決着と誤解
「後輩の信頼と引き換えにしてまで、怨みを俺自身に向けたんだ」
黒い帽子を被った影、狩人に弾丸を撃ち込みながら言う。
「だからおとなしく撃たれて、祓われてくれ」
止めを刺そうとする俺の背後の死角から、数発の弾丸が撃ち込まれた。
それを、裏内が自身の内から出した「北塀」で弾いた。
「《《自分と向かい合った相手の死角から銃撃する》》」
それが狩人の能力。
「命中すれば致命傷となる」なら、壁などで弾かれてわずかでも狙いを逸れれば、その権能は無力化する。
まして魔弾を阻むのは単なる壁でない。
幽霊屋敷「裏内屋敷」神隠しの家の防壁なのだから。
「想像以上に威力が高い! いつまでも防ぐことはできません、宮上さん、急いで!」
宮上下は何をもってこの銀銃屋敷に勝利したと言えるのか?
幽霊屋敷を解体するには、その心臓を破壊する必要がある。
だけど、自己犠牲を選択できるほど俺は潔くない、そんな性格だったらあの時逃げ出す訳がない。
だったら選択肢はひとつ。
勝利条件。
《《心臓、宮上下が幽霊屋敷、銀銃屋敷を完全に支配すること。》》
支配。主を決める「決闘」
ちょうど打ってつけの相手がいるよな、
「新しい心臓、主を捜すための器官」、狩人。
宮上下が完膚なきまでにこいつを打倒する。それをもってこの屋敷に本来の主を刻み付ける!
「おら、よそ見してんじゃねーぞ! 帽子野郎!」
「アアアウツツウツウツウツ撃つ撃つ撃つ撃つー!」
悲鳴のような鳴き声をあげる狩人、まだ立ち上がるこいつの脳に弾丸をぶちまける。
まだ撃つ、打つ!
「その中身に、誰が上か刻んでやらないといけないよなー!!」
「ウツツツツウツツウツウツ鬱々撃つウツウツウツウツウツツー!!」
「…わたし要りますかね?」
なおも撃ち込まれる弾丸、ですが目に見えてその回数も減って、威力も減少しています。
魔弾。狩人の武器。幽霊屋敷の器官が自身の生命で生み出す力。
「こんなふうに直接叩かれたら、そりゃ弱くなっていきますよね」
怪談もヤンキーには勝てない。
…真理ですね。
「とはいえ油断は大敵です。この後拗ねる游理さんを宥めるという壮絶にめんどくさい仕事が残ってるのですから」
こんなところで敗北している場合ではないのです。
「どうだ、なあ、どうだ!?」
「ウツ……ウツ……」
っと、どうやら決着のようです。
敗者は狩人。
「銀銃屋敷」の主を選ぶ器官。
この幽霊屋敷は誕生の際、心臓「宮上下」の感情、「《《宮上底」に勝ちたいという願いを反映した「必殺」の能力》》を有して…
あれ?
違和感。
宮上さんがその時底さんに勝っていたら、そのままこの屋敷の主になっていた?
雪男や怨霊を撃ち尽くす彼女がこの程度の屋敷に閉じ込められるのを望む?
あり得ないですよね。
もし。
この屋敷の核となる願いが「決闘に勝つ」ではないとしたら…
そして。
宮上下が動かなくなった狩人の頭部に弾丸を撃ち込み、
裏内宇羅が自分たちの致命的な間違いに思い至ったその時。
裏内の胸と頭部に、それぞれ1発ずつ。
存在しないはずの弾丸が命中した。




