姉と妹
「これは、まあえらいことになってますね」
「他人事みたいに言わないで、宇羅。最初の計画にはあなたが絡んでるんでしょ」
「いや、初めはまともな依頼だったんですよ?」
「私みたいな人間が必要な仕事なんて、まともなわけがないでしょ」
「開き直ってません!?」
銀銃屋敷、北館。
地面の下から撃ち込まれた無数の弾丸により吹き飛ばされた屋敷の跡地。
「四方を円状に囲んだ土地あるのが、東西南北4つの館。南西の門、北東の礼拝堂。計6つ。そして中心部の時計塔」
そして銃。過剰なまでに要素を盛り込むのがこの屋敷なら、それが意味するのは。
「シリンダー、薬室って名前でいいのかな? 屋敷を銃で埋め尽くすなら、屋敷全体も銃の部品に見立てるって言うのが自然だし」
そして、宮上下。破滅願望に起因する幽霊屋敷の能力が、その見立てに結び付くなら。
「ロシアンルーレット」
6分の1の確率で、館、そして自分諸共相手を撃つ、破滅願望の生んだ必中の技。低確率で相手を道連れにするなんて、普通は不発のまま終わるんだけど。
「あなたがいました。強制的に物事をややこしくする稀有な才能を持つ庚游理が」
「さも当然の流れのように、そこに私を絡めるのやめなさい!」
ただでさえ苦労してるんだから、そこは下さんが気合で引き当てた、ということにしないと…
「乾森学園」
血と渇きに満ちたあの世界に庚游理は不必要だった。
宇羅と出会ったあの事件は、ふたりにとって重要ではあったが、あの屋敷自体には、私はたまたま巻き込まれただけだった。
だけど今回は違う。この「銀銃屋敷」攻略には私の存在は不可欠だった。例え一度武器を手にすることがなくても、私の「藪蛇体質」は無差別無作為の怨みに意味を与え、縛る者と逃げ出した者の再戦のお膳立てをし、最後に無作為の銃弾が妄執に満ちた獣の館を文字通り吹き飛ばす助けとなった。
最初から最後まで何も知らなかったのは気に入らないが、
「藪蛇体質」想像以上に因果な気質なのかな…
「あ、いました。大丈夫ですか、宮上先輩」
なんとか自分を納得させていると、宇羅が声を掛けて来たので急いで向かう。
そこに宮上下と宮上底がいた。
「ああ、ま、初めてにしちゃうまく行っただろう、特に戦ってる人間の保護にリソースを回していたんだから」
「幽霊屋敷『銀銃屋敷』の解体」並びに「その住民、宮上底の保護」
これを達成するため、屋敷の権能を住民を護ることに使う。銃撃されても即回復するほどに。
かつその上で戦いに勝利する。
使えるようになってすぐにそんな難題を振られて、しかもこうしてやりとげたんだから、宮上先輩は本当に…
「何が何でも気持ちよく自分が勝とうとするスゴイ人ですね…ぐぎゃ!」
殴られた…
「何で!?」
「おまえのそういう言い方がダメすぎるからだよ!」
「褒めてるんですよ!?」
「悪意がないから質悪いんだよ」
「私はいつも善良な人間ですよ?」
宮上家。家の修理だけでもシャレにならない手間と金がかかるだろうし、それになにより宮上下、底このふたりは今後どうするのか、一応辛うじてではあるが屋敷の力を得た宮上さんには聞いておくべきかと迷ったがやはりこれ以上余計なことは言わないでおこう、と。
傷がある程度ふさがってきたらしい宇羅が全力でツッコミをいれてくる姿を見ながら決めた。
幽霊屋敷「銀獣屋敷」 解体完了
幽霊屋敷「銀銃屋敷」 確保完了
「でもこれだけは教えてください。宮上下さん。これからも私たちの所で…」
「訊くまでもないだろ」
私の言葉を遮って、宮上下は言った。
「俺は怨霊からだけは逃げ出さない。底お姉ちゃんの自慢の妹だからな」




