落下落下落下落下崩壊
跳んだ。
先ほどまで消えかけていた幽霊屋敷は、
蛾よりもなお上の空に向けて、飛び上がる。
その急激な変化に反応しきれない森白学園は、それでも杭を射出したが。
「裏内宇羅!」
出し惜しみなしだ、そうだろ。
「はい!」
同時に、手元の厄薬を全て、家の中に、宇羅の中に
全開で吹き付けた。
「あ」
そしてその効果は
「ああ、あああああああああ!」
叫び。
「耐えろよ、宇羅! 私のせいで潰れるな! そんなことで死んだら、私はあの世でおまえを呪い殺してやるから!」
「あ、ああ、バカな」
返す。
生まれ直すほどの激痛に襲われる中、宇羅は軽口に答えるように自然に。
「《《バカなこと言ってる暇があったらもっと薬、もっと厄を、からっけつになるまで出し続けてください》》!」
それが。
「誰よりも気高く優しい心臓、あなたの願いを叶えるために!」
ああ、そうだ私はそんなふうにおだてられたら
「やるしかないよなぁ」
カートリッジに薬品は既に残されていない。
だが、なければ補えばいい。
そこに取り付けられた針を、腕につき刺す。
そこから流し込むのは血。
人間を数百年単位で品種改良し続けた庚家。
その中でも災厄の忌み子の本質を、幽霊屋敷に注ぎ込む。
結果。
幽霊屋敷は
進化、深化する
「宇羅の名の下に、わたしはあなたを潰します」
宣言と共に、天を、怨みしかない空の向こうを掴むようにかざした宇羅、その手から生み出されるのは、もはやコンクリートの巨石でも歪な鉄の槍でもなぃ
「《《出現せよ、『裏内屋敷』》》」
蚕蛾の上空、
何もない虚空に
裏内屋敷、都内某所に建つ一軒家が出現した。
裏内屋敷は自分自身を呪い運ぶ虫の頭上に作りあげた。
それを用いて行うのは、《《呆れるほどに単純な攻撃》》。
「《《丸ごと全部、裏内屋敷を喰らってください》》、333名の命を喰らったあなたにも喰いきれないものを」
爆音と共に落下した家そのものの重さに加えて、内部に詰め込まれた怨嗟は炸裂し。
「まだまだです」
《《直後まったく同じ家が白い蛾の上に現れた。》》
幽霊屋敷の中の物が壊れれば、屋敷はそれを再建できる。
心臓さえあれば
屋敷自身であろうと何回でも。
「2回目」
右の羽に堕ちた屋敷の裏手から上がった火の手が羽に燃え広がった。
「3回目」
堕ちた衝撃で左の羽に大穴が空いた。
「4回目」
頭部に当たった屋敷の欠片が、蛾の目を抉った。
「5回目、6回目、7回目、8回目、9回目」
落とす、堕とす、堕とす、落とす。
怨嗟も殺戮も何もかも押しつぶして平らにする幽霊屋敷。
怨嗟をもって怨嗟を喰らう屋敷。
「13回目」
内部の命全てを用いて12回耐え切った森白学園は、
13回目に地に堕ちた。
「お疲れ様です、游理さん」
「はぁはぁ…あ」
全身が痛い、こんなに疲れたの仕事でもないぞ。
「あと1回でも耐えられたらまずかったですが、ギリギリ攻めきれました」
ごめん、口を開くのもしんどい。
こんなに負担になるのか、屋敷に全力を出させるのは。
二度とやらない、絶対に。
だけど、もう少し。
まだ仕事が残ってる。




