説得と素性
「宮上」
部屋から出た俺を園村が追ってきた。
「説得しても無駄だぞ。俺はあそこの家には行かないから」
所長やこいつにこっちの事情はもちろん話してない。話すつもりもないが、《《あの教団》》で育った園村ならわかってくれるはずだしな。
「…僕はこの仕事は受けることができない。あのふたりだけだと不安だから、あなたの助けが必要だ」
「何だよ、そんなに大事な仕事なのか」
いつもはヤバそうな相手なら何が何でも速攻で潰しに行くような奴なのに。
「沈船村」
園村は仕事の場所を言った。
「海神を信仰する教団により作られた村の祠の中のものが最近暴れだしたらしい」
海神。
海の神。
「…そういうことならあんたが行かないわけにはいかないよな。そんで残るはあの360度誘爆危険因子誘発女と混沌違法建築物な
人外娘だけ、と」
「すまない。そういうわけだ」
この会社の人材不足しすぎだろ。
「そりゃあいつらだけで仕事させたら絶対にろくでもないことになるだろうな」
わたしが加わってもろくでもないことに変わりはないけど。
「なんかあったら罪悪感が無駄に増える」
逃げ出して、罪悪感に苦しむのは怖いから。
「ああ、もう。あいつがもっとまともな祓い師ならこんな心配しなくてすんだのに」
でも。
「頼りになる先輩としては、頼りない後輩の面倒はみないとな」
どう転んでも最悪ならせめて早めに潰すこと。
「うん。わかったありがと」
携帯で何やら話している所長、この人がやってることも実はあんまりよくわからないんだよね。事務とか色々必要なことはあるんだろうけど。
でもなんか宇羅さっきから微妙に警戒してないか?
「今園村君から連絡あって、宮上くんも仕事引き受けてくれるみたい」
「じゃあ何で戻ってこないんですか」
「出て行った手前気まずいんだって」
コミュ障か!
「…あの、そのことなんですけど、なんで宮上さんあんなに嫌がってたんですか?」
ウキウキで仕事をとってくるのが園村さんなら、戦闘になったら目がランランと輝くのが彼女のはずだし。
「宮上底」
「へ?」
「依頼人の名前。銀銃屋敷の住民で宮上家の現当主」
「宮上? つまり」
「今回の依頼は宮上下、彼女の家からのものなんだ」




