化石化現象
少し旅に出てました。
再開します。
『ニュースです。また大昔の生物の化石が発見されました。今日で今月六回目です。』
すごいな。僕は人ごとにそう思った。ここまで化石が発掘されたのは史上初らしい。
「ねぇこのニュースってさ、お父さん研究者からしたら嬉しいの?」
世界的に有名な考古学者というお父さんへ問う。
「勿論さ‼︎ここまで胸が躍ることはないよ。しかも、いままでに掘り終わったところから出てくるなんて。不思議でしょうがない!」
目をキラキラさせて話すお父さんに、僕はかっこいいと心の底から思った。
「ねぇお父さん。僕もお父さんのお仕事、見学したい。」
「そっそうか!そんなに化石が好きなのか!!いいだろういいだろう。話がつき次第お前を私の仕事場に連れて行ってあげよう。」
その二ヶ月後、お父さんの職場の人がうちに来た。
「君が宗介くんだね?私はお父さんの同僚の如月悠だよ。」
「宗介、こいつはなあの有名な教科書、『日本書籍』の高校地学の監修を任されているすごいやつなんだぞ。」
日本書籍!僕が学校でいつも枕にしているやつ。これからは読もう。
「じゃあ行こうか。車の裏に乗って、お前は助手席に乗ってもらうか。」
如月さんの車に乗って、お父さんのいう発掘現場に来た僕は「なんもないところだなー」と思った。
「如月、ここ本当に発掘現場か?」
「おいおい、お前と一緒にきたことあったろ?ここが発掘現場だ。でも、確かに全て抜け目なく調べたのになんで化石が見つかるんだ?」
如月さんが何か喋ってるけど難しくてわかんないや。
「ねえお父さん、どうやって発掘しているか見せてよ。」
「おっおお!すまなかったな。では始めるか。如月!そこから一番長い釘とハンマーを取り出してくれ。いつも私が使っているやつで頼むよ。」
「はいはい」
お父さん離れた手つきで土を削っていた。
「おぉ出てきた。これは・・・メガネ?そんな馬鹿な、存在しない。」
「おい陸人。きてくれ。不思議なものが見つかった。」
如月さんがお父さんを呼び、僕も気になったのでそこに向かった。
「はぁ?意味がわからん!」
そこにあったのは、人間の形をしたそのままの化石だった。
「そんなわけがない。この服は真新しいし、服装もまだ十年も経っていないファッションだ。ここに入って化石化したのか?現代技術をはるかに超越したことだ。科学的にも説明できん。」
お父さんは難しい顔をして考え込んでいた。
「・・・おい、ここやけに寒くないか?」
如月さんはそういう。確かに少し寒いかも。僕もそう思った、その瞬間だった。パキパキパキと軽快な音とともに、お父さんと如月さんの体が氷に包まれたのである。もちろん僕も例外ではなかった。
「なっなんだこの現象は!」
「如月!お前のポケットに入っているカイロをくれ!このままだと私たち三人、全員凍りついてしまう。」
「僕もこれ持ってるよ!」
僕が持っていたマッチを如月さんに渡す。
「おぉありがとう。これで解けるといいのだが。」
期待はすぐ、氷と共に消え去った。
「なっなんだ!今度は私の体が化石に・・・一体どういうことだ。」
「宗介!お前だけはせめて・・・!」
お父さんは、ありったけの力で僕をそこから遠いところに投げ飛ばしてくれた。僕の体はすぐに餅に戻ったが、お父さんと如月さんは石化したままになっていた。
「おっお父さん!お父さん返事してよ!如月さんも、冗談なんでしょ。」
目の前で起こった出来事はとても現実とは思えなかった。自分の頬をつねってみる。痛い。夢じゃないのか。
「待っててね。僕がいつかもとに戻すから。」
それから私は猛勉強をした。一日24時間365日耐えず勉強した。ついに私は、ハーバード大学の主席を取ることができたが、それでも父の石化の謎は解けなかった。私はこれを「化石化現象」と呼ぶことにした。あの事件以来あの場所は、絶対に現地の人でも入れないようバリケードを設置した。化石がたくさん見つかるというロマンはすごいものだが、それは美味しい話には必ず裏があると言ったようにいいことだけということだけではないのだ。
私はそれを肝に銘じながら生きている。え?父はどうしたかって?救えずそのままになっている。だってそこに入ったら私も二の舞になってしまうから。