいのは顔だけでなく、顔や胸も……げふんげふん。

一見甘えん坊で無邪気な印象も受けるが――。


「乃愛も自分勝手だな。女は結構そうゆう人多いのかな?」


「そんなことないよぉー……って。も?もって何?」


 いきなりずん、と声が低くなった。


今さっきまでにこ☆にこって感じで長い襟足(えりあし)をふわふわと揺れさせ、元気にはしゃいでいたのがイキナリ動きを止める。


「え?何、も、って?」


「乃愛も自分勝手の『も』だよ。何、『も』って?誰もなの?」



「え?……さ、さあ。」


「女?もしかして今日女の人と喋ったの?お兄ちゃん?」


 別の人と話してるんじゃないかと錯覚してしまう程冷静な態度。

二重人格としか言い様がない話し方、声、表情。


 経験上、『お兄ちゃん』なんてノーマルな呼び方をするのはものすごく怒ってる時だ。


 京平は肩を震わせ、背中からどっと汗が吹き出す。

その汗までもが冷たく氷のようで、恐怖心はどんどん膨んでいった。


「ど、どーだったかなあ。」


「何回喋ったかわからないくらいよく話すの?」


「違う違う!今日初めて話しただけで…っ」


 そう口を滑らせてからハッとする。


「む…やっぱり話したんだ。どんな人?名前は?可愛い?どうゆう雰囲気?身長は?年齢は?学校の人?」


――かわいいなんて言ったら間違いなく殺される……!!


「変な人。冬なんとかって名前で。ど、どぶす。身長は3mくらいある巨人。優しい雰囲気で…じゃなかった。冷たい人。年は60すぎだな、うん。それから通りすがりの人だった。」



「嘘だッ!!」


「え、な、なんでレナ……!?」


「なんでそんな巨人がお兄ちゃんに話しかけるのよ?」


「え……た、確かに。」


「だいたい何話したワケ?」


 ―――あんたがあたしの夫に相応しいかどうか…見定めてあげる。


「大した事は何も話してないでう。あ、噛んだ。」



 まさかプロポーズされた、だなんて死んでも言えない。

むしろ言えば死ぬ事になりかねない。


 話しただけでこんな尋問まがいの行動に出るのだ。

少しでもラブコメ的要素の含む内容は命に関わる大問題。


「本当にかわいくない人なんでしょうねッ!?スタイルとかはッ!!??」


「あ、ああ。不憫な程不細工な女だ。そして海外のテレビ番組で紹介される過食症の人並みの太り具合。」


 ごめんなさい夏姫様!と心の中で土下座やら土下寝やらする。

 取り敢えず妹から隠す為に彼女の逆を言ってみたが、少しリアリティーに欠いているかもしれない。


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