雪と銃撃
「いい加減くたばれよ、雪男!」
うめき声をあげ続けている巨人の頭部を踏みつけ、一片の容赦もなくそこに弾丸を撃ち込む。
うぇんでぃご? まあいいや、こいつはどう見てもイエティだ。見たことないけど昔本で読んだ。ならこいつは俺にとってイエティで何より化外で敵だ。なら撃ち込んで打ちのめすしかないよな?
それが最適解なら宮上下は迷わない。
「ごおおおおおおおおお」
「うるせぇぇ!」
止めに口のような部分に銃を突っ込んで撃つ。
いろいろと跳ね返ってきたが、いまさら気にするか。
能面小屋、幽霊屋敷。
所長の説明や実物を見てもイマイチわからないが、少なくとも銃は通じる。祓いの仕事用に聖なるもの、魔を祓う概念を古今東西無差別に取り入れた冒涜的に信仰に頼った薬品を標的内部に注入する弾丸と人でも獣でも無機物でもなく霊、祟りの類に対処するための特別な銃。それだけの装備があれば。
「UMAだろうがなんだろうが、ぶっ殺せるってわかったよ、おまえのおかげで。だから俺からの感謝を喜んで受け取って、そしてさっさとあの世に行け!」
さっきから後ろで見ている新人ふたりから、露骨に引かれている気がするけど気にするな。人の目を気にしていたら祓い師は務まらないし。
「うっわグロい絵面ですね」
「コンクリートと鉄の塊で何度も押しつぶした奴が言うと説得力あるよね」
宮上下。
亜江島祓い所の先輩。何度もいっしょに仕事…というか他にまともに社員がいないから否応なく組むことになるんだけど、その度に思う。この人は生粋の戦闘狂だよな。
祟り怨霊魑魅魍魎を撃つことで討つ。
園村先輩が特別な神もどきに特化した分単純な力は中央でも上位じゃないのか?
その神もどきに特化したはずの園村先輩が今回はサポートに回るだけで充分と判断しているのも、単純に殴り合い、撃ち合いなら宮上さんが適任と見なされたから。
私が言うのも角が立つけど、こんな小さい所に収まるような人間じゃないのに…なんでうちにいるんだろこの人。
「あ、そろそろ終わったようです游理さん」
見ると、雪男は体のあちこちから煙を出して、その輪郭がぼんやりと消えかかっていた。
うぇんでぃご。幽霊屋敷『能面小屋」の心臓。能面のように無表情だったから最後まで何を考えていたのかはわからなかった。そもそも人外がこっちと同じ思考をすると決めつけるのも傲慢だよね。わかっているのは今まで私たちが戦っていたのは季節毎に生贄を求める荒ぶる神の類。今の世界にありふれている人外化生の中でも上位存在。かつ幽霊屋敷という輪をかけて異常な生物だったということ。そして単純な力ですり潰すタイプの戦いをするものだったこと。
だから真正面から丁寧に相手をする人間は相性がいい。
戦い、応えることそれ自体、荒ぶる神を鎮める儀式になるのだから。




